遠征のご相談
「明後日はわたしも狩りに連れてってね、にぃに」
「……はい?」
「ありがとー」
トリーが帰宅した後、お夕飯の準備をしながら魔神さまにお伺いを立ててみた。
その結果、そこそこ高ランクの魔素水がたくさんあれば魔石作成スキルはあっという間にランク上げができるっぽい。その方法が一般的じゃないのは、単純に高ランクの魔素水がお高いせいだね。
人里近くで手に入る魔素水は、G~Fランク。
ちょっと、魔石作成スキル上げ用に使うには魔素が薄い。Dランク以上の魔素水を手に入れようと思うと、人里離れた水場まで行く必要がある。――あ、雪や氷も溶かせば魔素水として使えるそうですよ。ちゃんと、かかさまに確認しといた!
ちなみに飲み食いするには、Fランクより魔素が濃いと身体に害があるんだけどね。
なにはともあれ、そんな感じの内容を伝えると、にぃには苦笑しつつも狩りに連れて行くことを了承してくれた。
「わざわざ方法を教えてくださるってことは、魔神さまがそのスキルランクを上げてほしいってことだろうからね」
と言うのが、にぃにの言い分。
「魔石作りは、魔道具の基礎だと聞いたことがある。基礎でつまづいていては、他のスキルに手が伸びぬと判断されたのやもしれぬな」
「なるほど。武術でいうところの体力づくりみたいなもんか。お嬢の場合、魔力はすでにBランクだし、走り込みに時間をかけんなってことだな」
にぃにに続いてピニャーシュさんが語る言葉を、ロイさんが噛み砕いて説明しつつ頷いた。
「たしかに、魔力関連はすくすく育ってるね」
個人的には、コレと同じ速度で背丈も伸びてほしいんだけどさ。
オカンが小型種だったし、わたしもあんまり背は伸びないのかな? 未だに百センテ台ですよ。にぃになんか、オトンに似たのか一七〇センテに近づきつつあるというのに……ぐぬぬぬぬ。
「明日のミルク販売を終えたら出発して、一晩泊まって夕方に戻る……っていう予定でどう?」
「神殿教室、休まんとだけどお嬢は問題ないか?」
「うにゃ。明日、おやすみしますって言ってくるね」
「お休みの連絡は僕も一緒に行くよ」
なにかというと神殿教室に着いて来たがるにぃになので仕方がないなと了承し、三人が日程について話し合うのに耳を傾ける。
どうせ泊りがけで出かけるならミルク販売を一回お休みにして、ちょっと遠く――魔獣領域まで足を伸ばしたいというのが男性陣の希望っぽい。
お休みできるかどうかを彼女さんに確認してくると言って、ピニャーシュさんが出かけていったので、もしかしたら三泊四日のお出かけになるかもしれない。
わたしとしてもそちらのプランのほうがありがたいね。まるっと三日、作業に集中できるのは大きい。
「でも……魔神様って、そんなランク上げの小技みたいなことを教えてくれるの?」
「うにゃ?」
わたしになんの情報もない状態で教えてくれたわけではないですよ?
にぃにの問いに、心の中でだけ答えて首を傾げる。
ちゃんと、教わる前に試行錯誤があったんだけど、説明するのが面倒なのだ。話が長くなるからね。
「そこはホラ、アレだ。坊っちゃんがひたすらクギ打ちさせられたようなもんじゃね?」
「やだ、ロイ。思い出させないでよ……」
「クギ打ち、とは?」
ロイさんの言葉に盛大に顔をしかめる様子から、にぃににとって楽しい話じゃないっぽい。
まあ、でロイさんがかわりに話してくれたんだけど、にぃにに鍛冶スキルはひたすらクギを作りまくってランクを上げたんだとか。とにかく、大神殿長とやらが加護者に力をつけさせたくない人だったから素材が手に入らなかったのがその原因。
ソレと分かりづらいものから素材となる金属を抽出する日々のお陰で、錬金魔法のランクも上がったっぽい。思わぬ副産物というやつだ
。にぃにの、骨や血から金属を抽出するクセはこのときについたものなんだとか。
「……魔獣領域で狩りをしたい理由のひとつって、もしかして――」
「ついでにナベの材料を調達しとこうと思ってるけど、なにか?」
にぃにが作る予定のモノが、ナベになってるこの不思議。
いや、分かってますとも。わたしが大ナベを大量生産させたせいですよね?
そろそろ小銭が貯まってきたので、作り置きしてある料理や下処理だけした野草類を入れる用にツボや樽を買う予定。だから、おナベは余る予定なんだけど……まだ、作っちゃう?
――と、『作る』で思い出した!
「あ、お鍋よりも先に、柄の長いレードルを作ってほしい!」
「長いって……どのくらい?」
「最低でも、大ダルの底につくくらいの長さ」
にぃにはお願いしたものを作るため、ウキウキしながら【鍛冶場】におこもり。飲みに行くというロイさんに鍵を預けて、わたしはひとり、【お庭】にもどった。
にぃにもいないし、今日はかかさまの添い寝だよ!
やっほーい!!




