大掃除
今日の露店は早じまい。
袋物のお兄さんのおうち兼工房で、マジックバッグの基礎基盤を卸すお約束があるのです。にぃにに至っては、わりと早い時間に売り物がなくなってヒマしていたので早上がりには大喜びだった。
まあ、わたしも【衝撃緩和】と【耐暑】が充填付きで売れたからね。ホクホクです。
本日の売り上げ、三七八ラーメなり♪
フフフンフン♪
「父さん、頼んでたのできたってっ」
袋物のお兄さんのおうちは、縦にも横にも長い建物に細切れにされた部屋がたくさんあるいわゆる集合住宅だった。招き入れられた場所はなんだかとてもこじんまりとした空間で、ヒガシショユ村のトリーのおうちを思い出す。
あとでまた、お手紙書こう。
トリーとは、ときどき神々経由で手紙のやり取りをしているのです。
神々も神子や愛し子相手には甘いのか、伝言やお手紙配達なんかの雑用を気軽にしてくれる。
トリーとの文通を知ったにぃにに『神々に何させてんの!?』と当初は大目玉を食らったんだけど、今では怒った本人もヌンツィオさんとお手紙交換しているらしい。
甘やかしてくれる神々、最高すぎです。
それはそれとして。
袋物のお兄さんのおうちは、扉を開けてすぐの部屋が台所&居間&工房という状態になっていた。
なので、まだ作業中だったおじさんと弟君といきなり「こんにちは」。わたしたちもだけれど、こんにちはされた方もギョギョギョギョギョッと固まった。
「――って、うわっ! また、洗い物サボってる!!」
そんな双方の膠着状態を袋物のお兄さんの悲鳴がやぶる。
「あ、ゴメン。わっすれてたー」
「忘れてたじゃないよ。今からやって。早く、すぐに、大急ぎ!」
「え~!? 水汲みからじゃん、やだよ。革いじってたい」
軽い口調で謝りつつも、おそらく自分のお仕事であろう皿洗い(と多分お掃除)を断固拒否する弟さん(?)に、袋物のお兄さんもさすがにキレそう。そしてついでに、わたしの用事が終わらなそうで困った困ったの困ったさんですよ。
ちなみにお父さん(仮)は、息子たちがもめてるのを横目に、お客さんが座る場所をあけようとイスに積みあがったモノを片付けようとして余計に足の踏み場をなくしている。
カオスだ。
カオスすぎる。
「……フェリシア、明日改めて来ることにしたら?」
「いや、コレは介入した方が良さそげ。明日きたら、もっとひどいことになってる予感しかないよ」
っていうかね。
この様子だと、今から袋物のお兄さんがひとりで洗い物を全部片づけて、ご飯を作るんでしょう?
テーブルの確保だけはお父さん(仮)がやってくれそうだけど、ちょっと袋物のお兄さんの負担が重すぎる。おうちのことだからホントは余計なお世話だとは思うんだけど――手を貸せる間くらい、お手伝いしたいと思うのですよ。
「仕方ない。じゃあ、僕も部屋の片づけを手伝うか……」
「うにゃ」
そしたらわたしは、その間に洗い物かな。
そこそこ時間がかかりそうだから、ピニャーシュさんとロイさんにはお夕飯の買い出しをお願いしよう。
「袋物のお兄さん、手伝うよ~」
というわけで、大掃除、開始です!
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まず手始めに、部屋を光魔法で照らし出す。
袋物のお兄さんたちはみんな猫人だから、そんなに明るく照らす必要はない。それでも、夕方の室内で足元の暗がりを見通すのはちょっとキツイんだよね。
そんでもって、そういうところにこそ、いつの間にか失くしていた小間物が落ちているもの。
家の中をピッカピカに磨き上げる必要はないけれど、床に落ちてる不用品はもののついでに処分した方が良さそうだからね。
案の定というかなんというか……まあ、ひどい状態。
にぃには早くも手伝うことにしたのを後悔したようで、顔をひきつらせている。
「うわっ、汚ねっ!!」
「昨日、もう少しきれいに見えるように整えたのに……」
真っ先に声を上げたのは、弟さん。
ガックリと肩を落としつつ呟く袋物のお兄さんの反応からすると、汚くしているのは弟さん、君だよね?
お父さん(仮)は、想定以上の惨状に言葉を失っている。
「今から店に――いや、あっちはもう閉まってるな……」
「とりあえず、お願いされてたマジックバッグの魔道具化するためのスペースも必要なので、ちゃっちゃっとできる範囲だけでも片付けちゃおう。おじさん」
「あ、ああ」
というわけで、道具の整理はお父さん(仮)。素材の片づけを弟さん。部屋全体の整理&指示は袋物のお兄さん。にぃにはゴミ運び。そんでもって、わたしは洗い物全般が担当です。
え、服?
それはすぐに終わるもんじゃないし、明日以降にお願いします。




