マルコのご報告
お休み明けに商品ラインナップが大幅に増えることが決定した翌日、開店五日目です!
ヒャッハー!
お昼のシフトが嫌いなフェリシアです。
むしろ、お店番はアサイチが好き。どっちも、作業を中断しないで済むのがその理由です。中断と終了は、ちょっと気分が違うのですよ。
「えっ!? ボク、マジックバッグ作っていいんですか!?」
「うにゃ。ただ、作るのはDランクね」
「それでも嬉しいですっ」
ダニーロは、尻尾を高速回転させながら笑み崩れる。
狐人特有のシュッとした容姿のダニーロは、人懐こくて甘えん坊。今の表情は、見た目とのギャップに、ちょっとキュンと来た。
「フェリシアさま、オレは!?」
「パオロには、Dランクの魔導基盤を百個お願いしたいな。ヒマな時でいいからね」
「はい!」
パオロはパオロで、テンション上がってシッポの先がクルクルしてる。
こっちは、こっちで可愛いね。キュンとはしない。ギャップはない、順当な可愛さだ。
「ただ、ダニーロ。一日に作っていいのは一個だけだよ」
というか、ダニーロのスキルランク的にも、丸一日集中して作ったとしても三個が限界です。
テイクアウトコーナーの売り子もしている関係上、今はまだ、一日に一個作れれば上出来なんだよね。
「? たくさん作らなくていいんですか?」
スキル上げのために、いつも一度にたくさん出来るものばかり作っているからね。
ダニーロはきょとんとしている。
「なんか、それ以上はダメみたい」
ダニーロの時間的な限界もそうなんだけど、それだけでなく、クリスさんにクギを刺されたんだよ。
Dランクでも、量産できるor在庫があると思われると、高ランクの魔道具師がいることがバレるので危険だって。実のところ、Dランクだってだけでも微妙なラインらしく――ここまでの道中、Cランクのマジックバッグをばらまいてきた身としては、ちょっと冷汗が止まりません。
きっと、売りさばいてきたピニャーシュさんに、強者のオーラ的な?
なんか、そういうのをたくさん持ってても納得させる的なうさん臭さみたいなのがあったんだと思います。
たぶん、そう。
「「よく分かりませんけど、分かりました!」」
ふふ、実はね。
説明しているわたし自身も、何がダメなのかよく分かってないんだよ。ちゃんと分かるように説明できなくて、ゴメンね。とりあえず、なんかヤバいっぽい。
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午前中は、ササっと日課を終わらせてから二時間ほど、マルコと一緒に肉を串に刺す作業に集中した。
昨日、爆売れすぎて、マルコが毎日せっせと刺してた分が無くなりそうだったんだよ。
売れ行きが良かったのは嬉しいんだけど、わたし、頑張り過ぎた。
「それにしても、売れましたねぇ」
「ホントに。売れすぎてビックリする以上にドン引き」
栗鼠オバちゃんの脇から買っていく、おっちゃんたちの必死さが怖すぎた。
いや……栗鼠オバちゃん、すごい食べるんだもの。分かるよ。自分たちが買う分が無くなると思うよね。
「一人で五十本は食べた猛者がいるんだよ」
「さすがに、それだけ食べると飽きるでしょう……」
「途中で、『タレ無し』って言われた」
そんでもって、なんか自前の調味料を振りかけて食べてた。
「……その人、昼に来たらさばききれる自信がありません」
「大丈夫、昼間は修練場に籠ってるそうだから」
昨日だけでも、他のメンバーじゃ捌ききれないと思ったので聞いておいたよ。
栗鼠オバちゃんの、本日のご予定。『お惣菜を取り扱うか相談する』と話したので、絶対、夕方になったら結果を聞きに来るはずです。
「ちょっとホッとしました」
マルコが気が抜けたように笑みを浮かべるのがおかしくて、思わず笑ってしまった。
栗鼠オバちゃん、マルコの想像よりは怖い人じゃないと思うよ?
ただ、ちょっとだけ食欲的な圧が強いだけ。
とはいえ、栗鼠オバちゃん以外にも要望が多かったんだよね。
栗鼠オバちゃんの尻馬に乗る形だったけれど、その人たちも結構な量の肉串を買っていってくれた。あの様子なら商売として成立しそうだと思ったからこそ、クリスさんに取り扱いを打診する気になったんですよ。
「そういえば、フェリシアさま。ダニーロがちょっと気になることを言っていたんですが――」
「うにゃ?」
「店番をしているときに、なんか、チビたちが物欲しそうにこっちを見てるらしくて……。そいつらが、オレたちみたいな境遇なんじゃないかって気になってるみたいなんです」
「ああ……なるほど」
こう、その子たちも保護してほしそうって方向だね?
「マルコの意見は?」
「以前の――故郷に居たころなら、何も考えずに仲間に入れていたと思います」
マルコ、面倒見がいいもんね。
「ですが、今はフェリシアさまとグラジオラスさまのお世話になる身の上です。個人の一時的な感情で行動を起こすことはできません」
「……マルコって、もしかしなくても良い家の出身だよね」
「どうしたんですか、急に?」
「言動と言うか、考え方が庶民っぽくない」
実のところ、前から思ってたんだよ?
マルコとパオロは、割ときれいな言葉を使うな――って。ダニーロも言葉遣いがきれいな方だけど、なんかパオロの影響を感じる。……っと、そういう話じゃなかったね。
「ごめん、話をもどそっか。ダニーロが孤児っぽい子たちを気にしてるって話だったよね」
「あ、はい」
「で、マルコはその孤児たちに対して、自分が勝手に何らかのアクションを起こすのは良くないと思ってる――ってことでいいかな?」
「はい。オレが判断を下していい問題じゃありません」
こういう判断が、庶民っぽくないんだよ。
マルコは分かってないみたいだけど。
「――で、ダニーロにもそう伝えたんだよね」
「伝えています。おそらく、近いうちにフェリシアさまへも同じことを話すと思いますので、ご報告いたしました」
「了解。にぃにと相談しておくよ」
「よろしくお願いします」
とりあえず、マルコの出自についてはすでに来ても意味がないだろうし放置しよう。
今は、ダニーロに相談された場合にどう動くかをにぃにに相談しなくちゃね。
ダニーロは自分で動く前に年長者に相談するクセがあるようなので、次にアクションが分かりやすいのがありがたい。次に相談されるのはたぶんカルロで、その次がわたしかな。
「今からにぃにに相談しに行くから、カルロは適当なところで切り上げちゃってね」
「はい。売り子の仕事もあるので、早めに切り上げちゃいます」
というわけで、今からにぃにに『突撃! 相談部屋!!』をブチかましに行きますよ~!




