森羅神さまの忠告
ちょっぴり森羅神さまににらまれてしまったものの、食事会自体は概ね和やかなものだった。
食い専宣言していた森羅神さまも、作る方はびみょ……ゲフゲホ……でも、味覚自体はわる……ゲフゲホ……ご用意させてもらった料理にはご満足いただけたようで、ほっと一安心だったりなかったり。
いや、わたしの心の中でのひとり言にツッコミが入らなければ平和なんだけどね。
というか、突っ込まれるようなことを考えなければ平和なんだよね。それがなかなか難しいんだけど……
「ちびにゃーは、ちょっと思考にも猫を被る用にしたほうがいいと思うわ」
またやっちゃったっ!!
森羅神さまからの苦言に、反射的にピャッとなる。
「「森羅神、言い方。もうちょっと柔らかくしないと意図が通じないよ」」
何度目かのソレに、魔神さまと武神さまの二柱から同時にたしなめる言葉が飛び出した。
「そんなこと言っても、ちびにゃーが過剰反応してるのって、魔神ちゃんの紹介のせいもあるわよね?」
「うっ!」
「まぁ、否定できないね……」
口をとがらせ、チクッと魔神さまを刺す言葉に、武神さまが苦笑する。
「アレはちょっとしたジョークみたいな?」
「ちびにゃーは、真面目に受け取ったみたいよ」
慌ててごまかし笑いを浮かべる魔神様に、森羅神さまはジト目を向けた。
なんか、おふたりともすごく仲がいいみたい。
「というか、年齢的にも対人経験そのものが少ないんだから、森羅ちゃんの言葉の裏が読めないのはふつうっしょ。はい、ある程度経験のあるナベ職人、通訳!」
「え、僕!?」
「そ、おにーちゃんから説明してもらったほうがいいっしょ」
「ええっと、森羅神さまはフェリシアの内心が顔に出るのを心配してるんじゃないかな……たぶん」
理神さまに名指しにされ、ちょっぴりキョドりながらにぃにが答える。
わたし、そんなに顔に出るのかな? 顔を揉みつつ、魔神さまに視線を向けた。
「表情豊かなところがフェリシアちゃんの魅力だと思うんだけど……」
「まだ九歳だかんね。これからでしょ」
「そうは言うけど、魔神ちゃんのとこの眷属神もこの聖域には来るでしょ。出来ないことに劣等感を感じてこじらせてるのも居るから、そういうのに目をつけられたら大変よ。少しずつでもいいから取り繕う方法を身に着けさせとくにこしたことは無いんだから」
なんか、森羅神さまが私のことを心配してくれてると言うのはホントのことらしい。
「ちなみに、あたしの場合。自分にできないことは人にやらせる方針だから、出来ないことを気に病んだりなんかしないわよ。むしろ、これ以上にできることを増やしても抱えきれないもの」
……なるほど。森羅神さまの言うことには説得力がある。
創世四神の皆様が司る権能の種類は多岐にわたる。というか、それぞれの下に所属する眷属神の権能をすべてまとめたものすべてなので、少ないわけがないんだよね。
そんでもって、出来ないことを他人に任せるというのは良い手だと思う。
「あと、ちびにゃー」
「うにゃっ」
「魔神ちゃんの加護は幅が広すぎて、何もなせずに生涯を終えることが多いわ。『やれる』と『やりたい』は違うものだということを念頭に置いて、早めにやりたいことを見つけて、ソレに専念するようになさい」
「……はい」
今まで深く考えていなかったけれど、魔神さまの権能は幅広い。
魔法っていうジャンルだけ切り取っても、大きく分けて十二の属性が存在するくらいだ。魔道具だって、魔石・呪符・生活用品・戦闘道具etcetc……これも案外種類が多い。
わたしが、授かった加護の中で今できることといえば『癒食』と『従魔術』だけど――やりたいことなのかっていうと、ちょっぴり違う気はする。
ミルギューやランチューは可愛いし、フルーツトレントたちが育てばいつでも美味しい果物が食べれるようになって、とっても素敵だと思う。
ただ、専業農家がやりたいのかっていうと、ソレはちょっと違うんだよね。
自分が食べれる分だけで十分だ。
「なるほど……」
『やれる』と『やりたい』は違うもの。
考え始めてみると、なかなか深い。
「ちなみに、神殿入りすると見聞を広めて『やりたい』を探すようなことはできなくなるわ」
「えっ!?」
「だって神殿って根本的に、人の子がこの世界で健やかに過ごせる環境を維持するための場所だもの」
だから、神殿で神子として立つまでのあいだに方針を決めたほうがいい。
そう言って微笑む森羅神さまに、魔神さまは困ったように笑って小さく同意した。




