お世話になりました
お日様がやっと町を照らし始めた頃合いに、【駆け出しマーケット】の出店手続きを終わらせる。
【駆け出しマーケット】に出店する人はもっと遅い時間に来るみたいで、にぃにとわたしのお店はお隣同士。
ほかに人がいないからと、好きな場所を選ばせてもらえたからね。にぃにはとってもご機嫌です。
「フェリシアは、暇な時間に魔道具作るんだっけ」
とりあえず昨日と同じように商品を並べ終えたところでにぃにが訊ねる。
「うにゃ」
昨日はぜんぜんお客さんが来なくてヒマだったからね。
朝早くから場所も取ったことだし、マジックバッグ作りに挑戦しようと思っています。
商品を並べる台とイス代わりに使うオケをイチイチ持ち運ぶのが大変なので、この際ランクが低くてもかまわないかな~と思ってDランクの魔石と魔道インクを用意してきました。
この材料だと上手に作れてもDランクのマジックバッグにしかならないんだけど、露店用品を入れる目的ならこれで十分です。
ぶっちゃけ、にぃにが狩ってくる魔獣を売り払う用でなければ、そんなに大きいマジックバッグが必要なわけでもないので。
「にぃにもなんかヒマつぶしの道具もってきてる?」
「まあ、午前中はヒマだって聞いてたからね」
にぃにが出したのは、ボロボロに錆びた細長い物体だった。
「え……ナニソレ」
ぶっちゃけ、わたしにはただのゴミにしか見えない。
どうやら武具を扱っているお店で廃棄しようとしていたものを、ただ同然で引き取ってきたらしい。
「錆びの原因を取り除いて、少し歪みをとればFランクになるからね」
まさか、今日の商材の出所がゴミだったとは。
廃品のリサイクルが【駆け出しマーケット】の趣旨に合ってるのかとか、いろいろと突っ込みたいところではあるけれど……まあ、いっか。最低限のルールは守ってるからね。きっと、問題なかったんでしょう。
ほら、受付のおじさんも何にも言わなかったもの。
細かいことは気にしないことにして、作業の準備を始めよう――と、その前に。
「にぃに。貫通矢って、Dランクで良さそうな感じ?」
「前に作ってくれたのと同等なら、魔獣領域の入り口付近までなら十分だね。あれ? 今作ってくれる感じ?」
「あー、ごめん。今から作るのは別のなんだけど、ついでにインクの予備を作ろうかと……」
「うん。ここにいる間は狩りに出ないし、急がないから気が向いたときでいいよ」
「うにゃ? そうなの?」
「フェリシアとのんびりお店屋さんごっこも楽しそうだなーと思ってね」
よく分からないけど、とりあえずしばらくは狩りをしないってことでファイナルアンサー?
暇さえあれば、ロイさんを引き連れて狩りをしに行ってばかりだったので、すんごい違和感ですよ。
まあ、【貫通】の魔導チップを急かされるわけじゃないから良いことにしておこう。そうしよう。
というわけで。気を取り直してインク作りに取り掛かります。
インクの材料は、油か脂を百ml。
それから作りたいランクの魔石に、色付け用の染料か顔料を少々。
以上の材料を適当な容器にまとめて入れたら、魔力伝導率の高い銀製のヘラで魔力を込めながらグルグルひたすらかき混ぜるだけで出来上がる。
かかさまいわく、『魔石と溶媒の魔力値が均一になると、魔石が液状化する』のだそうだけど――ちょっと、意味が分からない。
溶媒って油や脂のことでいいのかな?
なにはともあれ、材料を入れたらカラコロ音が鳴らなくなるまで混ぜるだけです。
魔道インクは百個分を一度の作業で作れるから、とってもラクチン。魔導チップと比べて、出来上がるまでの時間が短いのも魅力です。……それでも、初期は八時間以上かかったんだけども。
最初から魔導チップを作ろうとしていたら、いったいどれだけ時間がかかったんだろうね? 想像するとこわいので、考えるのはやめとこう。
ちなみにこの魔道インク、ランクCになった今では五分で出来上がるんですよ。
すごすぎない?
なにはともあれ、魔導チップや魔導基盤を作るための必需品だし、初期のランク上げではとってもお世話になりました。




