表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
第四章〜Marine snow〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1046/1071


 東条はフライドチキンを片手に、『接続中』と表示されている大画面に視線を戻す。


「で、いつ始まんだっけこれ?」


「そろそろじゃない? 何か映画みたいで楽しみだよね!」


「映画ならどれだけ良かったか……」


 そして約束の時間ピッタリに、大画面が起動する。


 画面に映るのは、各国の総理大臣、大統領、副大統領、防衛大臣、情報局局長、軍事顧問、世界的企業のCEOなどなど、国を代表する錚々たるメンツ。

 世の権力者達が、画面にぎゅうぎゅうに並べられていた。


 国の代表達は、それはもう身を正し、感じたことのない緊張を胸に、何十分も前から準備していたのだ。

 当然だ。これから彼らが前にするのは、世界を救った英雄。【選帝者】と呼ばれる、人の皮を被った一騎当千の怪物なのだから。


 そも、日本やアメリカ、メキシコやイギリスなどの当事国以外は、選帝者という名称すら最近知った、なんていう国家も珍しくないのである。

 そんなところに、あのLIVE配信である。各国上層部の反応は、ド肝ブチ抜かれるとか、そんな次元ではなかっただろう。


【選帝者】や【王】と呼ばれる者達の、本気の喧嘩。それがいかに埒外で、いかに手に負えない代物なのか、今回の配信で、それが全世界に知れ渡ったのだ。


 そんな者達と謁見できる機会を、みすみす逃すのはバカの所業。少しでも選ばれし者達の記憶に残ろうと、彼らなりの誠意を持ってこの会合に参加したのである。


 ……そして彼らは見た。

 特大ソファに腰掛け、映画感覚でこちらを見ている英雄達の姿を。



 一番初めに目についたのは、【魔人】:東条 桐将。

 ソファの背もたれに両腕を回し、足を組んで踏ん反り返り、しゃぶっていたフライドチキンの骨をゴミ箱に吹き捨てる。

 特徴的なオッドアイには、この数の国家を前にして動揺一つない。寧ろ心底怠そうな気配すら伝わってくる。

 なるほど、噂に違わぬ尊大ぶり。これは日本も苦労する。



 その隣で、溶けたアイスクリームのような格好でこちらを見ている少女が、【蛇王】:ノエル。

 モンスターでありながら、比較的人類に友好的な王の一柱。

 機嫌を取るのは案外簡単だが、逆鱗に触れた際の被害規模が馬鹿げているため、国家間で不可侵条約が定められている一人である。

 ただ、彼女の機嫌を取ることは、お目付け役である東条 桐将の機嫌を取ることとほぼ同義であるため、期待はしない方が良いとのこと。

 我々は、彼女が人間の味方であり続けることを願うしかない。



 知り合いでもいたのか、笑顔で手を振ってくれているのが、【万魔殿】:ガブリエーレ アルベルティ。

 元々就いていた職業が関係しているのか、食べることに対して異常な執着を見せている。

 今はサバイバル料理系配信者として世界中にファンを抱えており、フレンドリーな性格も相まって、前者二人と同等以上の影響力を持っている人物である。

 選帝者の中でも、比較的穏やかで話の通じる人間という認識……であったのが、先日までの話。

 あのLIVEを見た我々は、果たして彼に人間の部分が残っているのか測りかねている。



 そして背筋を伸ばし、一番こちらに礼儀を尽くしてくれていそうなのが、……何の皮肉か、【天国の処刑人】シャルル アンリ。

 フランスの辺境で特殊部隊を壊滅させた後、パッタリと目撃情報が途絶えていた国際指名手配犯である。

 LIVEに彼の姿が映った時は、世界中の警察が動揺したことだろう。

 今思えば、彼は世界中の貧困地域や、モンスター災害に遭うも国の手が回らない箇所を転々としていたのだろう。恥ずかしながら、五年経った今でも、発展途上国の死傷者数は計測できていないのが現状。

 いったい彼の手によって、何人が《《救済》》されたのか、……考えたくもない。



 画面に目も向けず、料理を美味しそうに食んでいる少女。……我々は、ついこの前まで彼女のことを知らなかった。


 ラファ ミルザ。


 一年前、とある探検家が中東に足を踏み入れた。

 彼曰く、中東諸国は時代が数世紀後退したような、酷い有様だったらしい。

 強力なモンスターこそ多くないが、辛うじて存在していた法と秩序は完全に崩壊し、マッドマックスのような光景が広がっていたと。


 しかしアフガニスタンに入ると同時に、彼は驚いたと言う。

 なぜなら、女性が物のように扱われていた周辺国と違い、そこでは女性こそが主権を握っていたからだ。

 と言うよりも、男が殆どいなかったらしい。


 各地に点在する大集落が周辺の治安維持を担い、中央に全ての集落を統括する都市まで建設されていたと言う。

 彼はそこの都市を治める女性に謁見し、話を聞くことに成功した。

 曰く、


《この場所はラファ様がお造りになられた。私は彼女が学び、帰るまで、ここを預かっているに過ぎない。

 互いを尊重するならば、あなたも、私も、ここでは全てが平等だ》


 と。


 ラファ。

 ラファ ミルザ。

 統治者だけでなく、この都市にいる女性のほぼ全てが、ラファという名を口にした。

 彼女達の瞳に映るのは、感謝と尊敬、そして信仰に近いほどの親愛。

 ラファ ミルザに会えなかったことだけが、私の心残りである。

 彼のレポートはこう締め括られている。


 なぜ彼女がシャルル アンリと行動を共にしていたのか?

 なぜ人畜無害そうな彼女がこの異常な面々の中にいるのか?

 その一切が不明。

 というのも、彼女が何をしたのか、LIVEでも判断ができなかったからである。

 ちょうどそこだけが映らなかったのか? それとも意図的に映さなかったのか? 我々には推測することしかできない。


 しかしあの時、あの場所で、凄まじい数のエネルギーが一瞬で消滅したことが分かっている。人間サイズに換算すると、およそ三百万人が一斉に死んだことになるほどのエネルギーがだ。

 海を埋め尽くしていた深きものどもが、配信の終わりにはいなくなっていた。対個人に特化しているシャルル アンリが、あの量の深きものどもを捌けるとは到底思えない。恐らく、ラファ ミルザが何かしたのだ。


 アフガニスタンで信仰される彼女もまた、選帝者と見て間違いないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ