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雪かき(?)はじめます

「フェリシア嬢は、ずいぶんとごきげんじゃな」

「うにゃ~、分かっちゃう? ピニャーシュさん」


 わたしがごきげんなのは、トリーがお見送りをしてくれたから。

魔獣領域まで行くと話しちゃったから、すごく、すごく心配してくれたのだ。

 そんなふうに心配してくれるような相手なんて、もう居ないからね。

心の底から無事を祈ってくれる、トリーの気持ちがメチャクチャ嬉しい。


「トリーに、なんかいいお土産見つけないとなぁ」

「ああ……。良い友人が出来たようで何よりじゃな」


 わたしがごきげんな理由に納得がいった様子で、ピニャーシュさんが小さく笑う。「んふぅ」とわたしも笑って、お耳をピニャーシュさんの背中に付けた。

 会話からお察しの通り、わたし達はすでにヒガシショユ村を出て魔獣領域に向かって走っている真っ最中だ。


 村を出てからしばらくはにぃに(・・・)とロイさんもフォレチェルでポクポク歩いていたけれど、ある程度距離を取ったところで【お庭】に入ってもらった。ピニャーシュさんとふたりきりのほうが距離を稼げるからね。

 ちなみに【お庭】に入ったふたりは、わたし達が距離を稼ぐ間に騎獣術の訓練に励んでいるはず。

まだまだふたりともフォレチェルを走らせられる領域に達してないそうなので、今回の遠出でなんとかモノにしてもらいたいところ。というか、ロイさんは歩かせるのも微妙なので……メチャ頑張れ?


 え、わたし?

ふつうに乗れるし、走らせるのもなんとか可能だよ。

……ちゃんと、落ちないように縛っておけば?

従魔術があるから指示自体は結構自由にできるんだけど、乗っかる技術はないんですよ。落っこちちゃうのは仕方がないね。そもそも身長が足りないし、手足が短すぎて騎獣術の練習すらままならないのでどうしようもない。今後、背丈が伸びることに期待です。



 スキル上げは、翌日の朝からすると決めてたからね。

初日は目的地についた時点で、そのまま【お庭】の中に入っておやすみなさい。朝はスッキリ飛び起きて、お外でせっせと雪を集める予定です。


「フェリシア、ホントに僕たちの手伝いはいらないの?」

「うにゃ。ピニャーシュさんがいれば魔獣が来ても平気だし、力仕事はミルギューにお願いできるからね」

「大丈夫ならいいんだけど……。やっぱり必要そうなら、いつでも言ってね?」

「うにゃ。そのときはお願いしますっ」


 雪運びを手伝う気満々だったにぃに(・・・)は、こちらを何度も振り返りながら狩りをしに出かけていった。

その隣を歩いているロイさんが揺れていたのは、きっと笑いをこらえきれなかったんじゃないかな。後で八つ当たりされてないといいなと思います。まあ、そういうのもじゃれ合いなのかな?


「フェリシア嬢。用意は出来とるぞ」

「うにゃっ、ピニャーシュさんありがとー!」


 ピニャーシュさんがミルギューに集雪機を取り付けてくれたので、さっそく、雪集めの開始です。


 え、集雪機って何って?

ソリの前面に、大きなチリトリもどきをくっつけたナンチャッテ便利道具ですよ。

つい先程、そのへんに積もった雪を材料にして氷魔法で作りました!

チリトリ部分で雪を集めて、後ろに持ち上がってく雪をソリに乗っけた木箱に放り込む方式なので、シャベルを使わずとも雪が集まる! ……ハズ。

うまくいかなかったら、泣きながら雪玉を大量生産するよ。


「よーし、ミルギュー。頼りにしてるからね~! それでは、雪集め、スタート!」


 【お庭】から出て、良い感じに雪の積もった場所にミルギューを召喚!

ピニャーシュさんとふたりで背中によじ登り、集雪機・ミルギュー一号発進です。


「――ピニャーシュさん、どんなかんじ?」

「うむ、良いペースで溜まっておるな」

「おおー、イイネイイネ!」


 雪の深さはわたしのヒザのちょっと上――だいたい三〇~四〇センテの間くらい。雪の下に隠れている木の根っこなんかに当たらないよう、ちょっぴり高い位置にチリトリの先端を配置しているから変に引っかかることもなくミルギューはのんびりと足を進めている。


「フェリシア嬢、満タンじゃ」

「りょーかいっ。ミルギュー、わたしたちと一緒に夏エリアに送還!」


 特に必要のない文言を唱えて【お庭】に戻ると、指定したのが夏エリアなせいでムワッとした熱気に包まれる。

ほんの一瞬、『あったかい』と思ったものの、当然のように真冬仕様の服を着ているわたしたち。あっという間に『あったかい』が『暑い』に変わったものだから、大急ぎでコートを脱ぎ捨てた。


「これは、直接夏エリアに戻るのは危険じゃな」

「たしかに……」


 夏エリアの気温は、常に三〇度超え。

雪が降るレベルで寒い外と夏エリアを何度も往復していたら、気温差が激しすぎて体調がおかしくなっちゃうよ。

コレは、予定外の事態だね。


 とりあえず今は、雪の山をソリごと落とし穴に落としてから大急ぎで撤退です。

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