生国のウワサ
魔獣領域で手に入れた魔石をサクッと換金して、お店をぐるっとひと回り。
魔石の買取価格は一〇個で銅貨八枚だった。コレ、自分が買う場合にはひとつで銅貨一枚なんだよ。減ってしまう二割分は税金らしい。魔石屋さんでは買い取っただけだと儲けられないけど、魔石を加工すると魔道具を作るために必要な部品になるんだって。この部品を売ると儲かるんだね、きっと。
ところでヒガシショユ村は人口が五〇〇人を超えてるからか、思っていたよりお店が多い。
古着屋さんがあったのが、個人的にはすごく嬉しい。女の子っぽい服ってないんだよね、わたし。
魔道具屋さんでは呪符やスキル指南書なんてものも売っていて、わたしは『魔石作成指南書』を買ってもらった。
お値段、なんと銅貨一枚!
きっと、魔石を自作するよりも魔道具の部品を作る方に労力を割きたいんだろうな。他の指南書と違って内容も魔石を作る方法だけなんだもの。
でも、いいのだ。魔石をたくさん作れたら、可愛い服を買えるかもしれない。
「魔石作成って、たくさん魔力が必要なのよ? 大丈夫?」
「魔力量なら自信あり、です」
実は魔獣領域で食料集めをしているうちに、魔力がCランクにアップした。
どの能力値においてもCランクは、大人に混じっても誇って良いランクになる。
能力値ってふつうはでF~Eランクだけど、低い場合はH~Gランクなんてこともある。Dランクより上になると、神々の寵愛を賜らないと至れないと言われている。
わたしの場合、かかさまのご寵愛があってのこのランクってことだね。
「フェリシアちゃんって、加護の儀はまだよね?」
『あれ?』ってお顔で、おねーさん。長いお耳が肩っぽだけヒョコッと動くのがちょっぴり可愛い。あ、言い忘れてたけど、おねーさんはピニャーシュさんと同じ兎人さん。ウェストベルトの下からチラッと覗く、短くて平たい尻尾がチャーミングです。
「国元を離れるときに、兄が万が一のために――って、半年ほど前倒しで加護の儀は受けたんです」
本来の年齢より幼く見られるのは知ってるからね。
ちゃんと、自分の年令を主張しつつできる説明を考えてありますとも。ただ、にぃにが前倒しで加護の儀を執り行うことにしたのは、『こいつ、すでに交神してんじゃね?』って思ったかららしいってのは黙っておく。
「ってことは、フェリシアちゃんは九歳か。たしかに、万が一はぐれたりしたら微妙な立場になるわね」
「孤児院に入れてもすぐに出なきゃだし」
「そもそも、入れない可能性が高いわね」
「ですよねー」
なんとなく、そうなんじゃないかなとは思っていたけど、やっぱり孤児院に入れなかったかもかぁ……。ホント、にぃにたちと合流できて良かった。
「なんか、お隣さんも神子さまが出奔したとかで大変みたいだものねぇ……。この村にも、隣国から神官さまが逃げ込んできて大騒ぎになったのよ」
「っ!! ソ、ソウナンダ?」
「フェリシアちゃんのお兄さんもそうでしょう?」
同意を求められて目が泳ぐ。
え、こういう場合はどうしたら?
助けを求めてピニャーシュさんを見ると、彼は大きくため息を吐いた。
「すんなりと滞在が認められた理由は、それか……」
「ええ。加護者が望まないのなら神殿勤めを強要もしないし、そう名乗ることもしなくていいわ。だから、安心して春まで滞在してちょうだい」
そっとピニャーシュさんの腕に触れて言うおねーさん。
なんか、そのまま見つめ合って、大人の雰囲気が漂い始める。
あれ、ここにわたし、いちゃっていいのかな?
ちょっと、場違い感が半端ないですよ??
「隣国の噂はどこまで?」
「神子さまが出奔して、神殿長とその一派が流刑に処されたそうよ」
おねーさん、プンスコ顔も可愛いですね。
「ほう……、流刑か」
ピニャーシュさんは、大人の魅力的なのを発揮しようとしてる?
「それで、大神殿に所属していた加護者さま方の一部が神子さまの後を追って出奔したんですって」
「それは大騒ぎじゃろうなぁ」
「加護者さまの自由意志を尊重することは神々の御心ですもの。身分を盾に無理を強いたという神殿長の自業自得です」
なんか、いつの間にやらおねーさんの腰にピニャーシュさんの手が回ってるよ!?
あっという間にイチャイチャし始めたふたりに連れられて軽く村の中を歩いたあと、わたしだけが貸店舗に帰宅した。
ピニャーシュさん?
おねーさんと一緒に、どっかに出かけていったよ。どこに行ったかなんて、興味はありませんっ!




