土地神さまとご対面
その後、縁石の神々が何を司っているのかにぃにに説明してもらっているうちに、あっという間に火が陰る時間になってしまった。
大神殿を堪能するのはまたの機会ということにして、あわてて供物の奉納をしつつお祈りを捧げて貸店舗に戻る。
「急いでご飯作らなきゃ」
「今日は何を作るんですか?」
「ん~……焼き魚・蒸し野菜・ミショスープでどうだろ?」
ちょっと手抜きだけど、時間がないからね。
今日のところはこんなもので我慢していただきたい。
「十分、豪華です」
しみじみと呟くマルコにとっての、『豪華』な食事のハードルが低すぎる。
まあ、毎日手の込んだものを作ってるわけじゃないんだけど、普通の食事レベルの認識を変更していただきたい所存です。どうやらマルコたちにとっての普通の食事は残飯ミックスみたいなので、「ウチでは出ませんよ、ソレ」っていつも思うんだよね。そういうのが普通だと言われると、町に住んでいるお金のない子のご飯事情に涙が出そうな気分になるんだよ。
いや、残飯ミックスがデフォルトかどうかは知らないんだけど。
でも、まぁ……
毎日、ご飯の度に嬉しそうに食べた物の感想を言い合ってる姿を見ているからね。そのうち、残飯ミックスのことなんか思い出さなくなると思います。
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夜になり、食事とお風呂を終えたみんなは、それぞれの時間を過ごすために貸店舗に戻っていった。
いくら家族でも、やっぱりプライベートな時間は欲しいからかな。旅の間に、いつのまにか出来上がった習慣です。
大抵はロイさんはリリーさんとイチャイチャタイムで、マルコ・ダニーロ・パオロ・ルカは四人でまったり過ごす。カルロは寝る時間の直前までパルミラちゃんと仲良くしているし、クリスさんはサラが気になっているっぽい。ピニャーシュさんに至っては、相変わらずひとりで夜遊びに出かけているご様子です。
わたしはというと、大抵はにぃにとふたりきりのまったりタイム。
他のメンバーがいないからね。その間に、たっぷりと甘え倒す構えです。
にぃにも嫌がらないので、きっと問題ない。
そんなまったりタイムに、国神さまのご来訪があった。
国神さま―土地神さまと呼ばれることもある―には初お目見え。なのだけど、神威――神さま的な気配が薄めで、ちょっと拍子抜けです。
どうやら、【お庭】にご来訪なさられている下級神さまよりも、普通の人に近いみたい。
あ、リニャーリの国神さまはボクっ子だったよ。
見た目は狐人で、ちょっと可愛い系だね。
後になってかかさまに聞いてみたら、国神は人の枠は外れたものの、神に成るには至らない【亜神】と呼んだ方が良い存在なんだって。
国神として祀られ、担当している地域を良く守護するうちに少しずつ神威が強化されていくものだそうです。今はまだ修行中だから神威が薄いのかと納得した次第。
ちなみに土地神さまがわざわざ訪ねていらしたのは、わたしたちに頼みごとがあったから。
というのも――
「【土地神の試練】のテコ入れを手伝って欲しい、ですか」
「うん、そうなんだ。正直、維持するのも厳しいんだよ」
なんでも二十年位前から、急に利用者が減ってしまったらしい。
今では|貧民街の戦闘技術が未熟な《いろんな意味で弱い》人や、|冬場のお小遣い稼ぎが目的で通ってくる《お祈りしない》人しか利用していないんだとか。
「維持に神力が必要なのに、赤字続きでね。あと数年もすれば人堕ちしちゃう」
「ソレは……大ごとでは?」
人堕ちというのが想像してる通りのモノなら、土地神さまがいなくなっちゃうってことだよね?
もしかして、神威が低いのって、神力不足のせい?
「修練場がショボいって言って、ボクにお祈りしてくれる子が減ってるからさ……マジヤバい」
どうやら、かなりなピンチっぽい。
「それは――やはり、この地に暮らす民人にとっては一大事ですね」
「だよねぇ」
だって、土地神さまが居なくなってしまったら、魔獣領域と変わらない環境になっちゃうはずですよ?
ものすごく大変なことになっていると思います。
「分かりました。お引き受けいたします」
「やった! 神子君、頼むよー!!」
「ただ、テコ入れと言っても何をしたらいいものやら……」
そりゃあそうだよ、にぃに。
現状がどうなってるのか分からないのに、テコ入れの方法なんて思いつかないでしょう。
「とりあえず、毎日お供えするところから始めよっか」
「あ、ソレは地味に助かるぅ」
という訳で、今日のところは作り置きしてある乳製品と加工肉。
野菜や果物と乳酒を供えしつつ、お祈りを捧げさせていただきました。
明日からは、毎食ごとにお祈りと奉納するメンバーに仲間入りしてもらえば、多少は神力も回復するはずです。
タブン。
焼け石に水かもしれないけれど、ないよりいいよね。




