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参拝

 さて、いよいよお楽しみの大神殿ですよ!

モリエロ王国では王都に立ち寄らず、バッジ王国ではいざ入ろうとした瞬間にUターン。そして、ソルベル王国でもデンディゴルでまったりしすぎたため、王都は素通りしたため大神殿に立ち寄ることはできなかった。


 やっと、やっとですよ。

やっと、ゆっくりと大神殿を堪能できる!!


「旅に出てほぼ一年経った今、とうとう来ました、大神殿!!」

「フェリシアさま、スゲー興奮してる」

「大興奮だね、マル兄」

「だなぁ」

「着いた日に、一度来たじゃない……」


 同行しているパオロ・ダニーロ・マルコの三人は、やや呆れ顔。

にぃに(・・・)も困った顔で苦笑い。

リリーだけが、わたしの興奮っぷりに大爆笑だ。


「フェリシア嬢は熱烈な信徒じゃからな」

「特別熱心な信徒という訳じゃないと思うんだけど……」


 なんというか、大神殿って各国で一番最初に建立された神殿ですよ?

神々が、この地を人が住まう場所として守護するために、土地神さまを遣わしてくださった尊い場所でもある。そんでもって、頻繁にではないけれど、神々が神域から現世を見守るための目印でもあるらしい。


「創世四神さまから下級神さままで、さまざまな神々の意識が割かれるこの聖域。そこに訪うことができただなんて、もう感無量というヤツです」


 そう、本当に本当に、ず―――――っと前から大神殿に来るのが夢だったんですよ。

何故なら、オトンが教えてくれたんだもの。「大神殿は神々も来訪なさられる場所だ」って。なので、かかさま(魔神様)の声を聞いた日からずっと、わたしにとってあこがれの場所だった。

だって、大神殿に詣でたら、かかさま(魔神様)に会えるかもしれないと思ったので!


 今は【お庭】があるので、神々とのお目通りも容易になったけれど、ソレはソレ、コレはコレです。

焦がれ続けた大神殿、端から端まで探検しちゃいますよ~!!


 石畳の精緻さに感嘆の声を上げ、階段の手すりを撫でてはニヨニヨし――ぶっちゃけ、ただの不審人物かもしれないけれど、コレがなかなか楽しい。

だって、参拝者が通るための石畳と庭園部を隔てる縁石(ふちいし)に神々のシルエット画が彫り込まれているんだもの。それを見て、何を司っている神様なのかを想像するだけでも、なんか楽しい。ただちょっと残念なのが、土ぼこりで汚れてること。


「こんなところに神々が隠れてたのは知らなかったなぁ」

「うにゃ」

「境内に出られた時間も限られてたから仕方ないけれど、ちょっと新鮮」


 しゃがみこんで縁石をのぞき込んでいると、にぃに(・・・)が呟いた。

その言葉で思い出すのは、ブラン王国でにぃに(・・・)が、ほとんど外に出してもらえなかったという話だ。


 【加護の儀】で神子だと判明した直後に王都の大神殿に連れ去られたにぃに(・・・)は、十歳。

年齢的には見習い仕事をはじめる時期だ。

神官見習いとして、神楽のお稽古や祝詞や儀式の作法を学ばなきゃいけないのは理解できる――だけどね。

 一番多く時間を割かれていたのが、妙齢女性との交流会だったというのは理解不能です。十歳児に、種猫は無理ですよ?

でも、そのせいで『神殿内から出たことがない』、という話は聞いていた。とはいえ、まさか大神殿の境内にも出してもらえてなかったとは思わなかったよ。そうでなきゃ、五年間も暮らした場所の境内のことも分かってないなんてありえない。

 逃走防止策のつもりだったのかもしれないけれど、そもそも逃げられるようなことをしなければいいだけでしょう?

まだまだやんちゃ盛りの男の子を、無理やり神殿内に閉じ込めるだなんて、非道が過ぎると思います。


 【鍜治場】でしか自由に振る舞うことができなかった十歳のにぃに(・・・)を想像したら、なんとなくしんみりした気分になってしまった。

 ただの想像でしかないのだけれど、しょんぼりへにゃんです。


「マルコ、コレが刀神さまだよ」


 にぃに(・・・)がお隣にしゃがみこんで、マルコに教えてる。

とっても平常運転なのほほんとした雰囲気に、なんだか無性に腹が立ってにぃに(・・・)の頭をグシャグシャにかき回してやった。


「わっ、なにっ!?」

「にぃに(・・・)はいい子」

「いや、成人済みだからね?」

「知ってる」


 知ってはいる。

とりあえずコレは、ちょっとした八つ当たりと、それからとってもホッとした気持ちから来るナゾ行動ってヤツですよ。八つ当たり的な部分については、『ゴメン、にぃに(・・・)』と心の中で謝っておく。


 不本意そうな表情ではあったものの、にぃに(・・・)はわたしの気が済むまで文句も言わずに撫でくり回されてくれた。

ふと気づいたら、他の参拝客さんがわたしたちのことを眺めつつニヨニヨしながら通り過ぎて行っている。

にぃに(・・・)のほっぺが赤くなって、目がキョロキョロ泳いでいたのはそのせいかと静かに納得。


 っていうか、なんで同行者(みんな)、通りすがりの人と同じ側に立ってるの!?

こう、さりげなく見えないようにしてくれるとかいう選択肢もあるよね?


「なんか、ゴメン」

「いいよ、別に。ただ、次回は気を付けてほしいけど」

「うにゃ」


 お外では気を付けます。

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