甲殻類ゲットだよ
ただ今、ピニャーシュさんとふたり、氷のお船に乗ってひたすらに陸を目指して驀進中です。
奴隷として売り払われそうになっていた子供たちを【お庭】に避難させた。
その後で、奴隷船(仮)の壁をピニャーシュさんがきれいな丸に切り取ると、水平線の向こう側は上りかけの太陽に照らされてお空はきれいな東雲色。思わず見とれそうになってしまったよ。
ピニャーシュさんにつつかれて気を取り直すと、海水を操り隆起させてから切り抜いた壁板をその上に乗せる。この板を中心に氷のお船を作る予定だからね。置いてはいけません。
ピニャーシュさんとともに壁板の上に降りると、隆起させた海水を水面まで下ろして船づくりに取り掛かる。
造形自体は簡単だ。
なにせ、目の前に現物があるんだもの。乗るのがふたりだけだから、大きく作る必要もないからなおさらです。
あと、足場に使った壁板がここでもう一つ良い仕事をしてくれている。
なんというか、冷たくなくて滑らない床があるのってすばらしいよね。
「これは、下手な船よりずっと早いの」
「さっきまで乗ってた臭船、もう見えなくなったね~」
氷魔法でお船が溶けないように温度を維持し、向かい風を風魔法で左右にいなしつつ、水魔法で陸に向かうように水流を操作する。最初はちょっと手こずったけれど、しばらく試行錯誤しているうちに慣れたっぽい。今はもう、おしゃべりしながらでも問題なく行きたい方向へお船を動かせるようになった。
「とはいえ、念のため陸に着いたら少し内陸部に入り込んだ方が良かろうて」
「うにゃ。海のお魚に後ろ髪惹かれるけれど、仕方がないね……」
お魚を獲る方法、実は考えつかないわけじゃないんだけど――今は、誘拐犯から少しでも遠くに離れるべきだからね。進行速度が落ちかねないことはやりません。
というか、やれません。
奴隷船(仮)にお尻を向けた状態で右の方を目指していくと黒い影が見えてきて、それがグングン大きくなった。ドンドン近づいていくと、少しづつ黒いものの正体が見えてくる。視認できるようになってきたゴツゴツした岩の塊が、遠くなったり近くなったりしながら左右に伸びていて、とりつく場所が見当たらない。
「岸壁にこれ以上近づき過ぎぬようにしつつ、左の方に回ろう」
「うにゃ」
右の方に向かってしまうと、奴隷船(仮)とこんにちはしちゃうかもしれないからだね。
あいあいさーですよ、ピニャーシュさん。
岸壁を遠めに見ながら西に回り、しばらく行った場所に小さな入り江を見つけたので、そこに氷のお船のお船を乗り上げる。
見つけた時に想像したよりも広い砂浜には、慌てて私たちから遠ざかろうとしている変な生き物がいっぱいだ。
「あれは食べられる種類のカニだが――フェリシア嬢、どうする?」
「食べれるなら、確保以外の選択肢はないっ!」
「では、しばしまたれよ」
ピニャーシュさんは氷のお船から砂浜に跳ぶと、あっというまにキラキラ光るナゾ生物に襲い掛かった。ひぃふぅみぃ……自分の体よりも大きな生き物を、サクッと一刺しするだけで仕留めている。
「おおお?」と、言葉にならない声を出しているうちにあっという間に片付いちゃいましたよ。
伊達に、にぃにやロイさんの師匠をやってないね。さすがです。
戻り際にピニャーシュさんが砂の上を歩いていると、そこかしこからガチガチと音がし始める。何の音かと思ったら、砂の中から突然いくつもの影が飛び上がり――声を出す暇もないくらいの早業で、ピニャーシュさんが刀を横一閃! ドスドスと重そうな音を立てつつ、砂の上に飛び上がった何かが落ちていく。
「……貝?」
湖で買ったのはもっと小さな――わたしの手のひらくらいの大きさだったけど、ここのは一メータはありそうな巨大貝だ。
種類が違うのかもしれないけど、それでもちょっと大きすぎ。ピニャーシュさんがジグザグに歩いてくる間にもデカ貝が何度も飛び出してきたので、「動くな」と言われた理由にも納得しかない。
「パリーシャという二枚貝じゃな。ショユバタ焼きが美味い」
「それは……そそるね」
戻ってきたピニャーシュさんに抱き上げられて砂の上に降りてから、パリーシャとアンブラキオン――キンキラなカニさんを回収して回る。
パリーシャはショユバタ焼きでなく、焼いてラモの実の果汁をかけるのがピニャーシュさんのお気に入りっぽい。貝柱は干してからスープの具にすると良い出汁が出るそうなので、そっちも試してみたいよね。
アンブラキオンに関しては、煮ても焼いても美味しいそう。解体してもらえたら、まずは煮てみようかな。ピニャーシュさんも、こころなしかウキウキしているみたいなので、きっとすごく美味しいのだと思う。
「にぃににも食べさせてあげたいなぁ……」
きっと、すごく喜ぶのに。
かかさまにお願いしたら、鍋ごと渡してくれたりしないかな?




