情報収集
バッジ王国に入って最初の町では、観光と情報収集をかねて何日か滞在することになった。
なにせ、ピニャーシュさんはこの地を旅したことがあるけれど、それはもう二十年近く前のこと。
それだけの年月が経っていれば、旅の経路が変わっていてもおかしくないそうなので。
わたしとしては正直なところ『そう言うものなの?』ってかんじなんだけど、旅なんて今回が初めてだからね。経験者の言葉には従いますとも。
けっして、高所から見下ろす湖の眺望が気に入ったから――なんてわけじゃないですよ?
「じゃあ、僕とロイは情報収集しに行くね」
「うにゃ」
「フェリシアは、ピニャーシュから絶対に離れちゃダメだからね」
「うにゃ」
心配性のにぃには、別行動をするたびに必ずコレを言う。
わたし、旅に出てからは一人でお出かけなんて言う危険行動はしていませんよ?
にぃには、もうちょっとわたしのことを信頼してくれても良いと思います。
にぃにとロイさんを見送ると、わたしはピニャーシュを見上げてちょっぴり首を傾げた。
「で、ピニャーシュさん。実際のところ、わざわざ情報収集とやらをする必要ってあるの?」
にぃには素直に納得してたけど、個人的な見解としては街道の類が二十年程度でそう大きく変わることはないと思ってる。
そりゃあ、近道的なのができたりとかはあるだろうけど、そういうのは手前の村や町の宿で割と入手できる情報だよね。それも、世間話レベルで十分な範囲じゃないかな?
なので、純粋に不思議です。
「フェリシア嬢は、グラ坊がそういった世間話が得意そうに見えるかの?」
「……納得」
正直なところ、にぃにに世間話はハードルが高いかもしれない。
なんか、身内認定している人以外と接しているときって、妙な威圧感を感じるんだよね。こう……『ああん!? 若いと思って舐めた態度取るんじゃね―ぞオラ!!』的な雰囲気というかなんというか。顔は笑ってるようにみえるのに、目が笑ってないやつ。
ヒガシショユ村に入ったばかりの頃はホントに酷かった。ミルクスタンドはじめてから、少しずつマシにはなったんだけど――にぃにが店に立つと、売上が目に見えて落ちてたしね。
遠くから、にぃにの顔を眺めているお姉さまはいるのに。
そんなわけで、どうやらピニャーシュさんはにぃにに、一般人との会話術的なものを経験させておきたいっぽい。
でなきゃ、情報収集先を『神殿以外で』なんて条件もつけないだろうし。
どうも神子という立場からか、神殿だと案外なワガママが通るみたいなんだよね。なので、条件をつけてなかったら神殿で聞いて終わらせて来ちゃうんじゃないかと思います。
「では、儂らも行くかの」
「うにゃ」
「フェリシア嬢のお手並み拝見、じゃな」
「にゃう!?」
え? もしかして、わたしも情報収集しなきゃですか!?
今のって、にぃに限定の話じゃなかったの?
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というわけで、にぃにだけでなくわたしも情報収集をすることになったんだけど――わたしは今、屋台のおじさんの指導のもと、大絶賛、(自分たちの分の)お昼ごはんの仕込み中。
え?
なんでそんなことになったのかって?
そりゃまあ、アレですよ。
これも、情報収集の一種なのです。




