お魚とりすぎ注意報
それから二日間はピニャーシュさんとフォレチェルで移動するのに費やす。
魔素結界のことを教わってからは、わたしは移動中に安心して居眠りできるようになった。わたしが寝ている間に移動距離が伸びたので、こっそりとスピードアップしてたんじゃないかな?
そのおかげで湖の端にたどり着くタイミングが早くなったからにぃにとロイさんは大喜びだ。
もちろん、その移動中にも狩りや食材採取はしたし、【お庭】に黒麦と茶麦の種も撒いた。植物の生育を促す魔法を使っているから、【お庭】に緑が増えてきたのが嬉しい限り。
すでに草丈はわたしのくるぶしよりも長く伸びていて、スネの半ばに届こうという状態だ。隠れる場所が増えて、ランチュウたちも嬉しそうにしている。
ただ困ったのは、隠れる場所が増えたせいで卵を探すのが難しくなっこと。
すぐに決まった場所に産み落としてもらうように頼んだから、前よりも回収が楽になったので結果オーライだね。
飼育術じゃなくて、従魔術だからできることなので、こんなところでもやっぱりかかさまの愛し子で良かったよね。飼育術は低位の魔獣の気性を穏やかにすることができるけど、指示はできないのだ。牧場とか畜産業をするなら無いと厳しいスキルなんだけど……
「フェリシア、見てみて! おっきいの入ってたっ!!」
湖の端についてからは東に向かうのを中止して、南の方へと向かっている。生国からは離れる方向なので、にぃにとロイさんも一緒。四人でのんびり徒歩の旅というやつだ。
体力のないわたしは、疲れてくるとフォレチェルの背中でだらけてみたり、ロイさんが背負うオトンのリュックに潜って眠っている。
進める距離は大したことがないけれど、そのかわりとばかりに食料調達はとってもはかどる今日このごろ。
今も、にぃにたちが前の日の夕方に湖に仕掛けていたカゴを引き上げて歓声を上げている。
「おおお、今日も大量っ」
この湖、人里離れた場所にあるおかげもあるのか魚がたくさん棲んでいるらしい。大きいものから小さいものまで、毎日たくさんのお魚が獲れるものだから、ついつい長居してしまう。
だって、お魚さんが美味しすぎるのが良くないのだ。一年分は確保したいよね。次に魚を手に入れられる機会がいつ来ることやら想像もつかないんだから。
なにはともあれ、朝イチで獲れた魚を食べれるものとそうでないものに分ける。食べられないお魚は、にぃにがなにかに使うっぽいので捨てたりしない。食べられる分はサクサク〆て【お庭】の食料庫にマナラップをしてから保存です。
「お嬢、魚エリアがもう溢れたぞー」
「にゃんと!?」
食料庫に運び込む役を頑張ってくれていたロイさんの報告に、言葉を失う。今日の分、まだたくさん残ってるんですよ!?
「もうちょい、入んない?」
「ムリムリ。すげーぎゅうぎゅうに詰め込んだから」
「むむむむむむむ……他のエリアに入れるのは……」
「いや、漁を今日でおしまいにして、はみ出た分から食っていくしか無いだろう?」
「えええええ……」
異議ありと言いたいけれど、言えないこのもどかしさよ……
なにせ、食料庫のお魚エリアは結構広い。かかさまいわく、ロイさんが大食いなのを加味した上で三食お魚三昧にしても、二年間は保つ量が収納できるらしいのだ。ぶっちゃけ、獲りすぎ。
「ならば、今日からは東に向かうとしようかの」
森歩き指南役のピニャーシュさんにまでそう言われたら、もう諦めるしかなさそうだ。にぃにとわたしは泣く泣く漁を諦めた。
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獲りすぎたお魚たちは、木のおうちの調理場付属のパントリーからもはみ出していた。
「たしかに、もう十分すぎるかも」
「うにゃ……」
獲りすぎの証拠を突きつけられても、それでもまだお魚獲りをしたかったと思ってしまうあたり、わたしはかなり重症かもしれない。やだな、お魚ジャンキーなんて。
「とりあえず、今日のお昼は兜焼きにしよう。下処理するから、一時間ください」
「じゃあ、その間に別のことしておくよ」
そして、にぃには【お庭】でどんぐりの面倒を見に行った。木の実も、最初に干し始めたやつはそろそろ殻を割っても良い頃合いだ。明日から、お暇な人に殻割りをお願いさせてもらおうっと。
木の実の殻って、上手に割ると保存容器や食器の代わりになるから便利なんだよね。




