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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第四章〜Marine snow〜

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繭野 ゆま


 打ち合わせからの帰宅途中だった東条は、家の門を閉める彼女を見つける。


「あれ、ゆまさんじゃん。おーい」


「?……あら旦那様、おかえりなさいませ。プニルさんも、お疲れ様です」


「フブルッ」


 プニルに乗って空から降りてきた東条に、繭野は軽くお辞儀する。


「おでかけ?」


「はい、夕食の買い出しに行こうかと」


 庭に戻るプニルに礼を言い、東条は繭野に「行こうぜ」と促す。


「ご一緒してくださるので?」


「たまにはね。雇っている身として、不満がないか聞いておかないと」


「あらあら、理想の雇い主ですね」


 二人で並んで歩きながら、東条は彼女の持っている荷物を貰い受ける。


「ありがとうございます」


「あいよ、ってかそうか、俺ら行ったり来たりしてるから、そりゃ飯の分量狂うわな。すまん」


「いえいえ、皆さんがいないと食卓が寂しいですから。アリス様も嬉しそうでしたよ?」


「ほんと? 昨日から口きいてくれないんだけど」


「おやつにデスソースなんてかけるからでは?」


「それはノエルだって! あいつ俺になすりつけて逃げやがって」


「あら、そうだったのですか。それをアリス様に言えばいいのでは?」


「言ったさ。でも全然信じてくれないんだよ。俺なんて軽い寝起きドッキリしたり、沖縄のお土産あげただけなのに」


「どんな寝起きドッキリでした?」


「起きたら上空一万mドッキリ」


「お土産は何でした?」


「沖縄で捕まえた変な虫」


「なるほど。旦那様が信用に値しないことだけは分かりました」


「え、ショック」


 繭野は堪らず吹き出してしまい、口元を手で抑える。


「アリス様は普通の女の子ですから、手加減してあげてくださいね?」


「承知いたしました」


「ふふっ」


 直売所で野菜を選ぶ繭野の背中の後ろで、東条は所々に並んでいるモンスター食材を眺める。

 生鮮売り場には魚型モンスターの切り身が、肉売り場にはモンスターの肉が売られている。それも、一般的な食材よりも高い値段で。


 パッケージを見ていたおばあちゃんが、モンスターの肉をカゴに入れてレジへと歩いていった。

 ここまでモンスターが日常に受け入れられているとは……。街に出ないと分からないこともあるな。


「今やモンスターは高級食材扱い、か。分からないもんだな」


「栄養も豊富で、味も良いのですから、見た目に慣れてしまえば優秀な食材ですよ」


 繭野は手に持った大ぶりなトマトをカゴに入れ、肉売り場へと向かう。


「国が推奨したからかね?」


「それもあるかもしれませんが、美容インフルエンサーや、モデルがこぞって食べ始めたのが大きかったですね」


「そんな栄養価高いんだ?」


「はい。特に野菜類が凄いんですよ? 今の日本は、ノエル様のおかげで土壌の質が底上げされましたから。どこに何を植えても、ある程度の品質が担保されるレベルです。

 たまにモンスター化して畑から脱走する種もいるようですが、」


「大変だな農家の人も」


「ただ、自分だけの畑を作れるし稼げるしで、農家への転職が相次いでいるとか」


「へー、良い傾向じゃん。第一次産業に若者が戻ってくれば、日本はもっと強くなるだろうしな」


 繭野がクスリと笑う。


「……旦那様、出会った時と少し変わりましたね」


「そうか?」


「大局的な意見が多くなった気がします」


「あーね。……関わるもんがデカくなればなるほど、見なきゃいけないもんも多くなってくからな」


「金言でございます」


「よせやい」


 大量に食材を買い、二人して帰路に着く。


「それで? 最近どう? 不満ない?」


「ありませんとも。行き倒れていたところをノエル様に拾っていただいて、アリス様のお世話もできて、私ほど幸せな人間もいないと思っております」


「ハハハっ、なら良かったよ。困ったことあったら何でも言ってくれよ?」


「承知しております」


「俺とかノエルに対してだと、血の関係もあって遠慮しちゃうだろうし、そういう時は灰音でも紗命でもいいから、一人で抱え込むなよ? うちは風通しの良いアットホームな会社なんだから」


「……ふふっ。旦那様のそういうところを、素直に尊敬しております。ですが今は不満はありませんので、お気遣いだけ」


「そっか。ならこれからもよろしくな」


「はい、勿論でございます」




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