にぃにの鍛冶場案内
ピニャーシュさんとロイさんが帰ってきて事情を聞ける状態になるのを待つ間に、にぃにに鍛冶場を案内させる。
外から見た感じだと、入口から左は木造だけど、右の方は石造りの建物だ。
中に入ってすぐの場所は土間になっていて、正面と右側面に引き戸がある。
「ここで煮炊きしていいの?」
「一応、そのための施設と道具は揃えたけど……フェリシア、お料理できる?」
入ってすぐの左側にかまどや水瓶、調理用のナベや食器類を積み上げた棚があったから訊ねると、にぃには実に疑わしげな表情で確認してくる。
「モチロンできますともっ」
オカンのかわりに食事の準備もしてたからね、ちゃんとご飯は作れます。
「高魔素材も?」
「大丈夫。かかさまに教わったから、カンペキに処理できます」
「いやいや、オカンはメシマズ&調理スキルなしだったじゃん」
「そうだねぇ……オカンのご飯はヤバかったよね…………」
あっ、思い出すと、今でも嫌な汗が出てくるよ。
ちゃんと処理されてない高魔素材料理って、毒と変わらないからね。
ちなみに、ハズレ村周辺の森で取れる食材はほぼ高魔素材なので、調理スキルがないと本気で死ねる。普段は村のスキル持ちの人が調理済みのものを持ってきてくれてたんだけど、たまーーーーーに、オカンが気まぐれに適当料理を作って出してくることがあったんだよ。
見た目もヤバい(消し炭orほぼ生&腐臭)から、口にいれることは無かったけど。
「……待って。かかさまって、誰?」
オカンの料理に思いを馳せていたら、にぃにが面倒なことに気がついた。
聞こえないふりしてやり過ごそう。
「右の扉は~?」
「え? ああ、右手の引き戸から先は鍛冶仕事用のスペースだけど、立入禁止だよ」
「にぃにって、仕事場に人を入れないタイプ?」
「というか、重量物や危ない道具がたくさんあるというのもある」
「イタズラしないよ?」
「とにかく、入らないで」
「はぁ~い」
……ごまかせたかな?
「そういえば、かまどのそばの水瓶、常に水が湧き出るようになっているから水汲みもいらないよ」
「ソレは便利!」
「ゴミの類は全部かまどに放り込んでね」
「生ゴミも?」
「生ゴミもなぜか燃える」
「すごいねー」
「神々謹製だから……?」
「そっか。神様がくれたんだもんね」
神々がらみのアイテム類は、機能する理由を聞いちゃダメなんだね。理解した。
「上り框から先は、生活スペース的な場所だから土足厳禁だよ」
「りょーかいっ」
床でゴロゴロできるわけですね?
とってもとても、良い場所だと思います。
「大神殿にいる間は鍛冶場しか使ってなかったから、布団が一組あるだけなんだけど――」
「囲炉裏があるっ!」
「うん。ここまでの道中は、ピニャーシュが買ってきてくれた出来合いのものを温めて食べるのに使ってたかんじ」
なんか、ウワサに聞く串焼き肉とか串焼き肉とか串焼き肉とかそんなカンジのものかな?
お野菜も食べたほうがいいよ、にぃに。
ソレはソレとして、わたしが詰め込んでいた毛皮類が囲炉裏のそばに敷かれてる。
「かかさまが誰かは置いといて、正直な話、フェリシアがきちんとお料理できてくれたらものすごくありがたいよ」
「……ちっ」
……ごまかせてなかったかっ!
「品性が疑われるから舌打ちはやめようね、フェリシア」
「はぁい……」
「とりあえず、オトンが二人目を娶るのは意外だったけど、まあ……しかたないよ」
「…………」
オトンの信頼というかなにかが、しんみりとした声で呟くにぃにの中で砕け散った気配がするけど、わたしは説明しないことにした。オトン、愛人も二番目の妻もいなかったよ。最期まで、オカンとラブラブでしたとも。
「あ、入口の隣りにある引き戸の先に、おトイレとお風呂があるよ」
「ソレ大事!」
おトイレ、ちょうど行きたくなってきたところだったんだよ!
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一通り鍛冶場の中を案内してもらったので、わたしはお夕飯の準備をすることにした。ピニャーシュさん達が帰ってこないと、にぃにの事情説明とか今後の予定を聞けないからね。
さいわいというかなんというか、わたしが荷物に詰め込んでいた諸々の物資は上り框に積み上げられている。穀物や塩、マナマップの施されたお肉と、それなりに食材は豊富だ。
色々と食材を詰め込んだわたし、グッジョブ!
「ただ、お野菜系がないんだよねぇ……」
「一度外に出て、採って来るって手もあるよ?」
ピニャーシュさん達は別れた場所に戻ってくるから、鍛冶場の入口を作った付近で探す分には問題ないらしい。
「そういえば、ピニャーシュさんとロイさんがもどってきたときに鍛冶場の中にわたし達がいたら困るのでは?」
お迎えの人がいないと中に入れない的な方向で。
「あのふたりは従者登録してあるから、僕が鍛冶場にいても勝手に出入りできるよ。なぜかフェリシアは登録できなかったから、僕が招き入れるしかないけど」
「なんでダメなんだろうねぇ?」
「なんでかなぁ」
不思議だねと返しつつ、にぃにといっしょにお喋りを楽しみながらいっぱい野草を集めた。
雑談ついでにロイさんのことを訊ねてみたら、ピニャーシュさんと一緒にウチの村からにぃにに着いて行った人らしい。護衛役兼従者ということにして、大神殿でもそばにいてもらってたんだって。
ハズレ村に獅子人は居なかったはずなんだけど――なんかの事情で住み着いてた人なのかな?
「ピニャーシュもロイも、フェリシアの面倒もよく見てくれてたけど……覚えてない?」
「にぃに。わたし、その頃五歳ですよ?」
わたしを可愛がってくれる人なんて、それこそ村中にたくさんいたのです。覚えているわけがないよね。




