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気を付けて

 ランチュータワー作戦は、思った以上に上手くいった。

一匹がわたしのイス代わりになったことでどの方向に倒れこむかが分かるのか、転がる方向に回り込んだ残りの三匹がクッションになってくれている。

なんて賢いんだ。

ウチのランチューたちが、最高すぎです。


 午後はランチューにサポートしてもらいつつ、『耐暑』の魔導チップを三つ作ったところでお客さん(という名の冷やかしの人)が現れ始めた。

ただ、露店で子供が売っているような魔道具にちゃんとした効果が期待できるのか、と懐疑的な態度の人が多い印象。その反面、きちんと取扱品で見込める効果を説明することで興味を持ち、購入を真剣に検討し始める人もいて、あまりヒマする時間がない。


「靴に【衝撃緩和】と【充填】をつけてもらうと……」

「魔導チップがひとつ銅貨六三枚なので、【衝撃緩和】と【充填】のふたつ合計して銅貨一二六枚。魔導チップをふたつ連動させるために魔導基盤が必要になります。そうすると追加で銅貨六三枚が必要になるため、最終的に銅貨一八九枚です」

「おおう……。ほぼ、銀貨二枚かぁ……」


 硬貨は銅貨→大銅貨→銀貨→大銀貨と、一〇枚単位で繰り上がっていくからね。

銅貨で一八九枚なら、たしかにほぼ銀貨二枚相当の金額――それなりに状態が良い古着が一着買える値段なので、まあ、悩む気持ちもよく分かる。結局、買おうかどうか悩んでた人はお財布の中身と相談して、また明日来る予定らしい。

相談しても、お金が湧いて出てくるわけじゃないと思うんだけど……まあ、来ないだろうって思っておこう。


 ちょうどお客さんの波が切れたところで、休憩&おやつタイムと洒落こみますよ。

今日のおやつは、最近になって採れるようになったフルーツトレント・スリーズの実です。


「ん~♪ スリーズの実、美味しすぎるっ!」


 【お庭】で育てているフルーツトレントたちは、この半年ほどの間にすくすく育って今がちょうど収穫期。ハニブーンたちが収穫作業に張り切っているから、毎日くだものが食べ放題のパラダイス状態なのです。

ツヤツヤで透き通る赤い果実の色合いもきれいだし、スリーズの実のジューシーで程よい甘酸っぱさが、ここ数日のお気に入り。見た目も味も、最高だからねっ。

収穫してくれている、ハニブーンたちにも大感謝です。


 今度、かかさま(魔神様)からお菓子の作り方も習う予定なので、それも今から楽しみすぎるっ。


「ねぇ、ほんとにもらっちゃっていいの?」

「うにゃ。たくさんあるからね。どーぞどーぞ」

「やりぃ!」

「いくつまで!?」

「……とりあえず、ひとり三つまでで」


 たくさんあるので駆け出しマーケット仲間におすそ分けすることにしたんだけど、思った以上に食いつきがよくって驚きです。大きなカゴにいっぱい持ってきたんだけど、両腕に持ち切らないほど持ち帰ろうとする子までいるものだから、さすがに数量制限を付けることにした。

 いや、だってね。

そもそも、ひとつひとつが大きいんですよ。

スリーズの実がわたしの握りこぶしくらいの大きさ(五~六センテくらい)がある。結構なサイズ感なので、わたしだとひとつ食べたらほかのものを食べるのがきつくなってしまうのだけれど……みんな、三つくらいはあっというまに食べつくしちゃうんだね。

明日は、三倍サイズのペシェの実を持ってこようと心に決める。こっちはふわふわピンクで優しい肌触りの、甘みが強いくだものだからみんなも気に入るはず。


「なんか、こう。いろいろと突っ込みどころが満載なんだけど……」


 ムグムグとスリーズの実を食べながら、袋物のお兄さんがポツリとつぶやく。


「あんまり分かりやすくいろんなスキルを使って見せると、怖い人に目を付けられかねないからね。気を付けないとダメだよ」

「うにゃ?」


 言われている意味が分からなくって、わたしとにぃに(・・・)はコテンと首を傾げた。

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