魔石を作ろう 上
さてさて!
今日は神殿教室だけでなくお店もお休みなので、まるっと一日フリータイム。
にぃにたちが魔獣領域へと狩りに出かけているあいだに、トリーを招待してふたり揃って魔石士の修行に勤しむ予定です。
創世四神の皆さまとのお食事会のあと、わたしとにぃに、それぞれの目標を決めたんだけど……。
『今』の希望と『将来」の希望が一致しなかったときのために、出来ることは増やしておく方針にしたのです。
にぃにはある程度できることが多いんだけど、わたしの場合は『癒食』と『従魔術』のふたつだけだからね。
せっかく魔石士見習いのトリーとお友達になったので、一緒に魔石関係のお勉強をしてみるよ。
「でも、フェリシア。ホントにいいの?」
「うにゃ?」
「ほら、加護の儀前にスキルを増やしすぎると、神々に見初めてもらいづらくなるって……」
『神々に見初められる』というのは、加護者になれるかどうかってお話をちょっぴりロマンチックに表現した言い方だ。ただ、一般的にそう言われているだけで、神々レベルでは「え、なにそれ?」って雰囲気なんだけどね。
うがった見方をするなら、家業を継いでほしい大人の都合をきれいに表現してみました。というのが本当のところなんじゃないかと疑っているわたしです。
「実はわたし、国元を出るときに前倒しで加護の儀終わらせちゃった」
「あら、じゃあ……」
「魔神さまのご加護を授かったから、自分の趣味に合うスキルを探そうと思ってるんだ」
ちなみに、わたしが魔神さまのご加護を授かっていることは、特に内緒にしないことにした。
わたしが割とポロポロと両親が加護者だったことを喋っちゃうからね。にぃにも神子だし、むしろ血筋的にご加護がない方が不自然なので。
両親も兄も加護者としての見初められているのにわたしだけ違うとなると、血筋と人格を疑われることになる。それなら、かかさまの神子だという部分だけ伏せて、ご加護(巫女ランク)と誤認させる方向で……ってことにはなっている。
魔神さまの巫女は神子と違って複数いるし、他の神々の巫女も含めたら有象無象に紛れられるからね。
「ずいぶんと大物に見初められたじゃない。でも、そういうことなら納得だわ」
「あんまり言いふらすことじゃないから黙ってたけど、内緒ではないよ」
「ズルいって騒ぎそうなのがいるから黙っとくわよ」
そういうことを言いそうなのは、夏の半ばまで待たなきゃいけないジョスだね。
他のふたりは、冬の終わりまで待つだけなので焦ってない。
「トリーは来月だっけ」
「もう、二週間もないわ。本格的に父さんの下で働くことが決定する可能性が高いから、もっと後でもいいくらいよ」
「ご加護を授かったらそうでもないのでは?」
「うちは加護者の家系でもないし、可能性は低いわね。万が一があったとしても、町の神殿に一年くらい行儀見習いを兼ねた奉公に行ったら戻って来るんだもの。あんまり将来に変化はないわ」
モリエロ王国は加護者に恵まれているようで、必要以上に拘束されることはないみたいだ。
ブラン王国の加護者事情は知らないけれど、にぃにたち高位神の加護者に子作りを強要してたくらいだもの。きっと、加護者の人数にも恵まれていなかったのだろう。
「まあ、なにはともあれフェリシアがスキルを増やすことに問題がないなら構わないわ。ちゃちゃっとはじめちゃいましょう」
「そんでもって、ちゃっちゃと魔力を使い切ったら、お菓子を食べながらダラダラしよう」
「ホント、それ。魔力を使ってダルいところに雑用をしなくていいって、最高よねっ!」
当然ながら、魔力量には個人差がある。
わたしは現在Bランクで、マナラップなら二六〇個のものに掛けることができるくらいの魔力量だ。魔獣領域に滞在中、確保した食材にマナラップをかけまくったり従魔に魔力のお裾分けをしているうちにこうなった。
そんでもって、あまり認識されていないそうなんだけど、魔力の回復速度にも個人差がある。
加護の儀を行った時点での保有魔力によって変わるものだから、Dランクだったわたしの場合は【五分間で一割】程度は回復する。加護の儀前の場合は最低ランクの【一時間で一割】だ。
回復補助系のスキルを身に着けていれば、もうちょい早くなったりもするんだけど……まあ、今回はあまり考えなくても良い要素だね。
とりあえず、今日、トリーはウチにいる間はわたしに手順を見せてくれさえすれば、自由時間を満喫できるというわけ。わたしも、トリーに実演してもらうことで、見たこともない作業を頭に刻み込まれたイメージだけで再現するより難度が格段に下がるのだからwin-winなんだよね。
つまり、互いにとっても嬉しい状況になるというわけですよ。




