マルコの感想
最後にマルコを呼んで、感想を聞いた。
「手応えがない、というのが最初の印象でした」
にぃにと似たようなことを言ってるね。
マルコの現在の技量は、【刀術C】【体術D】。
【加護の儀】のあと、刀術は一ランク上がり、体術は最初の状態をキープしているという状態です。
その上で【器用C】と一ランク上昇、【筋力D】と【敏捷E】には変化がありません。
とはいえ、数か月前に【加護の儀】を受けたことを考えれば、なかなか高い身体能力です。
にぃにもマルコも武神系のご加護を授かっているので、戦闘系のスキルや能力値が伸びやすいんだけど――そもそも武神系の加護者は、国神さまの想定している利用者の能力を飛び越えてるのかもしれない。
「なのでしばらく、何も考えずに適当に刀を振るっていましたが、自分の立ち回り方を試すのには良いのではないかと思いついたので――そのあとは、色々と試すことができて有意義な時間を過ごせました」
「うんうん」と頷いていたにぃにが、続いた感想に「あれ?」って表情で首をかしげる。
やっぱり、人によって試すことが違うってことかな?
それとも、にぃにの方が狩りに慣れてて、マルコのような試行錯誤をする必要がなかったのかもしれない。
「ただ――実戦で役に立つかどうかは、正直分かりません。的外れなことを試してたかもしれないので」
「無駄になることはないと思うよ」
「そう、かな? グラ兄」
「うん。僕よりよっぽど、しっかり修練してると思う」
なんか、にぃにのお耳がションボリしてる。
「それで、マルコとしては改善してほしい部分はあった?」
「あ、はい。やっぱり、出現する魔獣が弱すぎると思います。可能なら、魔獣の強弱を選べたらいいんじゃないでしょうか」
なるほど。
「全体のレベルを上げるんじゃなく、利用者の能力に応じて変更するってことだね」
「はい。選べないと、授かったスキルのランクが低かった場合に怪我をする人が出ると思います」
「ほかには?」
『魔獣ランクの選択肢』と、リストに記して続きを促す。
「出てくる魔獣が灰チューだけだったので、他の種類も出てくれたら嬉しいです。飽きるので」
「やっぱり、飽きるよね。なんで灰チューだけなんだろう?」
「なんででしょう?」
『魔獣の種類を追加』と書き足し、みんなで一緒に首をかしげる。
「正直、一種類の魔獣しか出ないとなると、ただの作業になってきてしまうので……利用者が減るのは当然だと感じます」
「国神さまがお見えになったら、その時に聞いてみるね。ここで考えたって分からないし」
ということで、灰チューの謎は一旦おしまい。
「あとは――複数の魔獣との戦闘もしてみたいと思いました」
「にぃにも言ってたけど、やっぱり複数を相手にすると違うもの?」
「違います。弱い魔獣でも、たくさんいると対処しきれません。修練場だと、まずいと思ったら安全に撤退できるので、自分の限界を知るのに丁度いいと思ったんです」
知らなかった。
修練場って、途中で出られるんだね。安全仕様でビックリです。
さては国神さまって、超過保護なタイプだね。かかさまと気が合いそう。
「あとは、環境の選択肢もあると訓練が充実すると思います」
「あ、にぃにも言ってたヤツだ。書くの忘れてた」
せっかく聞いたのに、書き忘れるとは何たる不覚っ!
慌てて『環境の追加』と書き足した。
「環境の選択肢と言っても、色々種類があるでしょう。どんなのを想定してるのかも聞いていい?」
「王都周辺の地形でいいと思います」
「そのココロは?」
マルコが修練場に飽きたら、王都周辺で活動をするだろうからというのがその理由。
「オレは、とりあえず日銭が稼げるのが確定している場所を拠点に、稼ぎを増やすことを考えます」
「堅実」
「だって、弟たちを養おうと思ったら、冒険なんてできないでしょう」
「圧倒的な兄力」
マルコ、良いお兄ちゃん過ぎでは?
そういえば奴隷船でも、マルコがわたしに接触してきたのは弟たちのためだったね。
「たしかに現実的かも」
誰だって命は惜しいはずだし、修練場よりも稼げるならほかの場所に行くだろう。
その最初の一歩が、拠点の近くになるのは割と自然な話だよね。王都周辺なら平原もあるし、小さめの森もある。修練場で草むらに隠れた魔獣を見つける練習や、森歩きの経験を積めるのは良さげな気がする。
「マルコの希望は、『魔獣ランクの選択肢』『魔獣の種類を追加』『環境追加 王都草原』『環境追加 王都森』で問題ないかな?」
「はい、ありません」
「じゃあ、最後に質問」
「はい」
「マルコは、修練場が今のままだったら、何回くらい通える?」
この質問に、彼はすごく動揺した表情をみせた。
「……正直な話、三回目はキツイと思います」
「そんなにかぁ……」
「僕も同感」
狩りに熱心なふたりがこう言うってことは、修練場の現状って、かなりナンでアレなんだろうなぁ……




