第6話 余話の1 後日譚そして前日譚そしてミーシャとのお茶会
余話その1です。直接はお話に関係ありませんが、次の話につながる部分になります。楽しんでいただければ嬉しいです。
マーシャと友達になった後、「そうだ、私のお姉さま紹介するね、今中庭で待っているわ」マーシャは英雄の手を取って走り出した。
ごめんマーシャ、左は怪我しているから強く引っ張らないでほしいな、と英雄は思ったが口には出さなかった。
そして現在、英雄は冷や汗を流しながらお茶会の席に座っている。どうしてこうなった、英雄は思った。
目の前にはニコニコとしている美しい女の子が座っていた。しかし、彼女の背後からゴーという音が合うようなものすごい殺気がしており、目は絶対零度のように冷え冷えとしていた。
最初マーシャに紹介されたときはニコニコと普通の感じだった。ところがマーシャが所用で席を外した途端、この状態である。
「ヒデオさん、と言ったかしら」マーシャの姉、ミーシャは言った。
「はい」思わず即答した。
「あなたターイエの英雄なのよね。第一王女を救い出し、獰猛な部族を弁舌だけで従わせ、更に単身敵中に忍び込み国王一家をすくいだし、さらに反クーデター軍を組織して敵をつぶした。いや、とてもすごいことですわ」全く感情のこもっていない声で言った。
「ありがとうございます」英雄はなんとかそれだけ言った。
「で、あなた日本軍の残党の一員なのよね。今回のターイエの事件で日本軍の残党が暗躍したことが報告されているわ」
「そうですね。よくご存じで」英雄は思った。何が言いたいのだろ、このお姫様。
「それであなたの目的は何?色々調べたけれど出てこないわ。わかっているのは、日本軍の残党を名乗る存在が、ターイエの事件でいろいろ活動していたことだけ。その構成員が我が国にあらわれ、たまたま妹と知り合い、たまたま行動を共にして、たまたま敵に襲われた。そしてたまたま敵からマーシャを助けた。そんなことあるかしら?」ミーシャは微笑を浮かべながら言った。ただ、目は絶対零度のままだった。
いや、ほんとたまたまなんですよ。それに私は単なる冒険好きの学生です。日本軍の件はターイエにいた少尉殿に乗せられて、ついその気になっただけなんです。と言ってもとても信じてもらえないよな、英雄は思い、何も答えられなかった。
両者の間で沈黙が流れた。英雄は耐え切れず、口を開いた。話をそらそうと、思いついたことをしゃべった。
「この国ってもともとターイエと一つの国だったのですよね」何を言っているのだ、と英雄は後悔した。
その言葉を聞いて、ミーシャの顔が驚いた顔に変化した。そしてニヤリと笑うと「そう、そういうことなの」と言った。
え、何が、どういうこと、と英雄は思った。
「あなたたちの目的が分かったわ。そうよね、それが目的なら協力してもいいわよ」ミーシャは言った。その顔は愉悦にまみれていた。
何が何だかわからない。でも聞くことができる状況じゃないし、とりあえず考えないことにしておこう、と思った英雄だった。
「あなたがターイエの英雄だという件は両親もマーシャも知らないわ。私だけの情報なの」にっこりしながら言った。
「マーシャには話したんですが、信じてもらえませんでした」英雄は言った。
「それはそうね。あなたとても英雄には見えないもの。雰囲気は温和でやさしい感じで、とても軍人には見えないですもの」ミーシャはニコニコしながら言った。さっきまでの殺気と絶対零度の瞳はなく、楽しそうに雰囲気を醸し出していた。
いくつか雑談をして、いくらか打ち解けた時、英雄は言った。
「あなたみたいな人がこの国にいることはこの国にとってなんと素晴らしいことか。奇跡のようです」英雄は、相手を褒めておいた。まあ、ほめておけばごきげん取りできるだろう。
「あら、あなた私も欲しいの。妹だけじゃなく」その目は愉悦に満ちていた。
「変な意味じゃないですよ」英雄はあわてていった。「わかっているわ。そんなあわてないでください」ミーシャは笑った。
雄は引きつった笑い顔をした。
英雄はお茶会を辞して、与えられた部屋に戻った。とりあえずレポートを作成して、教授に送ろうと思った。
それからどうしようか、そうだ、契約の箱だ、幸いヘイス族には伝手があるし、少尉殿に頼めば見せてもらえるかもしれない、それに知り合いにも会いたいな、と英雄は考えた。
もうしばらく冒険を続けてもいいかな、と英雄は思った。
余話はもう1話あります。楽しんでいただければ、評価等頂ければありがたいです。




