巻き込まれたわたし
【駆け出しマーケット】が楽しかったモリザイカイ町を出て、早二か月。
夏の半ばを党の昔に過ぎたというのに、暑い日々が続いている。
モリザイカイ町を出てすぐ下着に施した【耐暑】は良い仕事をした。
この暑い中でもしっとりと汗ばむ程度なんだもの。ランクFでこの程度には暑さが緩和されるのだから、Eにランクアップさせればよほど暑い地域でもなければ十分すぎると思う。
ちなみににぃにの場合、神官服がもっと高度な魔道具になっていて常に快適温度が保たれているので、わたしが手を入れることはしていない。
そのせいで三人分だけ魔道具化したのをにぃにが羨ましがるのにはホントに辟易させられた。すごく、すごく、ものすご~~~~~く、めんどくさかった。
仕方がないから、それぞれの靴を【耐衝撃】の魔道具に加工したよ。
【耐衝撃】の効果で、歩いても走っても足元がフカフカなのがちょっと不思議な感じだけど悪くない。
この二か月の行程はというと、祠を巡りつつ湖に向かうのに約一か月。
初日ににぃにが見つけてくれたビリビリメリノを従魔にした後は、だいたい毎日同じことをして過ごした。変わらない毎日というのは退屈さもあるけれど、ヌルっとした安心感があってとても良い。
朝と夕方の一時間ほどはミルギューの背中に揺られて旅気分を味わいつつ、それ以外の時間にCランクの魔石を五百個とマジックバックを毎日ひとつ作成する。
そのほかの時間は、ピニャーシュさんに手伝ってもらいつつチーズを作ったり、ドライフルーツの乾き具合を確認したりとのんびりタイム。
ハニブーンの蜜で、果物のはちみつ漬けも作ったね。冷たいお水で薄めて飲むと、適度な甘さで疲れが吹き飛ぶとにぃにが大絶賛している。
ロイさん?
乳酒スキーなので、ほかの物には見向きもしません。
ピニャーシュさんはチーズを作った後の残り汁にはちみつを入れたものがお気に入り。
わたしですか?
わたしはねぇ……ちょっと濃い目の薬草茶が一番落ち着きます。
一緒にあま~い蜜漬けがないとムリだけど、薬草茶の苦みと甘い蜜漬けを交互にやるのが病みつきなんですよ。ホント、止まらなくなってヤバいのでピニャーシュさんの監視の下でないと安心して楽しめません。
気持ちの赴くままに楽しんじゃうと、大半なことになってしまううううううっ……
――と、話が逸れた。
なにはともあれ、湖に映る朝焼けや夕焼けを楽しみつつ湖の町まで旅をして。に着くと、翌日から早速、街の散策やお買い物をして回った。
もちろん、買うのはお魚さん。
残念だったのは、町に水揚げされるのがどれも小型かつ低ランクの魚ばかりだったこと。
どうやら、大きく岸を離れすぎると魚の大群に襲われて転覆してしまうらしい。なので、あまり岸を離れないように気を付けつつ網をおろして獲るんだって。
まあ、少し味は落ちるけど気にするのは止めてたくさん買ってきた。タンスイエビというのも美味しかったので、これもやっぱりたくさん買った。
たくさんのお魚を買い集めたら、ちょっぴり肩透かしだった湖の町のお魚料理と、遠景の方が素敵だった景色には三日で飽きて早々に王都に向かうことにしたんだよ。
王都と湖のあいだは人の往来が激しいのか、傷んでいる祠は特になかった。
割とサクサク進みに進んだおかげで、あっという間に王都にたどり着く。
ここで三か国目だと言うのに、わたしにとっては初めての王都だ。
祖国のブラン王国は、にぃにが逃げ出してきた場所だったから近寄れるわけもなく。モリエロ王国も、ヌンツィオさんが避けた方が良いと言ってたので行かなかった。
なので王都というのはどんなに素晴らしい場所なんだろうと、期待してたんだけど――なんだかとっても拍子抜け。
大きくて厳つい建物ばかりがたくさんあって、人も多い。けれど、言ってしまえばそれだけなんだもの。
それに、王都の周りからして地面がむき出しでゴツゴツしていて見た目があまりよろしくない。期待していたのが小奇麗で建物とおしゃれな住民的なものだったので、なんというかシオシオのションボリぷーだった。
もしかしたら、モリザイカイ町でそういったイメージがある程度満たされていたのも一因かもしれない。
あそこは、朝と夕方に見下ろす湖が本当にきれいだったから。
……うん、やっぱり、モリザイカイ町のおかげでハードルが上がりまくってたせいだね。マチガイナイ。
唯一の見どころは大神殿だったんだけど――わがままをこねまくってやっとのことで連れて行ってもらったのに、にぃにってば、一歩足を踏み入れた次の瞬間にはUターン。そのまま王都の外に大脱出ですよ。
なんなの、にぃに。なんなの、もうっ!!
――と、怒りつつも海へ向かう途中の町で事件に巻き込まれたわけですよ。




