三日目
一日も早く、独り立ちできるようになろうという決意を固めなおしたフェリシアです。
こんにちは。
いやね。
にぃにがいるなら急がなくてもいいよねって気分になってたんだけど、昨日の晩話していて気付いたんですよ。『にぃにに恋人ができたら、わたし、お役御免なのでは?』って。
こう……にぃにから、何気に庇護欲が強いと言うかなんというか、溺愛系? かつ、独占欲が強いというか……そんな感じの雰囲気を感じまして。
わたしは妹だからね。
いつかはにぃににお相手ができちゃうわけですよ。
恋は突然降って来るものとも聞きますし、そうなった時にお荷物がいたらお邪魔だよね~と。そうはいっても、年齢ばっかりは急に重ねることができないんだよね。なんとももどかしい次第です。
「……その悩みは、たぶん必要のないことだと思いますよ?」
「でも、心構えは必要かな~と……」
気構えは大事だよね。
「あ、リリーさん。分かってると思うけど、他の人には内緒だよ」
「心得ておりますとも」
したり顔で頷くリリーさんにひとつ頷き、焼き魚を一口かじる。
やっぱり、小さめのお魚は串に刺してお塩をパラっと振って焼くのが一番だと思います。香ばしくパリッと焼けた皮と、しつこ過ぎない脂のハーモニーよ。至福です。
「それで、具体的に何をなさるご予定で?」
「……残念ながら、にぃにに恋人ができた時に動揺しないように気構えする以上の策が思いつきません」
「まあ、そうですよねぇ」
「賢さが欲しい」
ほんと、切実に。
ちなみに今は、お昼を食べるのにはちょっと早い時間帯。
わたしとリリーさんは今日のシフトがお昼からなので、ちょっと早めのお食事タイムです。二人だけというのは、結構珍しいね。
「とりあえずは、現状維持ということですね」
「そうなるねぇ」
良策を思いつけない、ふがいない妹でゴメンねにぃに。
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さてさて、お昼に店に出るのは初めてです。
リリーさんと二人、エプロンを付けてテイクアウト部屋に向かうと、途中でサラと出くわした。
「サラ、おつかれさま~」
「フェリシアさま」
「今はクリスさんだけ?」
「はい。先に休憩に入るように言われました」
「うにゃうにゃ。すぐに交代するから、ゆっくり食べてね」
お礼を言うサラと別れて足を速める。
「抱っこしましょうか?」
「そっちの方が早いのは分かってるけど、なんかヤダ」
「残念」
事あるごとに抱っこしたがるリリーさんに断りを入れつつ、雑貨エリアに踏み込んだ。
「ん~、お前さんだと、こっちの方が良さそうだなぁ」
「でも、こっちの方がカッコいいじゃないすか」
「武器は見た目より、使い勝手と頑丈さだぞ? 使いづらけりゃミスにつながるし、武器が壊れりゃ戦えねー。どっちみち、待ってんのは死だな」
なんて話を、ロイさんがわたしとあまり年の変わらなそうな男の子相手にしているところだった。
『欲しがってるのを適当に売っちゃえばいいのに』なんてことをチラッと考えたけど、それで死んだら後味が悪いね。キチンと、使い勝手が良いのを選んであげてください。
こういうのは、分かる人に任せるに限ります。
わたし、武具のことはまるきり分からないので。
雑貨売り場(ほぼ武具売り場)を通り抜け、クリスさんと交代。
リリーと二人で、お客さんに備えます。
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炙られて溶けた脂が落ちて、ジリジリジュワワと香ばしい香りを通りに振りまく。
それに加えて、テイクアウト部屋に広がるコトコトと煮込まれたスープの優しい匂いのおかげで、なんだかとっても幸せ気分です。
「おう、嬢ちゃん。その旨そうな串焼きひとつ」
「は~い♪ 一本銅貨二枚だよ~」
「こっちもふたつ」
「はいは~い♪ 銅貨四枚ね~」
やっぱりお肉を焼く匂いが胃袋に響くのか、串焼きの注文が多い。
お昼時なせいもあってか、さっきからひっきりなしにお客さんが来るので一息入れるヒマもありません。
「ねえちゃん、スープの具、多めで頼まぁ」
「じゃあ、ウチの愛情をたっぷりで♡」
「たっはぁ~! その返しにはかなわんなぁ~」
リリーさんはリリーさんで、次から次へとスープのオーダーが入るので大忙しです。
今日の日替わり、具沢山スープが大人気で「具をもっと!」と言う声が多いみたい。やっぱり、具が多い方が腹持ちしそうに見えるからかな?
ポタージュスープも、案外腹持ちがいいんだけど……やっぱり、ゴロゴロと固形物が入っている方が良さげに見えるのかも。明日はチンギアーレのミショスープにしよう。お肉もたくさん入るから、人気がでそうです。
ちなみに、今日の売り上げは二千三百七十二ラーメと、初日に迫る金額でみんなびっくり。
テイクアウトの飲食物がすごくたくさん売れたのがその理由で、テイクアウト担当のメンバーでハイタッチをしながらワーキャーはしゃいでしまったのでした。




