不穏な気配
前日と同じ時間になると、また国神さまが【お庭】に訪れた。
「今日、神子君たちが修練場に来てたみたいだから、テコ入れ案を思いついたかなと思って……」
「まだザックリとした希望をまとめただけですが、実現可能であるか確認が必要でしたのでお越しいただいたこと、誠に嬉しく存じます」
膝をついて深く頭を下げ、ご来訪の喜びを口にすると、頭の上から焦った声が降って来る。
「いや、やめて、神子ちゃんっ!? 普通に! 普通に近所のお姉さんが遊びに来たくらいのテンションで接してくれていいから、ね!?」
普通にしろと言われたので立ち上がると、国神さまは涙目になっていた。
「……神力回復の一助になればと思ったんだけど」
「神力の前に、存在削除されちゃうっ」
存在削除は困るね。
誰がやるのかは聞かないけれど、そうならないように考えてるところなんだから、別件でサクッとやっちゃうのは勘弁してください。
「なんだか不敬が過ぎる気がするんだけど――」
「大丈夫、ボクは気にしないから!」
ということなので、リリーさん相手くらいの態度で接することにした。
本人の希望だし、問題ないよね?
☆★☆★☆★☆★☆★☆
国神さまを東屋にご案内して、お茶をしながら変更希望リストに目を通してもらう。
【加護の儀】やかかさまたちとのお茶会にも使う東屋は、暗くなると勝手に明かりが点くし、いつも快適な気温で過ごしやすいので重宝します。
そうそう、今回、にぃには同席していない。
とても楽しみにしていた修練場が、あんまりな代物だったので、国神さまと顔を合わせたら暴言を吐きそうだっていうのが理由です。あんまり過剰な期待を寄せられても、国神さまも困ると思うんだけど……まあ、狩りスキーにはションボリが過ぎたんだろうね。きっと。
「愛し子くん以外は、現状に満足できない……と」
「武神系の加護があったり武術スキルランクがある程度高い人は、似たような感想なんだと思います」
「そこは、まあ理解できる。設定的にEランクになったら卒業って設定で作っているからね」
「なるほど。にぃにみたいなのは、お呼びじゃない訳ですね」
にぃにとマルコの意見の相似から、なんとなくそんな気はしてました。
「言い方……」
「基本的に初心者向けの施設なのかな~とは思ってたので、|そこからはみ出している人《Cランクの武術スキル持ち》は対象外なんですよね」
「まあ、そういうことなんだけど」
「ただ、利用する層としてはそっちの方が厚そうだと思います」
「ソレも、そう」
やっぱり国神さまも、その部分は分かってるんだね。
ということは、高ランク帯の人を対象に加えたくない理由は『専門外』かつ『修練場で満足されるのが不都合』だから、かなぁ。
修練場がある場所を考えると、国神さまは理神の系譜っぽい。
なにせ、修練場は西にある秋の季節門内にあるんだから。秋の季節門は、理神さまの管轄なので間違いないはずです。
理神さまの眷属神(見習い)の国神さまにとって、武術スキルを鍛えるような行為は本来ならば『専門外』。
それなのに修練場なんて施設を作っているのは、ちょっと不自然なんだよね。なんとなく、不穏なモノを感じるね。
「とりあえず、現状では強い魔獣を出すのは無理」
「理由をお伺いしても?」
「いいよ。修練場で使っている灰チューは、王都内で駆除した害獣を回収して作り出している。更に、灰チューを倒すと落ちる魔石も、灰チューの加工品」
「まさかと思いますが、国神さまのお手製ですか?」
頷くところを見るとそうらしい。
ちなみに、お役所の環境管理局で駆除したものが定期的に持ち込まれるそう。
「貧民街で駆除された害獣を持ち込んでもらえるならGはイケると思うけど――Fランク以上になると、戦闘スキルが無いとキツイから、入手は厳しいかな」
「狩人組合に持ち込まれた魔獣を解体した後に出る廃棄物で対応することは?」
「うーん……一考の余地はあるけど、難しいかも。解体前の魔獣は重いからね。持ち込む場合は内臓だけ抜いたり、軽くてお金になる部分だけだったりすることが多いんだよ」
なんか、すいません。
ウチの環境が特殊過ぎて、想像もできなかったよ。なにせ、にぃには獲物を全部【鍜治場】に入れて持って帰ってきちゃうから……
そうだね。
にぃにとわたしの場合、出入り可能なスキルフィールドなんていうズルっこスキルがある。そのせいで想定外なんてことになるだけで、普通は丸ごとの獲物を持ち込まないんだね。
「まあ、打診はしてみようかな」
もしも今の案が使えそうなら、Fランクの魔獣までは用意できるらしい。
やったね! にぃにとマルコの希望に多少は近づけそうだよ。




