他人の料理も食べたいんですよ
子どもたちにとって、神殿子ども教室のメインは昼食らしい。
お勉強の時間が終わり、ボランティアの人たちが熱々のスープの入った大ナベを持ってくると、一斉に歓声をあげて立ち上がる。
大きめの木の椀によそわれたスープは具沢山で、ソレだけでもお腹が一杯になりそうだ。ここに追加で大人の握りこぶしほどの大きさの丸パンまでつくんだから、喜ぶよね。ふつうに。
「グラジオラスさまとフェリシアちゃんも一緒にどうぞ」
巫女さまに促され、にぃにと一緒に最後尾へ。にぃには、九歳チームの空いてる席で食べることになった。空いてる席――まあ、わたしのお隣さんだね。
「創世を司る創世四神、魔神・森羅神・武神・理神と、この地を護る土地神モリエロへの感謝と祈りを捧げましょう」
巫女さまの祈りの言葉に続いてみんなで「創世四神と土地神モリエロへの感謝と祈りを捧げます」と唱和すると子どもたちは一斉に食事に取り掛かる。とうぜん、わたしもいただきますともっ!
「~っ! おいしいぃ!!」
「え、そんなに?」
わたしにとって、実に久しぶりの他人飯!!
なんのかんので、ハズレ村を出てから一月以上経ってるからね。ハズレ村をでる一週間前には自炊していたことを考えると、一月半ぶりに食べる自分以外が作ったゴハンにはちょっと感動してしまう。
「……フェリシアのご飯のほうが美味しいと思うけどなぁ」
にぃにはわたしの感想に困惑している様子だけど、アレですよ。毎日毎食ぜーんぶ自分が作ったものを食べるのって、案外飽きるのだ。基本、自分で作ったものは大体の味が想像つくからね。たまには他人の作ったゴハンを食べて、感覚をリフレッシュしたいのです。
「ねぇ、フェリシアって、料理できるの?」
「うん。村の癒食士から教わって、一通りはできるようになってるってお墨付きももらったよ」
ちなみに、ここでいうお墨付きはランクF以上の力量を身に着けてるだろうっていう評価をもらったって意味だ。加護の儀の前にそのランク相応のことができていれば、そのスキルを仕事にすることも視野に入れられるってことだね。去年――八歳の時点でわたしは、癒食のスキルはFランク以上――癒食士として働けるねって判定されてるのです。えっへん。
「えー! まだ加護の儀を受けてないのにすごいね」
アルドに言われて、ムフフと胸を張る。
褒められるのって、気分がいいね。
でも、ゴメン。ちょっとズルしてすでに【加護の儀】は終わってる。
「生まれつきの適正に合ったスキルなら、経験を積むことによって使えるようになるからね。フェリシアが努力した証だよ。君たちも、すでに何かしらのスキルは習得しているだろうね」
にぃにはちょっと、兄バカが入ってると思います。優しく満足気に微笑むもんだから、なんかトリーの目がハートになってる。甘めのマスクのイケメンだから、仕方ないのか?
「僕はこれといって思い当たらないなぁ……」
とは、巫女さまの息子のジョス。
たしかに親が神職についてる場合、意識してなにかを習ってないとスキル習得は難しいかも。
「……うーん、育樹のコツは掴めてきたような掴めてないような……」
ヌンツィオさんの弟のレオルドは農家っぽいスキルに心当たりあり、と。才能がそこそこなのか、お手伝いに熱心じゃなくて微妙な習得具合なのか。判断が難しいところだね。
アルドもレオルドと同じ雰囲気っぽい。
ちなみに育樹スキルは、従魔術の下位スキル魔樹術の亜種(?)で、品種改良された魔植物を育成・管理するモノ。魔樹士とちがってたくさんの魔樹を管理できる代わりに、品種改良はできないし待機させる用のスキルフィールドも存在しない。
土地があってこそ活かせる、農家さん必須スキルだね。
「あたしは……魔石加工ね。父さんはまだまだだっていうけど、だいぶ上手く魔石化作業はできるようになってきてるのよ」
なんとトリーは、魔石屋さんの娘だったらしい。
なんか、魔石作るのはあまり好きじゃ無さそげだけど。
「魔石士、いいじゃん」
「悪いとは言わないわよ。でも、毎日毎日おんなじ作業ばっかりでいやんなっちゃう」
「あー、分かるかも。癒食士も似た感じだよ。辺境だと料理の魔素量を調整しなきゃだから、毎食、癒食スキル持ちが作るでしょ。自分好みの味付けができるのはいいんだけど、他の人の作った美味しいご飯もたまに食べたくなるの。トリーも、たまには魔石化作業だけじゃなく、合成とか変形とかの作業もやりたいよね」
「そう、それなのよ! 見習いだからって、魔石化作業しかやらせてくれないのって、意地悪がすぎると思うのっ」
ランチタイムは、トリーとふたりでものすごく盛り上がった。
わたしたちの話を聞いてたにぃには、何やら思うところがあったようでその日の夜から武神さまにお料理教室をお願いしたらしい。




