座椅子失格
【異空収納】【生物拒否】【充填】と、魔導チップを連続して作っていく。
最初の魔導チップを作り終えたときに後ろに向かって倒れこんでしまったものだから、ふたつ目に取り掛かろうとしたらにぃにの自分のお膝に乗るように厳命されてしまった。どうやら、自室で魔導チップを作り終わるたびに『できた~!』と転がっていたせいで、妙なクセがついてしまったみたいです。
なおさねば。
異空収納型マジックバッグの基礎ともいえる三つのチップがそろったら、あとは魔導基盤の設定を確認!
「うにゃ、かんぺき」
「ん……できあがり?」
「あとは、素体に同化させればできあがりだよ。にぃに」
「そっか。あと少しだね」
「うにゃ」
素体――魔道具化する用の容れ物は、【駆け出しマーケット】で買い集めた巾着袋。
マジックバッグの場合、基盤とチップがきちんとしていれば素体のランクは関係なく機能するそうなので、あえて作りの甘いFランクの袋を用意しました。
なんというか、お高い魔道具には見えないでしょう?
素体の上にチップをセットし終えた基盤を置いて、同化作業を開始する。
この作業も魔道インクを作るのと大して変わらない難易度で、時間もそれほどかからない。それでいて、同化過程で基盤やチップに刻んだ紋様が光を帯びて素体に吸い込まれていく様がとてもきれいでお気に入り。
「魔道具作りってはじめて見たけれど、なんか、すごくきれいだねぇ……」
最後の刻印の光の残滓が消えてから、ため息交じりににぃにがつぶやく。
「うにゃ」
「見栄えもするから、お客さんの目を惹くかもね」
と言うのは、袋物を売ってるお兄さん。いったいいつの間に来たんだろう?
「今日は売れると思う?」
「それは……どうだろう?」
作業中の光景が見栄えしたとしても、売り上げに直結するわけじゃないか。
ザンネン、しょんぼり、策練ろう。
「売れないようなら、僕が買うよ」
「いや、にぃにが買ってどうすんの」
そもそも、身内に売るつもりはありません。売れ残ったら自分たちで使う予定だからね。売れてほしくはあるけれど、売れ残ることにそれほど忌避感はないのです。
「それにしても、加護の儀からそれほど経ってるとは思えないのに、もうマジックバッグが作れるなんてすごいね」
「フェリシアは魔道具作成スキルを高ランクで授かっただけじゃなく、スキルを伸ばす努力もしているから当然でしょう」
袋物のお兄さんに、なぜかにぃにが胸を張る。
「魔導具神さまに愛されてるなんてすごいね」
たしかに魔導具神さまにも可愛がっていただいているけれど、それはかかさまの七光りです。なんて言えないので、あいまいに笑って返したところでにぃにの腕がお腹に回された。
あ、コレ。
やばい状態っ!
そう思うのとほぼ同時にメチャクチャ嬉しそうな声が頭上から降ってくると、ムギュッと後ろから抱きしめられる。
「そりゃあ、もう。これだけ可愛いんだから当然でしょうっ」
「ぅぐうぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
なんというか、乙女の口から出てはいけない音が出たよ。
ギブ、ギブ!
にぃに、力が強すぎです!
ベシバシと、必死になって尻尾でにぃにの腰のあたりを叩きまくる。
息っ! 息がっ!!
「あっ! ごめんっ」
ギュウギュウと腕を締め上げながら、高速頬ずり攻撃をブチかましてきてたにぃにが、不意に正気に戻って力を緩めたのでフラフラしながらお膝を逃げ出した。
「あ、危うくオトンとオカンに合流するところだった……」
熱病にも罹らなかったわたしが、危うくお亡くなりになっちゃうところですよ?
「ごめん、フェリシア」
ゼヒゼヒしていると、にぃにが謝りながら背中をさすりはじめた。
「にぃには人一倍力が強いんだから、思いっきりギュウするのは禁止だっていつも言ってるよね? よね?」
「うん、言われてる……」
とりあえず、しょんもりと下がってきた頭をペシペシ叩いて、ちょっぴり不満を晴らしつつ唇を尖らせつつどうしたものかと考える。にぃにってば、力加減をすぐに忘れるんだよね。
「なにはともあれ、にぃには座椅子失格です」
「えええ」
「座ってる人を絞め殺そうとするイスなんて、怖くて座れないじゃないですか。クビですクビ」
プンスカ怒りつつ、イス代わりにしていた桶を出しなおして腰掛ける。
にぃにはショックそうな顔しているけれど、危険で危なすぎるのでにぃにのお膝には乗れません。
「それじゃあ、作業終わりに転がっちゃうクセを早く直さないとだね」
「うぐぐ」
それは、その通りだね。
でないとにぃにに膝抱っこの口実を与えてしまう。
なんかいい方法を考えないと、にぃにに絞め殺されてしまいますよ、わたし。
死ぬ気で考えろっ!




