初日の結果
思っていた通り、初日は大変だった。
「ソコの道行く、イケてるおに~さ~ん!」
わたしがテイクアウト部屋で配置について最初にやったのは、客寄せ。
道行く人に声を描け、ちょっとでも興味を引くことです。
最初に声を掛けることにしたのは、ひときわ目を惹く大柄なクマおじさん(お兄さんだった)。
ちょっと厳つい見てくれだけど、同行者が明らかに若い。だって、どうみても連れているのは食べ盛りの男の子ばかりなんだもの。
「今日は、開店記念でホットミルクとスープを大盤振る舞い! なんと、無料でご馳走しちゃう!! スープはゴロゴロと具がたくさん入ったミネストローネと甘くて優しい味わいのポタージュが選べちゃう。ちょっとだけ足を止めて、食べてかない?」
ひとりだけ年長者の彼に声をかけると、連れの少年たちが『今日だけ無料』のスープに目を輝かせた。
「ウーゴさん……」
「具がゴロゴロ……」
期待に満ちた目で見上げられたら、もう『ダメ』とは言えないよね。
クマおじさんは片手で目を覆って天を仰ぐと、「仕方ねぇなぁ」と呟いた。
「んで?」
「ハニたっぷりのホットミルクと、ミネストローネとポタージュ、どれにする?」
三人でレードルを構えて訊ねると、クマおじさんは即座に「ホットミルクだ」と、期待を裏切らないご選択。
やっぱり、熊人はハニが入っているモノを選ぶよね。知っていましたとも。
「「「ミネストローネ!」」」
まあ、連れの少年たち(全員熊人)は、見事に期待を裏切ってくれたんだけど。
お腹にたまりそうな具沢山メニューだからね、ある意味、育ち盛りとしては普通の選択肢なのかも。でも、その息の合ったご注文に、ポタージュをよそう気満々で待機していたダニーロはショックを受けた顔で固まった。
うん。
ショックだよね。ひとりだけ仕事がないの。
「いや、ソコはちょっと空気を読んで、ひとりくらいはポタージュにしてさしあげろ。狐っ子がションボリしちまってるだろうが」
「あ、じゃあポタージュに変更で」
とはいえ、クマおじさんの連れの少年がひとり、ポタージュに変更してくれたのでダニーロの笑顔はすぐに戻った。
「んで、ただで配る目的は?」
「試飲のついでに、中の商品をチラ見してくれたら嬉しい……かな。押し売りはしないよ~」
コレは、ホント。
一番の目的は、味を知ってもらうことなんですよ。お手頃価格で美味しかったら、次はお金を落としてくれるでしょう?
ニコニコしていると、クマおじさんはため息をついてホットミルクに口を付けた。
「うんまっ!?」
そうでしょう、そうでしょう。
ウチのミルギューは、良い乳嚢を落とすからね。ハニブーンたちの作るハニと合わせると、もう最高なんですよ。
チラッとスープ組の三人を見ると、すでに空になった器を見つめて呆然としている。あっという間になくなっていてビックリしてる、的な?
そこまで美味しく食べてもらえたなら、作った方としては満足満足。
「お替り、いる?」
「「「「いるっ!!」」」」
はい、お替り入りました~!
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クマおじさんたちを皮切りに、スープの試食に列ができた。
お店の方にも多少は人が流れたので、そこそこ売れたっぽい。
「今日の売り上げ、すごいですね……」
売上金を数えていたクリスさんが、ほぅっと大きく息を吐く。
「すごいっていくら?」
「一日の売上金は二千九百十八ラーメです」
「あと少しで、ひと月分の家賃だね」
「ええ。さすがに明日以降もこの金額という訳にはいかないでしょうが……」
にぃにとの会話に、わたしは思わずニヨニヨしてしまう。
かかさまから教えてもらった『損して得取れ』作戦、大成功ですよ!!
そう、今日の『飲み物の無料配布』はかかさまからの入れ知恵です。
特に食品系は、一度、少量でも口に入れてみないと買う踏ん切りがつかない可能性があるらしい。そんでもって、美味しかったら次は買う率が高くなる。
それなら試してみない理由がない。
試した結果が大成功なので、文句なしだよね。
ちなみに売れたのは、武具が合計八本に保存食が十三セット。
それから呪符が十枚と マテリアル化の魔道具(ストラップ型)が六個だったらしい。
金額に関しては、魔道具が六個も売れたのが大きいみたいだけど、ほかの物だけでも六百五十ラーメだったそうなので、初日の売り上げとしては十分だと思う。
願わくば、明日以降は軽食系と呪符がもっと売れてほしいところです。
このふたつはウチのお店では、利益率トップツーなので!
どちらも、原価がほぼゼロなんですよ。




