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英雄の人生探訪旅行譚  作者: 信礼智義
3/8

第3話 襲撃と逃亡、そして別の街へ 

この作品を読んでいただきありがとうございます。この作品は前作「英雄の冒険旅行譚」の続編となっております。これ単独でも楽しめるよう作成しておりますが、前作を読んでいただけるとさらに楽しめると思います。

英雄は突然の銃撃にびっくりして一瞬思考が停止した。思考が回復すると、すぐに逃げなくては、と考えた。英雄はマーシャに「逃げるよ」と言った。

マーシャはまだ固まったままだった。やむなく英雄はマーシャを抱き上げると急いで物陰に隠れた。敵はその間も数発、銃を撃ってきた。

マーシャは突然の銃声に驚いて震えていた。

「マーシャ、銃を撃ってきているのは何者かわかるかい?」英雄はマーシャに聞いた。「わからないわ」かなり気が動転している様子で震えながら言った。

銃声は聞こえなくなった。おそらく回り込んでこちらを狙える位置に移動しようとしているのだろうと英雄は思った。

この間に逃げ出そうと、姿勢を低くし、まだ恐怖のあまり歩くこともおぼつかないマーシャを抱っこしながら走った。

「ヒデオ、怖いよ」「静かにマーシャ、敵に気づかれる」英雄は小声で言った。

マーシャは黙って頷いた。

「マーシャ姫を渡せ、命だけは助けてやる」野太い男の声がした。英雄は返事をせず、そのまま走って逃げた。再び銃声がした。迷路のような城の内部を、マーシャの案内で抜けていった。敵は道に迷っている様子で「ここはどこだ」「わからない」「マーシャ姫を探せ」な どの声が聞こえてきた。

城の裏門から出ると、バイクが2台並んでいた。

カギはつけっぱなしになっており、すぐに運転できる状態だった。

マーシャに「ちょうどいい。このバイクで逃げよう」と呼びかけた。マーシャは「まだ震えが止まらないの。バイクの運転はできなそう」と言ってきたので、「じゃ僕の後ろに乗って」と英雄は言った。

そうするとバイクは1台残るから、敵がバイクに乗って追いかけてこないようバイクのタイヤに穴をあけておこう、と英雄は思い、一台のバイクのタイヤに持っていたナイフで穴をあけ、もう一台にまたがってその場を逃げ出した。

あたりは一面のライ麦畑であった。しばらく走っていると、バイクが一台、二人乗りで追っかけてきた。ふたりとも若い青年で、髪を短く切って、軍服に似せたような服を着ていた。後ろに乗っている男のほうが体格がよく、ライフル銃を持っていた。

「もう一台バイクがあったのか」と英雄は思った。

敵はライフル銃でこちらに狙いをつけようとしてきたが、道は麦畑の中を緩いS字で蛇行しており、狙いをつけようとすると英雄たちのバイクは麦の陰に隠れて狙いがつけられないようだった。それでも何発か撃ってきており、その恐怖にマーシャは英雄にしがみついて震えていた。

「この国は麦畑が多いね。空港から来るときも一面の麦畑だったよ」英雄はマーシャを元気づけるため、話しかけた。

「こんな時に何を言っているのよ」マーシャは言葉少なげに答えた。「おかげで助かったということだよ。ライ麦畑のおかげで敵の狙いがなかなか付けられないようだしね」英雄は明るくマーシャに声をかけた。

「ヒデオ、銃を撃たれているのにずいぶん落ち着いているのね」マーシャは言った。

「まあ、それなりに修羅場を潜り抜けているからね」笑みを浮かべながら答えた。

実際英雄は少しワクワクしていた。確かに銃に狙われて命が危険にさらされているが、なんか冒険している気分になっていた。

突然麦畑が終わり、広い草原に出た。「まずい、スピード上げるよ」英雄は言って、バイクのスピードを上げた。草原には鉄道の線路が引かれており、そこにはちょうど列車が走っていた。 後ろに展望台が付いている古いタイプの客車だった。

敵は英雄たちのバイクに向かってライフル銃を撃ってきた。弾が足元に着弾した。「ひぃ」マーシャは悲鳴を上げた。草原に出て視界が開けたことで、狙いが正確になってきたようだ。

「列車の客車に乗り移ろう。このままじゃいい標的だ」英雄はそう言って、列車の方へ向かった。バイクを列車と並走させながら、まずマーシャを展望車に取りつかせた。ちょうど展望車には鉄の柵が付いており、それに掴まってマーシャはうまく列車に乗ることができた。そのあと、英雄がマーシャに引っ張ってもらいながら列車に乗り込んだ。

その瞬間敵の撃ってきた弾がバイクのスピードメーターに命中した。もしそのまま乗っていたら危なかった、と英雄はぞっとした。

乗り捨てたバイクは横倒しになって、スピンしながら後にいた敵の乗ったバイクを巻き込んだ。敵のバイクは転倒し、暗殺者たちはバイクから投げ出された。もう追ってくることはできない、そう思い二人はほっとして、その場に座り込むと、顔を合わせて安堵の表情を浮かべた。


「一体奴らは何者なんだい?心当たりはないのかい?」英雄はあらためて尋ねた。

「あの二人だけど見たことないわ。狙われる理由も心当たりないし、いままで何回もお忍びで外に出たけど、こんなことは初めてだわ」マーシャはそう答えた。

二人は展望台から客車に移った。空いている席に座ると、車掌を呼んで英雄は聞いた。

「この列車はどこ行きなんだい」

車掌はあきれたように言った。「あんた何処行きかもわからずに乗ったのかい。この列車は星の湖で有名なルーシャン行だよ。切符は持っているのかい?」「持っていないんだ。ここで買える?」「ああ大丈夫だ」車掌は言った。

英雄は2人分の切符を買って、どういう場所か聞いてみた。

「大きな湖があるところで、また星がきれいなんだよ。夜になったら、湖のほとりに行ってごらん。すごいものが見られるから」車掌は二人を見ながらにやにやとしていった。

「二人にとって一生の思い出になるよ」そう言って、車掌は去っていった。

「ルーシャンの町ならきっと電話もあると思う。町に行って、家に電話するわ」

「電話するならスマホがあるよ」そう言って、スマホを取り出すとマーシャに見せた。

「スマホ?なにそれ」マーシャは興味深げに見ながら言った。

これは無線で電話ができるし、インターネットを見ることもできる小型の機械だよ。衛星電話になっているからどこでも通話可能だよ」英雄は答えた。

「言っていることがよくわからないけど、ここからでも電話ができるということ?」

「その通り。それじゃ電話のかけ方を教えてあげる」英雄はマーシャに電話のかけ方を教えてあげた。

マーシャは恐る恐る電話をしてみたが、うまくつながったようだ。「もしもし、マーシャだけど」マーシャはびっくりしながら話を始めた。古い城跡に行ったら、何者かに襲われたこと。列車に飛び乗ってルーシャンの町に向かっていること。ヒデオという日本人と一緒にいることを伝えた。

マーシャはいろいろ指示を受けている様子だった。しばらく話をするとマーシャは英雄に電話を替われと言ってきた。英雄は電話をとると「もしもし」と話しかけた「お世話をおかけしております。マーシャ王女を助けていただきありがとうございます。私、当該王家に仕えておりますツァバと申します」やや年を取った男の声が聞こえた。

「姫様にはお話ししましたが、そのままルーシャンの街に向かっていただきますようお願いします」ツァバはいった。

「途中で降りて、首都行に乗り換えた方がよくはないでしょうか」英雄は聞いた。

「残念ながらあなた様が乗っている列車はルーシャン行の最終列車で戻りの列車は明日にならなければありません。下手に途中で降りてしまうと、何もない場所でかなりの時間お過ごしいただくことになります。それならば、ルーシャンに行っていただき、そこでお待ちいただいている間に我々が車で迎えに行くのが一番合理的だと判断いたします」ツァバは丁寧に答えた。

確かに、何もない場所で待つより、観光地で有名な場所のほうが飲食できる店もあり、迎えを待つ間、時間をつぶすことができる。

「わかりました。ルーシャンの街に向かうことにします」英雄は答えた。

 ツァバは「我々も少しでも早くお迎えできるよう全速力で車を走らせてお迎えに上がります。マーシャ姫をよろしくお願いします」ツァバは丁寧な言葉で言った。

 「わかりました。マーシャ姫をお守りします」英雄は強い口調で言って電話を切った。

 「ヒデオ、ありがとう」マーシャは微笑みながら言った。

 「マーシャ姫、あなた様の言動から王女様だと察しておりましたが、はっきりと王女様とわかった以上、今後はあなた様に敬語を使った方がよろしいでしょうか」英雄は静かに言った。

 「公式の場でもあるまいし、いまさら敬語なんていいわよ。とりあえず、正式に自己紹介するね。私の名前はシャオイエ王国第2王女マーシャ・シャオイエというの。よろしくね」マーシャは微笑んで言った。

 「こちらこそよろしく。じゃこのままの口調で話させてもらうね」なんか王女様と会うことが多いな、これってどういうめぐりあわせなのだろう、と英雄は思った。

 「とりあえず、ルーシャンの街に行って迎えを待とう。追手は倒したし、当分大丈夫だろう」

 「そうね。ところで、さっきの話なんだけど」マーシャは言った。

 「さっきの話?」秀雄は尋ねた。

 「あの銃弾が飛び交う中、なんで平気なのって聞いたこと。あなた何者?」

 英雄は立ち上がり、ターイエに行ったときに一緒に戦った鈴木少尉から教わった帝国陸軍式の敬礼をして、「自分、九頭英雄は大日本帝国陸軍の軍曹です。ターイエの戦いに参加し戦って、銃弾の下を潜り抜ける経験をしました、と言ったら信じる?」英雄は敬礼の手を下してシニカルな笑顔を浮かべながら言った。

 「ひどい冗談ね。ターイエでクーデターがあったのは知っているわ。そして日本軍を名乗る者たちが王家を助けたことも。でも英雄みたいな優しくて穏やかな人が、うわさで聞いた獰猛にして死を恐れない日本兵だなんで誰でも嘘だって分かるわ」マーシャは怒ったように言った。

 「あはは、でも本当のことなんだ」英雄は苦笑いしながら言った。

 「フーン、そうなんだ」マーシャは信じられないという表情をしながら言った。

 「まっ、それで納得してあげましょう。さあ、ルーシャンの街に行くわよ」そう言って、マーシャは笑った。


読んでいただきありがとうごさいます。評価等いただけると本当にありがたいです。ブックマークいただけると 本当に励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。

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