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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第3章 出発

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25話


 東条は歩きながら両手を武装し、一本ずつ蟹の脚を握る。すると、


 ジュ〜、と音を上げ、辺りに香ばしい香りが漂い始めた。


「ほれ」


「ん。ありがと」


 殻を剥き、ブリブリに詰まった 身を二人で貪る。


 東条の漆黒は、エネルギーと名のつく物なら何でも変換可能、熱エネルギーとて例外ではない。

 今や彼は、歩く自動コンロと化したのだ。


「うんまいなコイツ」


「やっぱ狩る?」


「迷う程美味いけど、繁殖するまで待った方が楽しめるさ」


「ん。我慢」


 ノエルは身長よりもデカい脚を、モグモグと頬張る。


「にしても、モンスターってのは美味いのが多いな」


 東京にいたエビやワニ、コカトリスも美味だった。何なら、スーパーで売られている食用の物より美味かったかもしれない。


 東条は手を差し出すノエルにウェットシートを渡す。


「ん。人間が健康維持に必要な成分に、もう魔素は入ってる。魔素が味覚にどういう影響を与えるのかは知らないけど、身体が求めているのは事実」


「マジか、一般人も?」


「も」


「やば」


 知らぬ間に身体が作り変えられているとは、恐怖以外の何者でもない。


「え、じゃあもしさ、俺が極端に魔素が少ない場所行ったらどうなるん?」


「能力使えなくなって、体調悪くなるくらいで済む」


「あ、そなの」


「人間の身体は元々魔素基準で作られてない。無くなっても問題はない」


「ノエルは?」


「死ぬ」


「やば」


 東条は淡々と述べるノエルにギョッとする。


「ノエルくらいの完璧美少女になれば、魔素ゼロの場所でも一ヶ月は生きられる。歩くのも儘ならないただの美少女になっちゃうけど」


「そりゃ大変だ。お前もちゃんと生物なんだな」


「マサは酸素のない場所で一ヶ月生きれる?」


「うん、無理だな。やっぱお前生物の域超えてるわ」


「ん。ノエルは神。あんなエセ神共とは格が違う」


「もう忘れろって、どんだけ嫌いなんだよ」


 ぶらぶらと観光しながら歩いていると、遠方から無数の羽音が向かって来ているのに気付く。


「……何か来てね?」


「匂いかな」


「野生動物に蟹は勿体ねぇだろ」


 二人は十字路の中心で止まる。東条は袖から腕を出し、ノエルは土の椅子に座った。


「お前、本当に何もしないのかよ」


「守ってくれるんじゃないの?」


「……へいへい、お姫様」「「――ッビィ――……」」


 無造作に振るわれた銀線が、高速で突っ込んで来た何かを両断した。

 東条は刀に付いた体液を切り、地面で痙攣するそれを見る。


「……蜂?」


 体長五十㎝位の、凶悪な顎と針を持った、蜂。


「……まさか、この音、全部?」


 東条は冷や汗を垂らす。既に羽音以外、何も聞こえない。


「……」


「あ、おい⁉︎」


 一瞬でノエルを覆った樹木のドームに、殴る蹴るの暴行。


「俺も入れろバカ野郎!範囲攻撃はお前の分野だろ!ちょっ、ノエルさん⁉︎いやマジで!」


 号泣の顔文字を浮かべながらドームをぶん殴っていた東条は、ふ、と無数の威圧感を感じ、ゆっくりと振り向く。




「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「カチカチカチカチ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」




 蜂。蜂。蜂。見渡す限り、三百六十度全てが蜂。日光が遮られる程の蜂の大群に、東条は固まった。その数、軽く五千匹は超えている。


「……いや、あの、縄張りとか入っちゃってました?それなら謝りますんで」


 こんな光景、流石の東条でも顔が引き攣る。


「カチカチ」


「あ、この二匹は既にお亡くなりになっていまして、本当に残念です。はい。……おいノエル!逃げるぞ!この数はダルすぎる!キモい!普通にやだ!(ボソ!)」


「「「「「「カチカチカチカチ」」」」」」


「ねえ、ちょっと、ノエルさん⁉︎(ボソ)」


 振り返った東条は、樹木の隙間から覗くレンズと目が合う。


「なるべく離れないで。上手く撮れないから」


「――ックソチューバーガァアッ‼︎」


「「「「「「「「「「「「「「「「「ガチガチガチガチガチッ‼︎」」」」」」」」」」」」」」」」」


 東条はドームの上に立ち、迫り来る暴威に向かって雄叫びを上げるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 俺も入れろバカ野郎!範囲攻撃はお前の分野だろ! 姫様に言う言葉じゃないぞw まぁ、無数の虫とか自分も嫌だけど。
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