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ごめんね、にぃに

 食料を持って船に戻ってから、【加護の儀】をまだ受けていない男の子四人を連れて【お庭】に戻る。チビたちの面倒を見るのは、サラさんと八・九歳組の四人にお任せです。

 いまだに食器(?)が回収されていないので、人が来たら、サラさんの幻影魔法で不在にするメンバーの幻で誤魔化してもらう予定。

【お庭】で、試しにわたしの姿を作ってもらったんだけどその出来栄えには驚いたね。メチャクチャ再現度が高いんだもの。あまりにも汚れすぎているその姿に、思わず膝を着いたよ。

早くお風呂に入りたい。


「え~、おいらもあっちに残りたいんだけど……」


 お船には、全員が食べてもあまるくらいの食糧を詰めたマジックバックを置いてきた。そのことを伝えてあるから、四人とも【お庭】に入るのを渋る渋る。


「お兄さんたちには、まずお風呂に入ってもらいます」

「……オフロ?」

「禊(みそぎ)と言い換えてもいいんだけど、水浴びならわかるかな?」


 全員が『ああ』と納得した顔をしたので、秋エリアを通って冬エリアにある温泉に向かう。

彼らには今のうちに【加護の儀】を受けてもらうつもりなので、清潔になってもらう必要があるのですよ。温泉でピニャーシュさんが待っているので、体や頭を洗うのは指導してもらえる。


 ――そう、ピニャーシュさん。

実は、ピニャーシュさんが【お庭】にいたんですよ。

チーズ工房から居間に戻ってきたときに分かったんだけど、どうやらわたしが雑貨屋を覗きに行こうと思い立つちょっと前から温泉に入っていたらしい。

普段、突発的にウロウロしようとすると、いつの間にか後ろにいるピニャーシュさんが居なかった原因が判明しましたよ。さすがのピニャーシュさんでも、【お庭】にいたら外での出来事は気づけない。


 まあ、わたしがお外に出てしまったおかげで【お庭】に閉じ込められてしまったピニャーシュさん。

待てど暮らせど戻ってこないことから、なんかあったんだろうなとは思ったらしい。とはいえ、【お庭】から出れない以上は何にもできないからね。仕方なく、わたしが戻るかピニャーシュさんを召喚するかするのを待つことにしたそうで……

【お庭】に軟禁状態で過ごす中、いろいろな可能性を考えて、対策も練ってくれていたらしい。もう、頭が上がりません。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 ピニャーシュさんに男の子たちを引き渡し、わたしも木のおうちで身を清める。

久しぶりのお風呂がとっても気持ちよくて、ついつい長湯をしたくなった。最低限の時間で出ないといけないのがションボリです。


 髪を結うのは面倒なので、乾かして櫛を通しただけの下ろしっぱなし。

服は、かかさま(魔神様)が用意してくれた【お庭】用の儀式服を身に着ける。おかんが持っていた儀式服よりも細やかな刺繍がきれいでお気に入り。

あんまり着る機会はないんだけどね。


《かかさま(魔神様)もうしばらくしたら始められると思う》

『了解。こっちも準備ができているよ』


 ピニャーシュさんが東屋に用意してくれた簡易的な祭壇の前で、みんなが来るのを待つ間にこっそりとかかさま(魔神様)とおしゃべりを楽しむ。


 にぃに(・・・)は無事に解放されたものの、バッジ王国の大神殿に招かれてしまったらしい。


『彼、フェリシアちゃんと合流したくてイライラしてるみたいだね』

《なんか、申し訳ない気持ち》

『なにが?』

《わたしが攫われなかったら、大神殿に行かなくてよかったんだよね、きっと》


 敷地に一歩踏み入っただけで、全力ダッシュで逃げ出す場所ですよ?

行く提案をしたときには、嫌がる気配もなかったのに。きっと、一歩踏み込んだ時点で、なにか良くないことに気づいたんだと思うんだよね。


『その時に居たのって、なんて国?』

《バッジ王国だよ、かかさま(魔神様)》

『彼のとこかぁ……私からも連絡するよ。長く拘束されるのはかわいそうだし』


 どうやら助け舟を出してもらえるっぽい。

今、話題に出なかったら、引き止められまくってにぃに(・・・)が発狂するところだったのかも。あぶぶいあぶぶい。


 というか――にぃに(・・・)にとって、わたしが攫われてからすでに三……もうすぐ四日になる。

移動時間を眠らされている状態で過ごしたわたしにとっては、まだ昨日のことみたいな感覚だけど、にぃに(・・・)にとっては……?

 【邪神の傷跡】に潜って、戻ってこないにぃに(・・・)を待っていた時のことを思い出して、胸の奥がギュッとなる。

あの時は、とても、とても不安だった。足元がグラグラ揺れて、すべてが崩れ落ちていくような錯覚にとらわれて――ちゃんと、いつも通りのものが見えているのに、目を閉じると全部なくなってしまうような気がして怖かった。


 にぃに(・・・)も、同じなんじゃないかな。全部が全部同じじゃないだろうけど、似たような気持になっているかもしれない。


《あのね、かかさま(魔神様)》

『なにか伝言?』


 察しが良すぎるかかさま(魔神様)の返答に、思わず小さく笑ってしまう。


《うにゃ。にぃに(・・・)にね「なる早で帰れるようにがんばるよ」って。「ピニャーシュさんも居るから、大船に乗った気持ちでいてね」って伝えてほしい》


 「心配しないで」は言わないよ。

だって、言っておいても心配はしてしまうだろうから。

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