みんなにバレました
相談相手は、悩みに悩んだ上でわたしに水を求めてきた猫人兄ちゃんに決めた。
「兄ちゃんさん、兄ちゃんさん」
こそこそっと近寄って、小声で呼びかけると怪訝そうな顔でこっちを向いて、ゆるっと警戒したようすが消えていく。お耳がピコンとこっちを向いたので、話を聞いてくれそうです。
「ちょっと、内緒話したいんだけど……」
「ん」
そのまま耳を寄せてきたので、どうやらこのまま話せということらしい。
くすぐったいと思うんだけど、いいんですか?
いいんですよね?
「おなかが空いて仕方ないので、食べ物を取りに行きたいんだけど――」
「は?」
「わたしがいない間、ほかの人にばれないように誤魔化せないかな、と」
「え? な? なんそ?」
何を言われたのか想像できず、混乱した様子を見てちょっと反省する。いろいろと説明をはしょり過ぎたみたいです。
「えっと――」
「いや、やめとけ」
「うにゃ?」
肩を掴まれ、真剣な目で訴えられて首をかしげる。
「さすがにチビをひとりで、あいつらの食糧庫漁りになんて送り出せないに決まってるだろ」
「おおう……」
そうきたか。
というか、ふつうならそうするしかないよね。ウッカリしてた。
【お庭】自体がかかさまから神子であるわたしに贈られた、超絶レアなんだよね。日常遣いしているから、その辺の常識が抜け落ちてたよ。
「兄ちゃんさん、大丈夫。そんなことしないから。あと、わたし。小型種だから小さいだけで、十歳にはなってるよ」
「あ、そうなんだ」
「うん。なのでチビッ子扱いは不満です」
「そこは、うん。悪かった」
チビこいのは仕方ないけど、とりあえず年齢に関してはキチンと言っておく。
言わないでおくと、通る話も通らなそうだからね。大事です。
「【加護の儀】は?」
「終わってるよ」
「そっか。せめてオレも【加護の儀】が受けられてたら――金がなくて受けられんかったし……」
「え。【加護の儀】にお金って必要なの?」
ウチの村で【加護の儀】を行ったときに、お金をもらってるのは見たことないよ。
だって、ご加護を授かったら有用な働き手が増えるんですよ?
一時の臨時収入より、ゆるっと続く定期収入のほうが魅力的だと思います。
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結局、年長組全員に【お庭】のことがバレた。
いや、わたしが悪いんですよ。兄ちゃんさんに理解してもらおうと必死になって、ほかの人が聞き耳立てつつ近づいてきてるのに気づかなかったんだから。結果――
「「「「「「「「「チビたちに食べさせてやれるなら、なんでも協力する」」」」」」」」」
と、一致団結。最年長のお姉さんとふたり、【お庭】に入ることになった。
最年長のお姉さんは、サラさん。
十三歳の狼人で、幻影魔法と描画スキルを授かっているらしい。とても相性のよさそうな魔法とスキルで、なかなか授かることがないレアなケースなんじゃないかと思います。
彼女が同伴することになったのは、食べ物の調達ついでに首に巻かれた【スキル制御】と【魔法制御】の魔道具を外すため。わたしの首に着けられたものもついでに外すつもりです。
「ぅわぁ……ホントに、別の場所だ」
「サラさん、こっち」
「うん」
木のおうちにご案内してから、魔道具工房に置いてあった工具を使ってわたしの分の首輪を外す。
案外頑丈な首輪で、サラさんはベルト部分を千切るのに苦労していたけれど、なんとかミッションコンプリート!
スキルが使える状態になったところで残りの首輪はわたしが外した。
魔道具作成スキルを使えれば、こんなの簡単に外せちゃうんですよ。頑丈そうなカギはついていたけれど、ただの皮のベルトだったので。
「さて、お次は食べ物を用意だね」
「……ねえ、ここにチビたちを連れてきちゃダメなの?」
「うん、ダメだね。というか、長時間かくまうのは無理」
サラさんの問いに即答したら、不満そうな表情が返ってくる。
「長い間この【お庭】にいると、普通の人は外に出た時にすぐ病気で死んじゃうんだって。特に、小さな子は大人が平気な期間でもダメなことが多いって教わったよ」
「それは……たしかにうかつに入れちゃダメだね」
言い方が悪かったかなと思いつつ、追加で理由を話したら納得したみたい。
言い方って大事だね。そして、理解してもらえるように伝えるのは案外難しいかも。相手の知識の範囲が分かってないと、説明が難しいこともあるし。
サラさんをチーズ工房に連れて行き、高いところに置いてある小サイズのものをいくつも取ってもらう。ひとり一個は多いだろうし、一度に食べさせるのは四分の一くらいかな? 八分の一でもいいかもしれない。
モリザイカイ町を出てからずっと作っていた、干し果物もあるからね。
これにミルギューミルクがあれば、お腹が減って泣く子はいなくなるはずです。




