トホホのホ
それはそれとして、ふと気になったことがあるので訊ねてみる。
「露店って、もしかして、わたしでも出せる?」
「うん? 露店は誰でも出せるよ。ここみたいに、町で運営してるトコだと銅貨一枚からだしね」
「おお、お手軽価格」
「そりゃまあ、見習いの資金稼ぎに使えるくらいだから」
お手軽価格で開けるというこの露店。
職人見習いの技術向上を目的にしているのか、取り扱える品目が限られている。
具体的に言うと、食料品や料理はNGで【~作成】系統のスキルで作られたFランク以下の品物までしか売っちゃダメなのだ。あと、価格が統一されている魔石もダメ。
NG品目に関しては、屋台か店舗でならOKらしい。
そんなわけで、ミルギューミルクやチーズは食品に分類されるので不許可。
となると、魔石作成スキルで売り物にできるのはFランクの魔導基盤と、魔道具作成スキルで作れるFランクまでの魔導チップの二種類ってことになる。
ちなみに、魔導基盤は複数の効果を組み合わせるタイプの魔道具を作るために必要になるパーツ。
んでもって魔導チップは、この魔導基盤に取り付けるためのパーツになる。
効果が一種類しかない使い捨ての魔道具には魔導基盤は必要ないけど、魔力補充用の魔石を組み込む場合には必要になるっぽい。
わたしにはまだ、そういう機能が必要な魔道具は作れない――というか、魔力の充填機能が必要なレベルのものを作れる段階に至っていません。マジックバッグを作れるようになったら必須なんだけど……
なにはともあれ、スキル上げのために使う予定もないものを作り散らすのにもゲンナリしてきた今日このごろ。にぃにが気晴らしで狩りに出ているあいだの暇つぶしに、露店営業というのも楽しいかも。
なんてことを考えつつ、色々教えてくれたお兄さんの露店でもいくつか袋物を購入してから、一旦、宿へと帰ることにした。
露店だと町の外のことは聞けなそうだしね。包み焼き屋さんのツテをあたったあとは、地道に屋台や大きなお店の人とかから情報を取ることにしようと思います。
「フェリシア嬢は、この町で何を売るつもりかの?」
「ん~……魔導基盤と魔導チップかな。目的あったほうがスキル上げが捗りそうだし」
「ということは、あと少しでお目当ての異界収納型のマジックバッグを自作できるようになるわけか」
「にぃにたちが狩ってくる獲物が大きすぎて、Cランクじゃ役に立たないんだけどねぇ」
ちなみに、Cランクから作れるようになるのが異界収納型マジックバッグ。
これはオトンの遺品として村から持ち出してきた重量軽減型のマジックバッグとはタイプが違う。
オトンの遺品は、重量軽減型。
こちらは中身の重量を軽減するタイプなので、物を沢山運ぼうと思ったら素体にするバッグ(箱でもいい)は大きなものを用意しないといけない。
ソレに対して、異界収納型マジックバッグはランクによって容量が固定される。
Cランクの異界収納型マジックバッグだと、容量は百ケログラン相当だ。形状を問わず100ケログランまでは入る。
容れ物のサイズに関係なく容量固定なので、小袋とかポシェットサイズのものが多いのも特徴です。
にぃにたちが好んで狩ってくる魔獣はほとんどが百ケログランオーバーだから、Cランクのものを作っても使えないんだけど……
せめてBランク以上のモノを作れるようにならないと、狩った獲物がどんどん【お庭】に溜まってく。
「できる限り早急に、自然な形で買取所に獲物を持ち込めるようにしたいからね。魔道具作成スキルのランクを上げるのは急務なのですっ!」
「グラ坊の【鍛冶場】も、人前で軽々に用いるべきものではないからの……で、建前は置いておくとして、本音は?」
「うぐ……そろそろ暑くなってくるから、夏物の服がほしいな~、なんて思ってたりするわけです」
ヒガシショユ村でミルギューミルクを売ったお金は、ほとんど全部を路銀に回したからね。残しておいたお小遣いも、なんのかんので使ってしまってすっからかんなのです。
いいタイミングなので、ここで不用品を売り払って資金稼ぎをしときたい。
「……服なら路銀から買うてもよさそうなものじゃが」
「ダメ?」
「フェリシア嬢は、人と触れ合う仕事が好きなのであろう?」
……それはあるかも。
ヒガシショユ村でミルクスタンドで、お客さんたちとおしゃべりするのも結構楽しかったし。
「ここまでの道中、祠の手入れで留まる以外はほぼ外に出ていなかったのだし、気晴らしも兼ねて人との交流を楽しむのも良いと思う。グラ坊がごねるようなら、ワシが説得するから安心せい」
にぃにがごねるとしたら、わたしの服を自分が買ってやるとかそういう方向だよね?
なんか、『服が欲しいから露店で稼ぐ』などと主張した翌日あたり、あちこちの古着屋さんに引っ張り回されそうな予感をひしひしと感じます。でも、そういった面倒な話をピニャーシュさんが請け負ってくれるなら一安心だよね。
「ピニャーシュさん、愛してるっ!!」
そんなわたしの精一杯の感謝の言葉は、「フェリシア嬢の愛は安いのぅ」と軽く流されてしまった。
でもその晩、ピニャーシュさんはきっちりとわたしが露店を出す権利をもぎ取ってくれたから気にしない。
ちょっと残念なことに、服選びにはにぃにがくっついてくることになっちゃったんだけどね……トホホのホ。




