閑古鳥対策
朝のピークタイムが終わってしばらくすると、包み焼き屋さんのおじさんがやってきた。
「か~っ、魔道具ってのはやっぱり高いんだなぁ~っ」
というのが第一声だったんだけど、まあ、そうだよねというのが感想です。
おじさんとこの包み焼きが、ひと皿五銅貨なんだもの。わたしの今日の売り物ひとつが六三銅貨なので、なんと一二皿買ってもおつりがもらえてしまう。
……まあ、ウチの場合、外食すると一食分に足りない金額なんだけどね。わたしとピニャーシュさんだけならまとめて十銅貨でおなか一杯になっちゃうのに、ロイさんとにぃにが食べすぎなんですよ。
なにかしら買ってやろうと思ってきてくれたらしいんだけど――魔道具って、ランクごとに値段がキッチリと決められちゃってるんだよね。勝手に割引とかしちゃいけないんだと、受付のおじさんに言い含められている。
包み焼き屋のおじさんにはお世話になってるので、お安くしたいところなんだけど……もどかしい。
結局、悩みに悩んだ後で「また明日来るわ」と言って、おじさんは自分の屋台に帰っていった。
さらには、午後になってお客さんが増える時間になってからもわたしの店だけ閑古鳥。
これは、露店用の商材として魔道具が向いてなかったのか、それ以前の問題なのかが悩ましい限りです。
「今日は残念だったねぇ」
「うにゃ……」
お隣の袋物をあれこれ扱っているお兄さんに慰められつつ、ご相談。
「魔道具がお高いのが問題なのか、ランクが低い魔道具に需要がないのか、どっちかなぁ……?」
「たまにだけど、魔道具を扱う子はいるからね。需要がないわけじゃないと思うよ。原因は、たぶん未完成品だからじゃないかなぁ」
「完成品というと――魔道具化まで済ませてないとダメってことだよね」
使い慣れた道具や手持ちの服に魔道具化するサービスもするつもりなんだけど、看板兼値段票にもっと詳しく書くべきだったのかなと思っていたら、「魔道具化というのは分からないけど、効果だけ書かれててもどうやって使うのかイメージできないよ」と苦笑されて考えを改める。
せめて、どういった物を魔道具化させるとよいのかわかるようにしないとダメなんだろう。
なにか、わたしの思惑を通しつつ、いい感じにお小遣い稼ぎができる方法を考えないと……
魔道具化済み状態で売ることにすると、その分値上がりしちゃうからね。なんとか魔導チップ状態で販売したいのです。
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晩御飯を作りつついろいろ考えてみたものの、イマイチいい案が浮かばない。
「というわけで、良い案募集中!」
「え~? 良い案……良い案って言われても、ねぇ……」
「魔道具っていうと、マジックバッグぐらいしか思いつかないしな~」
ひとりで悩むより、ほかの人も巻き込んじゃえ! と思い、にぃにたちに相談してみたものの、あんまりにも反応が悪すぎる。
ちなみに、真っ先に相談してみたのはピニャーシュさんだったんだけど、「ワシは商売のことは分からん」というお返事をもらっている。
あとの頼みの綱は、このふたりしかいないのにあんまり頼りにならなそうでガッカリです。
「前に練習で作ったっていう貫通矢だって、使えなくなってから効果を実感してるとこだしねぇ……魔道具とふつうのものを使い比べてみないと、ちょっと出しづらい金額だし……」
Fランクの魔道具も、わたしなら半月は三食食べられる値段だからね。(宿泊は考えない)そりゃあもう、お高いですよ?
「要するに、駆け出しマーケットの趣旨にあってない、と……」
同年代――十代前半の人たちが集められているっぽい駆け出しマーケットエリアだと、実際問題、銅貨十枚以上の金額を求められる商品はほとんどない。
全くないといわない理由は、ランクの低い【魔法薬】が銅貨十~二十枚で販売されていたからなんだけど――薬と違って、魔道具は必ずしも必要ってわけではない。扱いが難しくなったり、労力が余分にかかったりするだけで、魔道具でないふつうの道具でも同じことができてしまうことが多いんだよね。
「というか、僕としては、またフェリシアに貫通矢を作ってほしいんだけど……」
「ん~……今は露店優先で」
「なんとしても、駆け出しマーケットとやらで売りたいんだね……。なんか、ムキになってない?」
……ムキになってるわけじゃ、ないはず。とりあえず、今のところは。
でもまあ、なんとか作った分くらいは売りたいなーと思ってるから、ムキになってる、とも言えるのかな? よく分からならないな。
「ムキにはなってないと思う。まだ、初日だし」
そう、まだ初日。初日なのです。
でも、このまま残りの六日間閑古鳥が鳴き続ける露店とかイヤすぎるので、今のうちに対策しときたいんですよ。




