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長い夢を見た

 はじまりはかかさま(魔神さま)から伝えられたにぃに(・・・)の伝言だったんだと思う。

その伝言をきいてからの記憶はぼんやりとしていてよく覚えていないけれど――なんだか、すごく長い夢を見てた気がする。


 ぼんやりと覚えているのは、【お庭】の中をにぃに(・・・)を探して歩いたこと。


 『帰ってこない』ってことはちゃんと理解しているはずなのに、『何処かにいるはず』と思い込んでてあちこち探した。

そりゃあもう、木のお家なんか保存庫からてっぺんの枝の上まで登ったし、四季エリアも全部回ってフルーツトレントの葉っぱの裏まで。

いるわけないよね、そんなトコに。

でもね、万が一って思って探してたんだよ、タブン。


 ちなみに、木のお家のてっぺんからは当然のごとく降りれなくなってて、ピニャーシュさんが苦労して回収したらしい。

ピニャーシュさん、木登り苦手なのに。


 あと、ゴミ箱を覗いた後に突然シャベルで【お庭】を掘り返そうと鼻水垂らしながら悪戦苦闘しているところを、やっぱりピニャーシュさんに回収したんだって。

きっと、ゴミ箱に捨てたものが【お庭】の肥やしになるって思い出して、にぃに(・・・)が埋まってるかもとかとわけのわかんないことでも考えたんだろうなぁ……

はずい。


 その上、魔獣領域からヒガシショユ村に戻る最中に、『にぃに(・・・)を迎えに行かなくちゃ』と大変うるさく騒いだ記憶もある。

ピニャーシュさん、耳が良いからきつかっただろうなぁ……ごめんなさい。


 ヒガシショユ村に戻ったら戻ったで、借家のなかを舐めるように確認して回った。

トイレも隅まで確認したよ。

ボットン式だから、臭かった。


 そういえば、トリーのお母さんに抱っこされて泣いたような記憶もある。トリーのお母さんに会ったことはないはずなんだけど……コレは夢と現実とどっちだろう。

現実の方だったら、恥ずかしすぎる。

よそのお母さんにナニやってんの、わたし? だよ。


 ミルク販売のお仕事も、わたしが使い物にならなかった。

その間は、ずっとピニャーシュさんがひとりでやってくれていたんだよ。わたしが自由に動ける状態だと、うっかりトイレに落っこちたり、お外に出て行方不明――なんてことになりかねないからと、おんぶしながら売り子をしてたんだって。



 そうそう、こんな話を出来るようになったのは、にぃに(・・・)たちが昨日の夕方になってやっと帰ってきたから。

とりあえず、帰ってきたにぃに(・・・)に一晩へばりついて眠ったおかげでわたしの正気度、ちょっぴり復活です。


 え? 回復加減はちょっぴりですよ。


 まだ、トイレに入る時ににぃに(・・・)の尻尾を握ってないとダメだし、かかさま(魔神さま)からの念話も受信できない状態なので。

なんか、精神的に不安定な状態で神託を送ると、魂が砕ける確率が高くなるんだって。

道理で村が亡くなったころも連絡が来なかったわけです。


「……なんというか、僕のポカで苦労かけてごめんなさい」

「俺もだ。師匠、お嬢。いざという時の舵取りを任されていたのに、役に立たなくて申し訳なかった」


 わたしたち側の状況を話した後は、にぃに(・・・)側の報告に耳を傾ける。


 狩りに出た先で、偶然【邪神の傷跡】を発見したこと。

 【邪神の傷跡】を発見した場合は最寄りの神殿に報告する必要があるから、偵察のために中に入ったこと。

 出現してから間がないのか【邪神の傷跡】内の邪獣は弱いものばっかりで、内部に入り込みすぎてしまったこと。

 邪獣から手に入るアイテムの回収を任せていたせいで、ロイさんが邪神に洗脳されかけていたこと。

 ロイさんが半分洗脳された状態だと気づくのに遅れたことから、予定日に戻ってこれなかったこと。


 全部聞き終えてから思ったのは、『仕方ないのかな』という感想だった。

額を抑えて唸っているピニャーシュさんと悔恨の表情で俯くロイさんの姿から、普通の人は違う評価なんだろうと想像はついたけど、加護者(わたしやにぃに)の価値観からするとそうなる。


 加護者(愛し子や神子も含む)にとって最優先すべきは、神々に尽くすこと。

邪神の排除は、家族や恋人の心情を慮ることより、ずっとずっと優先順位が高いのだ。だって、後回しにすると、神々のみならず大事な人達も危険に晒すハメになる。

なので、まぁ仕方ないな……と思うわけです。


 もっとも、出てきた邪獣の元になった生き物が知っているモノばかりだったから、ウッカリ深入りしたという言葉に納得しやすかったというのもある。

最初の時点で出てきたのが、村のこどもがお小遣い稼ぎに捕まえたり駆除している小さなランチューなら、わたしでもイケるって思っちゃうよ。奥にいたのもウチのでっかいランチュー(や大きめガルゥ)ばかりだったというので、それほど無茶をしたわけじゃなさそうっていうのもある。


「言いたいことはたくさんあるが……。まあ、無事に帰ってきて何より、じゃな……」


 ホント、無事に帰ってきて良かったよ。

納得はしても、精神状態は結構ボロボロ。

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