表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/67

にぃに、狩りに行く ーSIDE にぃにー

 ソレを見つけたのは、本当に偶然だった。


 フェリシアの希望で魔獣領域にやってきた僕は、当然のように妹の手伝いをするつもりでいた。

魔神さまのお導き~なんてもっともらしい(?)理由を口にしたのは、ただ単純に妹の希望を叶えてあげたいと素直に言うのが気恥ずかしくてこじつけただけだし。


「そう、ヘコむなよ。坊っちゃん」

「ヘコんでない」

「そっかぁ? ……ぅおっとっぉおおお!!」


 冬でなくとも人が来ることなどほとんどない、魔獣領域。

魔獣も一部を除いて春まで眠りについているから、積もった雪を踏みしだくものもない。そんな雪深い場所を移動するとなると雪かきをしながら強行するか、雪の中でも軽快に動ける騎獣に乗るしかないわけで――不慣れな騎乗行動に僕もロイも手こずっている。


 騎獣を操るのは僕もフェリシアと再会してから始めたことだから、まだ騎乗具をつけた上で歩かせることしか出来ていない。

 ロイも同じ頃に始めたんだけど僕よりもひどい状態で、フォレチェルが数歩歩く度に「おっとっと」と鞍にしがみついている。

僕自身も、ちょっと油断すると同じことになるから気が抜けない。こんな雪の中、鞍もつけずにフェリシアを背中にくくりつけた状態でフォレチェルを走らせることが出来るピニャーシュは、やっぱり只者じゃないよね。

さすが、僕たちの剣の師匠!



☆★☆★☆★☆★



 気配察知スキルだよりで移動すること、一時間と少し。

やたらと足元がしっかりとした丘の上でガルゥの群れと交戦して、半分を屠ったところで残りは撤退。遠く離れた場所で少しずつ合流した群れが、完全にこの場からスピードを上げて遠ざかっていくのを確認してから息を吐く。


「坊っちゃんも、大分、実践になれてきたんじゃないのか?」


 血抜き針を獲物の傷口に差し込みながら呟かれた兄弟子(ロイ)の言葉に、思わず口元がウニョンと緩む。


「そうかな?」

「うんうん。コレならきっと、師匠も文句ないだろ」


 「そう」と、そっけなく気のないふりして返しつつ、マフラーで口元を隠して顔を逸らす。ニヤついてるのがバレたら、絶対にからかわれる。


「――なんか、またこっちの方に魔獣が来てるかも」

「ええ? こんななんもない丘にか?」


 気配察知の範囲内に新たに侵入してきたのは――動きからすると、フォレチェルっぽい。


「数は、十八」

「多いな。坊っちゃんが弓で減らせばイケるか」

「僕としては、刀術の方を重点的に鍛えたいんだけどね」


 今までは鍛錬するしか出来なかったけど、やっと堂々と刀を振るえるようになったんだ。

せっかく武神さまからのご加護を賜り授かったスキルだし、できる限り磨きをかけたい。


「その割に、最近はナベ作りにご執心だけどなー」

「だって、ソレは、フェリシアが喜ぶからっ」


 楽しげなからかいの言葉を投げつけられ、慌てて言い返す。

最近、確かにナベばっかり作っているけれど、ソレはアレだ。そう、フェリシアが出来上がったナベを受け取るときにフニャッと笑うから!

それに、おニューのナベを使うときにニヨニヨしながら鼻歌を歌う姿が可愛く見えるからいけないんだよ。別に、ナベを作るのにハマってるわけじゃない。


 ロイのなんとも言えない生暖かい視線に気づかないふりをして、刀の代わりに取り出した弓に矢を番え(つがえ)、視界に入り始めたフォレチェルの額に照準を合わせる。


「お見事」


 一射目――命中。二射目――命中。


「……変だね」

「半数が倒れても真っ直ぐこっちに向かってくるのはおかしいな」


 ふつうなら、最初の一頭が矢を受けた時点で逃げ出してもおかしくない。

なのにこの群れは、飛んでくる矢のことなどまるで気にもとめずに、まっすぐこちらを目指している。


「――ロイ、ガルゥの群れも戻ってきてる」

「別の群れじゃないのか?」

「さっき逃げた方向から、逃げたのと同数が来てるんだから、違う群れの可能性は低いよ」

「なら、俺も手を出すか」


 魔獣領域にあった湖を出てからの狩りは、僕に実戦を積ませるためのものだ。

ロイはよっぽど手に負えない数や相手の時にしか手を出さないけれど、今回みたいな場合は別。さすがに僅かな時間差で二種の魔獣を相手取るには、僕の経験が浅すぎる。


「坊っちゃんは、そのまま弓でガルゥの処理。弓の距離を外れたら刀で応戦で」

「了解」


 ロイは土魔法で杭を作り出すと、ソレを足場にしてフォレチェルの方へと駆け出した。

僕も最初にガルゥを狩ったときに送還していた騎獣を呼び直し、その背の上からガルゥの群れへと矢を降らせる。元々数の減っていたガルゥの群れは、この攻撃で更に半減。こちらまでたどり着いた三頭も、苦戦することなく斬り伏せることができた。


 フォレチェルの群れはどうしたのかって?

僕がガルゥの群れを全滅させる前に、ロイがあっという間に制圧し終わってたに決まってる。

 なんせ、僕の兄弟子だ。

魔獣領域の入口付近にいる魔獣なんかに苦戦なんてするわけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ