貸店舗
わたし達に貸し出される店舗付き物件は、村の西門近くの外周部にある。
小神殿のある中央広場へと抜ける大通りに面した場所で、冬でなければ人通りが良さそうな場所にある。
「他の季節だったら取り合いになる場所だけど、冬は外から来る人なんてほとんどいないからねー」
それは、わたし達のことですね。
悪意があっての言葉じゃないのも分かるんだけど、ソレはソレとして、なんとなく面白くない気分で唇がツンとしてしまう。
そりゃあね、雪が降るよりも早いうちから冬支度をするのが普通なのは知ってるよ。だから、ここまでの道中、せっせと食料集めてきたんだもの。お魚獲るのが楽しくなって、ついつい長居もしちゃったけどさ。その後は、狩りのコツらしきものを掴み始めたにぃにがフィーバーしちゃって、旅程が進まなかったのだ。
……そっか。お魚のときもフィーバーしてたの、わたしだけじゃなかったね。にぃにもだよ。ってことは、回り回ってにぃにが悪い。よし、そういうことで一件落着。
「こっちが入口ね。合鍵は村長のとこに一本と、あなたたちに預けるコレしかないから失くさないでね。鍵をかけ忘れて泥棒に入られた場合は自己責任よ」
荷物に関しては、にぃにと愉快な仲間たちは鍛冶場に、わたしの分は【お庭】に全部まとめてある。
泥棒さんが入っても、なんにもなくてがっかりするのが関の山だ。
とはいえ、お出かけするときには鍵閉めは忘れないようにしよう。
借りてる人がいるのに、なんにも物がないのは怪しすぎる。むしろ、補充がきくものは適当に放りだしとくほうがいいかも?
と――ソレは置いといて。
貸店舗の間取りは、広い従魔用のスペースと、受付窓口付きの小部屋。
それから、二段ベッドが一代だけだけある寝室とおトイレがひとつづつ。受付窓口のある部屋には寝椅子が一台と、ふたり用のテーブルセットが置かれている。前回使ってから放置されていたのかちょっぴり埃っぽいけど、軽く掃除をしたら問題なく使えそう。
「ベッド、ひとり分足りないから、小部屋の方に二段ベッドを入れようか? それとも、寝椅子を追加する方が良い?」
おねーさんが気を使って提案してくれたけど、少し考えてからにぃにといっしょに寝るからと理由をつけてお断りさせてもらうことにした。
ホントは、【お庭】のおうちでネンコする気満々ですよ。にぃに、一緒に寝たりはしないからね? 嬉しそうな顔しないっ!
「兄妹で仲がいいのねぇ」なんておねーさんが言うもんだから、にぃにってば、デレッデレですよ。
にぃにとの仲、悪くはないけど、ふつう……だよね? 最近、にぃにのデレがひどい気がするけど。ふつう。ふつうの範囲であるはずだ。
「それじゃあ、お兄さんたちが寝床を確保する間に、女同士で買い出しにいきましょうか」
「はいっ」
やった、お買い物!
この村にふつうにお店があるって聞いてから、ずっと行ってみたくてソワソワしていたのだ。お姉さんのお誘いは渡りに船というやつですよ。めちゃくちゃ嬉しい!!
「えっ!?」
そんな『ショックです』なんて顔しても、連れて行ったりしませんよ? にぃに。
『女同士で』って、おねーさんも言ったじゃないですか。お買い物に行くのは、おねーさんとわたしの二人に決まってる。
「ミルギューちゃんがいれば、荷物持ちはいらないものね」
「というわけで、頑張ってね。おにいちゃん」
よその人がいるので、お姉さん言葉でニッコリ笑う。
ちゃんと、よそ行き言葉も使えるんですよ?
ちなみに、頼み事をされると断れないにぃには、『頑張ってね』のひとことでゲームオーバーだ。ちょっぴり涙目でわたしを見てる。
ごめんね、にぃに。
このところスキンシップが激しすぎるから、完全に自由になれる時間がほしいんですよ。隙さえあればギュウしたり抱き上げたりするのは、ホント、ウザ……面倒な気分になるので勘弁してください。
「えっと、それじゃあピニャーシュ。僕とロイで掃除するから、換金してきて」
「承知」
そういや、お金がなかったね。
ピニャーシュさんだったら過剰接触はないし、余分なことは言わないから問題ないね。




