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なめしスライム

 木のおうちは、出入りする人数が増えたせいかだいぶ広くなった。

具体的には、四人掛けのテーブルが五つある食堂が増えている。朝にはなかったから、出ている間に拡張されたっぽいね。居間も、調理場と完全に隔離する形になった上に少し大きくなっている。

先回りしてこういったものを用意してくれるかかさま(魔神様)には、本当に頭が上がりません。


 食堂の入り口に扉はなく、ちょっぴり広めに口が開いている。

お盆を持ったままの出入りがラクチンそう。入り口のの左手側には、カラフルな板が張り付けられている。

【トイレ】【お風呂】【自室】【作業部屋】etc.etc……

どうやら、文字が読めない子のために色でもわかるようにしてあるっぽい。あとで、ちゃんと教えてあげないとだね。

 前はドアノブに触れると行きたい場所に行けたんだけど、一部を用途別に分けた形みたい。

【作業部屋】のプレートに触れると、今の時点で使える施設が頭に浮かんできた。


 【乳製品工房】【魔道具・魔石加工室】【調合室】【皮なめし工房】【解体室(貯蔵庫&氷室付き)】【訓練室(ダメージ無効)】【舞踏稽古室(自動演奏・小道具付属)】……


「――待って。訓練室と舞踏稽古室って、なに!?」

『妹神(刀神)からの希望でコッソリと追加しました。稽古場は神楽の練習に良いかと思ってついでに』


 思わず飛び出した声に反応があったのもビックリしたけど、訓練室の設置理由が意味不明です。

刀神さまって、武神系の神さまだよね?

なんでその刀神さまのご希望で?

そういうのは、にぃに(・・・)の管轄では?


『使わないようならそのうち外すよ。それより、なめしスライムを作るんでしょう?』

《……うにゃ》


 なんか誤魔化された気がするけど、予定を消化する方が今は大事だね。

浮かぶ疑問符は頭の中から追い出して、なめしスライムを作りに行きますか……



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 なめし工房は、思っていたよりも小さな部屋だった。

部屋を入って手前にあるのは、今は空っぽな大きな水槽。

一メータ角ほどの水槽の上にある金属の蓋は、なぜか開かない構造になっている。奥の方に向かって排水口がついているのが見えるから、その先にある一メータ角の凹みに中身を流し込む構造だね。その凹みのさらに奥の方にゴミ捨て用の扉に似たものがあるのが見えるんだけど、アレは何だろう?

水槽を乗り越えていかないと、ちょっと確認するのは難しい位置にある。


『じゃあ、始めようか』

《はい、かかさま(魔神様)。よろしくご指導お願いいたします》


 奥の扉は気になるけれど、まずはなめしスライム作りに集中しよう。


 なめしスライムの材料は一立法メータにつき、渋くてエグ味がたくさん含まれている植物を同量。それから、魔石。魔石と同ランク以上の魔力水がエグ味満載の植物と同じだけ必要になる。

最後に、なめしスライムに取り除いてもらいたいものを少量で良いので加えれば良いらしい。


《かかさま(魔神様)。取り除きたいものって?》

『床皮になる肉質かな。毛皮にしたくない場合は毛も入れるといいよ。追加で作るときに除去要素をプラスすることはできるから、そのまま作ってしまっても問題ないしね』


 ふむ……今、一番欲しいものってなんだろう?

服や下着は、一応、アテがある(つもり)。

完全に足りないと言えるのは、アレだ。寝具系。

突撃シープの毛皮とか、モファモファのふわんふわんだからね。きっと、敷いて寝たら気持ちいいに違いない。裏に残る床皮は……今回はこのままでいいかな。ピニャーシュさんが解体したものは素人目にはとてもきれいなので、きっとそのままでも大丈夫。


 ということで、今回のなめしスライムはノーマルタイプで。


 材料の投入方法は――と思いつつ蓋に手を置くと、頭の中にとつぜん選択肢浮かんできた。

どうやら貯蔵庫に貯めているものの中から、この施設で使えるものだけが選べるっぽい。

資材を運ばないで済むなんて、なんてラクチン!!

 昼間の休憩ついでにみんなで集めたエグ草を必要量だけ水槽の中に取り出す(?)と、あらかじめ用意していた魔石を手にして首をかしげる。


《貯蔵庫に入れてなかったものはどうすれば……?》

『蓋に触れながら収納したいって念じれば、貯蔵庫に移動するよ』


 ついでに、メイン素材と思われる魔力水も蓋越しに水槽に生成すれば良いらしい。

資材の持ち運びは地味に大変なので、とてもありがたい機能です。素直にうれしい。コレは、状況的になめす前の皮もなめし終わった革も、自動投入かつ自動回収ですね?

かかさま(魔神様)、最高っ!!



 なにはともあれ、なめしスライムは作り方も単純です。

材料をそろえたら魔力を注ぎながら混ぜるだけのお手軽さですよ。蓋が開かない仕様なので手で混ぜるのは無理なので、水魔法でグルグルするよ~!!



☆★☆★☆★☆★☆★☆



『はい、おめでとう! 初回調合にしてSSランクのなめしスライムがご生誕~♪』


「ふうぇええええ!?」


 魔力をふんだんにつぎ込んだおかげで、一時間ほどで出来上が――生み出すことに成功したっぽい。


「ランクSSって、もしかしなくてもすごいのでは」

『そうだね、もしかしなくても凄いよ。さすがフェリシアちゃん』

《かかさま(魔神様)の神子ですからっ》


 かかさま(魔神様)とふたりで成功を喜びあってから、今日の作業はここで終了。

とはいえ、寝る前ににぃに(・・・)お手紙書かなきゃね……

今日はちょっぴり夜更かし、頑張るよ。

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