物々交換
よく考えてみると、前回【駆け出しマーケット】でお買い物をしたときは、袋モノ以外を見ていなかった。
マジックバッグのことばっかり考えていたからね。
我ながら、視野が狭い。
必ず一つは交換するぞと心に決めて眺めてみると、なかなかどうして心が弾む。きっとコレは、物々交換だから!
お金の心配がないって、すごすぎる。
【駆け出しマーケット】で扱われているもののほとんどは、『製品』ばかりで素材の類が一切ない。あとは、Fランク以下の金属系アイテムも売ってない。
金属系は再利用しているんだろうと想像がつくけれど、素材系がないのはなんでだろうね?
あったら売れそうなのに。
あ、すぐに売れちゃうからたまにしか出店しないのかも。うん、それはありそう。
出店数が多いのはカゴやザル。それからゴザなんかの植物を編んだもの。
これは分かる。外は草原だからね。材料が潤沢で手に入れやすいのでたくさん製品も並んでいる。
わたしにとっては、【お庭】でアルキノコや果物を乾燥させるのにずっと欲しかったものだからメチャクチャ嬉しい。
大きめのものを根こそぎにする勢いで交換をお願いしたものだから、「そんなにたくさんどうすんの?」と売り子さんは首をかしげていたけど――まあ、気にしない!
時点で多いのが革小物。
袋物やポーチもあったけれど、思ったよりもアクセサリーやストラップが多い。
革製の小袋はすでにたくさん買い溜めしてしてあるので、ポーチをいくつか。それからアクセサリーを多めに交換してもらう。
ポーチもアクセサリーも魔道具の定番なので、次の町で魔道具にしたものを売るのもいいかも。
木工細工の露店では箱をいくつか交換してもらい、骨細工の露店でアクセサリーを購入。
素材が違うと、一口にアクセサリーといってもだいぶ雰囲気がちがう。骨のアクセサリーも、魔道具にする予定です。
「おい、あいつんとこで五つも渡してたけど、オレの分は残ってんだろうな?」
落ち着かない様子で声をかけてきたのは、ズルインズ三人衆のボス格っぽい狼人のお兄さん。ガルガル言ってて、ちょっと野性味が強いタイプっぽい。
「まだたくさんあるよ」
今日も【お庭】で、ハニブーンたちが熟したヤツを集めてくれてるからね。しばらくは在庫が尽きる予定はない。言わないけど。
「で?」
「……で?」
ズルインズボス(仮)のお店に並んでいるのは、大小さまざまな植木鉢と素焼きの壺。
素焼きの壺はサイズ感からすると容量は二リッタくらいで、わたし的に使いやすいサイズに見える。余分な水漏れをしないなら、素焼きの壺は欲しいんだけど――困ったことに、値段がついていない。
「素焼きの壺のランクとお値段が知りたいんだけど」
「Fランク。ひとつ大銅貨三枚だ」
……ちょっと、高くないかな?
大銅貨三枚って、三十ラーメだよね。
「ごめん。これに三十ラーメは出せないや」
「なっ!? なんでだよっ!!」
「いや、だって……無駄に装飾的で好みじゃないんだもん」
というか、花瓶として使うわけじゃないからね。
煮込みやスープ料理に使うんだから、スッキリとしてシンプルなものがいい。装飾があると、熱が均等に入らないから困るんだよね。
そもそもが【駆け出しマーケット】で許されているFランク品だから、装飾抜きでも厚みが均等じゃないのが分かり切っている。
「というか、なんで見るからに屋台料理用の量産品サイズなのに、外側に装飾つけちゃったの……?」
ズルインズのボスは最初からけんか腰だからね。
無理して彼にペシェの実をあげたいわけでもないし、すでに同じような壺はいくつか手に入れてある。もう、ここはなかったことにしたい気分なんだけどそれはそれでまた絡んできそうで面倒くさい。
ついでに、にぃにの露店スペースが近いせいもあって、ビシバシ視線を感じるのがすごく落ち着かない。
やだもう、にぃにってば。自分が向けられたわけじゃないのが分かってても、剣呑すぎる視線に尻尾がビャッてなっちゃうよ。
「お前さぁ……ソレ、もう投げ売りにしろって言ったヤツじゃん。なに値上げしてんの?」
「あ、兄貴。なんでここに……」
「うん? 魔道具師の卵がいるってウワサを聞いて見に来た。来ちゃダメだったのか?」
もしかしなくても、兄貴さんが見に来た卵ってわたしですね?




