距離の詰め方
お昼ごはんを食べ終わると、後片付けをにぃにとロイさんにお願いして外に出る。
「ランチュウを探すかの?」
食事中にほしいと言ってたからか、ピニャーシュさんがそう尋ねてきた。
「うにゃにゃ。休憩の時、野草を摘みながら探せばいいよ」
「では、そうするとしよう」
フォレチェルの足は長くて、身のこなしはとても軽やか。人の足では遠回りしないといけない悪路も、スイスイ進んで行けてしまう。これはイコール、行きたい方向に最短距離で進めるということ――その背中がひどく揺れることを我慢できれば、なんだけど……
「すまんの」
「うにゃにゃ……最短距離でってお願いしたの、わたしだし」
午後からは、なる早で移動するため、ピニャーシュさんに道にこだわらず進むことをお願いした。その結果、道なき道を進むことになったので、上下左右に揺れまくりあっという間に騎乗酔いをしてしまったのだ。
そうでなくても、ピニャーシュさんが一人で乗るなら必要ないから騎乗具を使っていない。だから直にフォレチェルにまたがることになるわけで。騎乗技術のないわたしはピニャーシュさんにしがみつくしかない。
進行方向に背中を向けてしがみついていたら、もうダメダメ。
そんなわけで、ただ今、地面を満喫中。
揺れない世界って、素晴らしい。
「今ならまだ、進路変更が間に合うんじゃが……」
「うにゃにゃ。背中おんぶならイケるかも」
「……固定用のツタを探してこよう」
「お世話おかけします」
しおらしく頭を下げつつ、そっとため息を吐く。
ホントはね、騎乗酔いを必死にガマンしてまで急ぐ必要はない……と思う。
でもね、めんどくさいんですよ。
できることなら村や町に行ってみたいのに、そんなことをして【お庭】にもどったとき、にぃにに何を言われるかなーと考えるのが。大神殿に居たときに外出できなかったってピニャーシュさんからは聞いたけど、ソレってぶっちゃけわたしには関係ないことじゃない。
自分ができなかったことを人にも強要するって、正直どーよって思うしさ。
ピニャーシュさんもロイさんも、わたしに向かって口に出したりはしないけど、でもにぃに寄りの考え方をしてるのは見て取れる。
長い間いっしょにいたんだから、当然だよね。
分かるよ、分かる。仕方がない。
そのことに関して文句を言ったりしないよ。……数の不利もあることだし。
となると、わたしが不平不満をドカンとぶちまけてしまう前に、にぃにが一日も早く逃げ隠れしないですむ環境に移動するしかないワケだ。多少の無理をするのは仕方ない。
食事時に聞いた感じだと、大神殿にわたしが授かった魔神さまからご加護を知られたらまずそうだし。たぶんだけど、ターゲットがにぃにからわたしに変更されそうだよね。
聞いた感じ、わたしもご遠慮願いたい環境っぽいから、にぃにが追われてるかどうかを別にしても、人里を避けて行動したほうが良さげでもある。
にしても、にぃにが何考えてんのか良く分かんないんだよね。
なんせ、まともに話したのは加護の儀を行ってくれた昨日の晩だけ。
食事時におしゃべりしているのはほとんどわたしとロイさんで、たまーにピニャーシュさんが注釈を入れてくれる程度。にぃには無言で食べつつ頷いたり首を傾げたりするだけなのだ。
それでいて、モノ言いたげな雰囲気はあるんだよね。
言い出すのを待ってみても喋らないんだけど。
いやいや、アプローチの仕方が間違ってるかも?
話題が思いつかないからって、大神殿のことを聞いてたのが原因かもしれない。代わりに答えてくれたロイさんの表情からすると、にぃににとって思い出したくないたぐいのことがあったっぽいし。
かといって、今日、森であったことを報告するのも違うよね。
いっしょに移動したいって言い張ってたにぃにを置いて出かけといて、『それって自慢?』みたいな反応されても困ってしまう。
これから、それなりに長い期間――とりあえず、成人する五年半後くらい――はお世話になろうと思っているから、そこそこ仲良くなっておきたいんだけど……
「フェリシア嬢、気分はどうかの」
「うにゃ。だいぶ良くなったよ」
わたしを背中に括る用のツタを調達してきてくれたピニャーシュさんに答えて立ち上がる。
「ふむ……まだ顔色が悪い。少し歩いてみるのはどうじゃ」
心配そうに提案されて、素直に頷く。
ロイさんやピニャーシュさんとはそれなりにやれてる気がするのになぁ……?
肝心のにぃにとの距離の詰め方が全然思いつかないよ。




