そうだ、にぃにのとこに行こう!
ところで、まずは隣の村までひたすら歩く必要があるんだけど――この道が結構クセモノだった。
なにせ以前から、隣村まで行き来する頻度はさほど多くない。そのせいもあって、道といっても獣道に毛が生えた程度なのだ。
イコール、細くてデコボコ。
とってもとても歩きづらくって、わたし、すでに挫けそう。
「わたしってば、なんで荷物を乳母車に載せようなんて考えたかなぁ……」
なんでかなんて、分かりきっている。
オトンのマジックバッグにたくさん入るからと調子に乗って、荷物を増やしすぎたのだ。そんでもって、パンパンに詰め込んだマジックバッグは、わたしには大きすぎて、背負って歩くのは無理だった。
肩ひもがね、長すぎたんだよ。
色々と試してみたんだけど、どうやっても引きずっちゃうの。
わたし、チビだから仕方ないよね。
まだ、9歳だし!
なんにせよ、せっかく準備した荷物が運べないのはとっても困る。
そこで持ち出してきたのが、ベビちゃん用の乳母車。
複数のベビちゃんが詰め込める大型のものと、お一人様用の小型のものがあったので、大きい方にマジックバッグを詰めこんだ。大は小を兼ねるってやつだ。
というか、お一人様用のだとマジックバッグが乗らなかっただけなんだけどね。
最初のうち――村から出てしばらくは、「わたしってば、あったまいぃ~♪」などと思っていたんだよ。
でもそれも、村から離れるにつれて悪くなっていく道に手こずるようになるまでのこと。
「うにゃぁ……。また、葉っぱが絡んでる」
しばらく人の行き来がなかった道は、困ったことに雑草が丈高く茂り始めていて、やたらと車輪に絡みつく。
中途飯場に日当たりが良すぎるのだ。
だいたい雪の季節が近いというのに、こんなにも雑草が育っているなんて一体全体どういうこと?
草なら草らしく、秋の終わりには地面の中に引っ込んでいてほしい。
あと、木の根っこがあちこちの地面を盛り上げているから乳母車を押すのが地味に大変。
そうでなくとも、隣村までの道のりは緩やかに上ったり下がったりしていて、思っていた以上に体力を消耗するというのに……
「そういえば、大神殿に行けばにぃにがいるのでは?」
悪路に手こずりつつ、やっぱり大人の手がほしいと思ったときに、ふと、五年前に村を出ていったにぃにのことを思い出す。まだ四歳の頃の話だったからすっかり忘れてたけど、そういやいたよ。わたしより年嵩の兄妹が!
えーっと、確か名前は……ラース? いやいや、これは愛称だっけ?
「あ、そうそう。グラジオラス」
加護の儀のすぐあとにいなくなったはずだから、今は十五歳になってるはず。頼る先がないからこの年齢でも入れる孤児院を探すしかないかと思ってたんだけど、肉親がいるなら話は別だ。
「そっか、にぃにのとこに行こう!」
明確な目的地ができたことで、ちょっぴり気持ちが上向いた。
とりあえず、目指す先は王都にある大神殿!!
それなりに遠いことは知っているけど、頑張って歩いていくよ。
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結局、乳母車の扱いに苦戦しまくっているうちに周りが暗くなり始めてしまった。
「乳母車持ち出したの、失敗だったなぁ……」
このままだと移動するのはもちろんのこと、休める場所を探すのも難しくなってしまう。今日中にお隣村にたどり着くのはあきらめて、今夜の寝床を探すことにした。
完全に真っ暗になってしまったら、身を隠す場所を見つけることもできなくなっちゃうからね。
「野宿しなくちゃってことは、身を隠せる場所をさがさなきゃ、だよね」
野宿する場所を探そうと、わたしは森の中へと目を向けた。




