思ったよりも大繁盛
神殿子ども教室でお昼ごはんを食べた後、貸店舗に戻ってみると兎人のおねーさんが訪ねてきていた。どうやら、村人への周知も終え、用意した簡易的な看板をもってきてくれたらしい。
まあ、わたしたちが帰ってきたときには、ピニャーシュさんとそこはかとなくイチャついてたんだけど……
なんとなく、ちょっと怖いのでにぃにのことは見ないフリ。いや、いいじゃん。本人たちが合意の上で楽しむ分にはさ。ピニャーシュさんが恋多き男というやつだったのは、かなり意外だけど。
ちなみに、ロイさんはおねーさんが着た時点で、『ヤボ用』でお出かけしたっぽい。
「おかえりなさい、フェリシアちゃん。神殿教室はどうだった?」
「ただいま、おねーさん。すっごく楽しかった! 美味しいご飯も食べれて、すっごく幸せ!」
「そう、それなら良かった」
軽く雑談したあとは、すぐに本題――ミルギューミルクの販売の話に移った。
ミルギューミルクの販売は本腰を入れなくても良く、営業日は一日おき。営業時間もお昼すぎから夕方頃まででオッケーらしい。窓口対応だし、わたしがひとりでお留守番している場合でも営業できるね。
「ついでにランチューの卵も販売しようと思っているんですけど、お値段はいくらが適当ですか?」
「ランチューの卵もうれしいわね。値段は……ひとつで銅貨一枚かしら」
「それじゃ、ミルクが銅貨二枚で卵は銅貨一枚で。了解です」
ミルギューミルクは一日に一頭から二四~九六本、ランチューの卵は一~十個採れる。
ミルギューは三頭、ランチューが四頭いるし、ここまで来る道中で保管した分もあるから――まあ、しばらくは在庫の心配はいらないね。そもそもが雪がちらつく中、買いに来る人が多いとも思えないもの。
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翌日の午後。
受付窓口を開けると、すでに八人のお姉さま方がソコに居た。
「……いらっしゃいませ?」
「な~んで疑問形なんだい、フェリシアちゃん」
ケラケラ笑いながら片手をパタパタとさせるのは、神殿教室の炊き出しをしているお姉さま。
「まさか、すでに人がいると思わなかったからビックリしちゃって」
「雪が降る中隣村まで買いにはいけないけど、村の中ならそうでもないからね」
あっはっはと豪快に笑って、お姉さまはミルクを二つと卵を五つ買ってった。この一瞬で、銅貨九枚。なんかビックリです。
最初の八人のお姉さま方のあともポツリポツリとお客様が訪れて、夕方になる頃には卵は売り切れ。ミルクも一〇〇個以上売り上げた。
さすがに毎回これだけの売上があるとは思わないけれど、コレは嬉しい。山になった銅貨に、ほんのりと喜びを感じるね。
「思ってたよりすごい人だったね……」
「うにゃ」
「僕、全然役に立たなかった……」
期待以上の売上にニヨニヨしているわたしの後ろで、ドヨドヨションボリさんになっているにぃには、買い物行列の整理を買って出てくれたんだけど……お姉さま方にモミクチャにされて逃げ帰ってきた。オカン世代とはいえ、お姉さま方も女性は女性だからね。こう、トラウマ的な何かが顔を出したんですよ、きっと。
大神殿に居たあいだのムニャモニャを知らなかったら『だらしない』『カッコ悪い』などと思ったかもしれないけど、ある程度は聞いてるからね……。
にぃにはかなり頑張ったほうだと思います。
そんなに落ち込まないでいいんですよ?
「にぃには無理して外に出なくていいんだよ。明後日はそういうのをロイさんかピニャーシュさんにまかせてさ、窓口対応お願いします」
「はい……。精一杯、励ましていただきます……」
というか、明後日は今日ほど来ないと思うので、にぃにの出番はないかもしれない。コレ以上へこませるのもなんなので言わないけど。
「余ったミルクはチーズにしちゃわないとね」
「そろそろ食べ頃のが出来上がる頃だっけ? こっちはちゃんと手伝うよ」
「うにゃ。お願いします」
にぃに、作り始めてからずっと出来上がりを楽しみにしてるもんねぇ。
わたし? もちろん楽しみにしていますとも!
そもそも、嫌いな食べ物を作ったりなんかしませんし。




