一回休み
結局今日は、在庫補充のためという理由をでっちあげて【お庭】に引きこもることにした。
露店三日目になる予定だったけど、まぁ、どうしてもやらなきゃいけない義務もない。
なんとなく、なんとな~く、ズルしてお仕事サボってる的な気持ち悪さがあるのは……まあ、うん。また、昨日のように大勢の知らない人たちに囲まれて注視されることを考えれば、全然平気だし。
なんか、目的だったはずの情報収集そっちのけで、売り上げ上げたい気持ちが暴走してた気がするので、頭を冷やすのにちょうど良い……ような気がしたりしなかったり?
「うん……とりあえず、いいことにしておこう」
ゴロゴロしたりモゾモゾしたりしながら寝床にしがみついていたけれど、さすがにそろそろ起きなきゃマズい。
なにせ、昨日は精神的なダメージがひどすぎて、にぃにの顔すら見ていないのです。
妹を絞め殺しかけた訳だから、あの人、きっと切腹する勢いで凹んでると思うんだよね。ちゃんと顔を合わせて、『大丈夫、気にしてないよ』『次がないように気を付けてね』と伝えなければ。
フンスと気合を入れて【お庭】を出たわたしをお宿で待っていたのは、ベッドの上で座禅を組んで瞑想しているピニャーシュさん一人。
「うにゃにゃ?」
不思議に思いつつ窓を見ると、すでにあたりが明るくなっている。
どうやらわたし、出遅れすぎたっぽい。
今、何時ですか?
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ピニャーシュさんと朝のあいさつを交わした後、にぃにの行方を聞いてみる。
「グラ坊なら、駆け出しマーケットに行くといって出かけておる。そのまま露店を出すそうじゃ」
「ということは、ロイさんはにぃにの近くをウロウロしてるってことだね」
「護衛じゃからな」
「従者じゃなかったっけ」
「どちらも大して変わらん」
ホントはピニャーシュさんも、にぃにの護衛さん。
ロイさんとおんなじ立場の人だ。本来なら、わたしじゃなくてにぃにのそばにいなきゃいけないんだよね。
それなのにわたしのそばにいてくれているのは、にぃにの弱みになる可能性があるから。
不本意かもしれないけれど、それで一時的に護衛役を買って出てくれてる。
ありがたい反面、たまにものすごく申し訳ない気持ちになるのは、わたしのせいでお仕事をほっぽり出さなきゃいけない時――今日みたいに、わたしだけ起きてこないのを待たせてた時とか。
「なんか、いつもピニャーシュさんにはご迷惑をおかけします」
「迷惑などかけられとらんが……?」
いや、いや。
どう考えても、ピニャーシュさん。わたしが出てこないせいでヒマして瞑想ごっこしてたよね?
「それで、今日は商材づくりに専念するんじゃったな」
「ああ、うん。そういう建前で引きこもることにしちゃいました」
「なんじゃ、建前じゃったのか。ならば、今日は一日のんびりするのもいいじゃろうな」
のんびり――その言葉には心惹かれなくもないけれど、やっぱり明日は駆け出しマーケットにリベンジしたい。
昨日は不意打ち的に大勢に囲まれててビビクッちゃったけど、思い返してみると好意的な視線が多かったような気がする。
あと、袋物のお兄さんからの注文もある。
『充填』チップの在庫が一枚もないのはちょっと心もとない。
「のんびりは旅の合間にもできるし、明日の露店のために魔導チップ作りをがんばる」
露店での作業だって、魔導チップを作りを見物する人がいる前提でいれば、昨日みたいなことにはならないで済むかもしれない。
もし、やってみた結果ダメだったら、この町での露店は諦めて次の機会を探ればいいと思います。
露店自体はね、やりたいんですよ。
なんか、楽しいので。
「あ、でも。飽きたら気晴らしに別のこともするかも」
ランチューたちとお昼寝したり、毎日増えていくフルーツトレントの実を干したりと、やりたいことはたくさんあるからね。ちょっと、一日の長さが足りないレベルです。
手伝える作業があったら声をかけてほしいとピニャーシュさん言ってくれたので、やるとしたらフルーツトレントの実の処理がいいかもしれない。




