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五日目 おすそ分け

「昨日はゴメンね……。おかげで、家の中がずいぶんとスッキリしたよ。ありがとう」

「「どういたしまして」」


 昨日の夕方に始めた大掃除は、お日様が完全に沈むまで続けられた。

途中で下の部屋の住人が床をドンっとやってきたので謝罪がてらスリーズの実を持って行くことになったり、カサカサする虫の巣が発見されたりと心臓に悪いこともあったけれど、とりあえず今は、訪ねて行った時のヤバい状態からは脱出できている。

みんな、とっても頑張った。


「まさか、あんなに端材をため込んでたなんて思わなかった」


 使い方によってはキチンとした製品に組み込めるくらい大きいのから、どうやっても使いようがない小さいのまで。すごい量の端材がでてきたもんね。


「弟君、ずいぶんと贅沢に資材を使ってたみたいだからねぇ」

「いい材料を使うと、実際の腕よりも見栄えがするから分かるんだけどさぁ……。ウチ、そんな資材を買い続けられるほどお金持ちじゃないのに。ホント勘弁してほしい」


 しかも、お父さんが使うように仕入れてあった高価な資材を使った練習作品をただで近所に配っていたらしい。


「在庫管理、大事だよ」

「耳に痛いお言葉です、お兄さん……」


 なにやらしみじみと呟くにぃに(・・・)に、袋物のお兄さんは半笑い。なんか、精神的ダメージが大きかったみたいで元気がないね。


「でも、資材庫に鍵つけるんでしょう? 次はないのでは」

「次……ないといいなぁ……」


 資材庫に鍵がつくまでの間、弟さんはお父さんと一緒に毎日お店に行くって言ってたし、きっと平気だと思います。


「とりあえず、これ食べて元気出して」

「わーい、ありがとぉー」


 おやつに持ってきたペシェの実を差し出すと、魂が抜けていそうなお礼の言葉が返ってきた。

これは重症だ。

回復魔法は効かないヤツだけど……精神魔法なら、もしかしたら元気になるかも?

いやいや、やれませんよ。そんな、人体実験みたいなこと。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 ひっそりと魔道具作成スキルがBになったおかげで作成速度が上がり、今日は午前中のうちになんと一五個も魔導基盤が作れてしまった。


 すごいね、すごい。

頑張った成果が、こうして実感できるのが素晴らしいと思います。

もう、何度でも感動しちゃう。


 ふぃ~っと、掻いてもいない額の汗をぬぐいつつ空を見上げる。


「なんと。いつの間にかお昼ご飯の時間じゃないですか」

「そうだね。フェリシア、そろそろお弁当食べる?」

「うにゃ」


 今日のお弁当は、銀麦おにぎりとヘビさん&ウノピョンの唐揚げ。

ヘビさんもウノピョンも歯ごたえ――というか、弾力があるタイプのお肉なので、薄切りするのがポイントです。おかずが揚げ物で重めかつ旨味が強いので、おにぎりはあえて具なしの塩むすびで。


「漬物はないの?」

「あ、ヴェルリーリョの浅漬けを忘れてたね」


 ヴェルリーリョは、わりとどこにでも生息しているらしい逃げる根菜のこと。日当たりが良くて水場が近い場所に群生していた、人が近づくと一斉に逃げ出す不思議植物なんだよね。

捕まえたヴェルリーリョは、動かなくなるまで水に浸けておかないとひどいえぐみがでる。その特徴から、草食の魔獣も食べないので人里離れた場所にたくさん生えているんですよ。


 もちろん、わたしたちが巡ってきた寂れた祠の周辺にも結構生えていましたとも。入れ食い状態です。おかげで、在庫がたくさんある。今度は煮物でも作るか……


「はい、おにーさん」

「ぅえ!? え、あ、僕もいいの?」

「うにゃ。いつも仲良くしてくれてるので」


 というかね、前々から気になっていたんだけど、いつも袋物のお兄さんはお昼ご飯を食べてない。それなのに、わたしとにぃに(・・・)のふたりだけでパクパク食べてるのはちょっと気まずいが過ぎるんですよ。


「エリオ、もらってやってよ。フェリシアが心置きなく食べれるように」

「あ~……そういう。なら、ありがたく!」

「にぃに(・・・)、いつの間に名前を呼ぶほどおにーさんと仲良くなったの」

「フェリシアが集中して作っている間に話してただけだよ」

「ほとんど、妹ちゃんのノロケ話でしたけどね」

「えええ……」


 にぃに(・・・)、やめて。

本気でメチャクチャ恥ずかしいので。

 

 気まずさを誤魔化すためにヘビさんの唐揚げをひとつ、口の中に放り込む。


「ん、上出来」


 旨味が強いヘビさんの唐揚げはあっさり目の塩味にしたんだけど、やっぱり正解だったっぽい。コク出しにはちみつを入れるか悩んだけど、入れてたらきっとくどくなってたんじゃないかな。


 モギュモギュと咀嚼しつつ、自分の味付けに満足しながらおにぎりをパクリ。

いい感じにお口の中がリセットされて、またまた唐揚げが食べれちゃう。

うう~っ!

口の中に旨味汁がっ!!


「うわ、すごい美味しい」

「でしょ?」


 わたしがモグりはじめてすぐに、袋物のお兄さんも食べ始めたようでうれしい感想を言ってくれている。

そしてにぃに(・・・)がなぜかどや顔。自慢するようなポイント、どこにもないですよ?

おかしなにぃに(・・・)だね。

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