仮登録 下
組合の建物は、大神殿にほど近い行政区にあった。
行政区は五階建ての建物がたくさんある場所で、王宮らしきものは大神殿のおとなりにあるんだけど――
「なんか、思ったよりもお城が小さく見えるね」
「きっと、大神殿がとなりにあるせいじゃない?」
「大神殿と比べちゃうと、小さいね」
正確には、お隣というよりも裏のおうちって雰囲気だね。
背中合わせに建っているので。
ちなみに、大神殿はパッと見は三階建てだけど、普通の建物に換算すると十階建て相当の高さがある。
下二階層は内部で六つにフロア分けがされているから、七フロアある計算です。最上階が拝殿になっていて、そこには大きな神像が祭られているらしい。
帰り際に立ち寄る予定なので、見るのが今から楽しみです。
前回来たときは、ささーっとお祈りして、ささーっと帰っちゃったからね。ゆっくりと眺める時間もなかったんだよ。
わたしたちは、お店で売る予定の商品に関わる生産者系の協会で仮登録をして回る。
「短期出店用の仮登録でいいのかな? この時期、多いんだよね」
どうやらリニャーリ王国の王都は、冬が近づくと、わたしたちのように冬のあいだだけお店を営みたいという人が大勢来るらしい。
「こんなに見習いばかり連れてくる人も珍しいけど」
そう言いながら、受付の牛人のお兄さんが差し出した用紙に必要事項を書き始めると、彼はちょっと驚いた声をあげた。
「え、おチビさんが書くの!?」
視線が、わたしとにぃにの間を行ったり来たり。
「代表者なので」
「僕はただのオマケだよ」
わたしが言うと、にぃにも頷く。
それでも納得できない様子で、お兄さんはわたしの顔を心配そうにのぞき込んできた。
「えええ……お店なんて、ちゃんとやれる? 大丈夫?」
失礼な。
「いちおう、露店やミルクスタンドを営業したことはありますよ」
「まあ……食中毒とかおこさないならいいんだけど……衛生管理、ちゃんとやってよ」
「もちろんですとも」
ヒガシショユ村では衛生管理なんて言われなかったけど、場末の居酒屋さん程度でいいなら何の問題もないですよ。むしろ、オシャレなチュルン店レベルはイケると思う。
「店の住所オッケー、料理人は三人ね。記名されてる三人は、順番にあの板に手を乗せて」
受付の端に置いてある板を指さすので、言われたとおりに移動して、わたし・マルコ・パオロの順番に手を乗せる。
「全員、Fランクオーバーっと……」
料理人協会の紋章が刻まれた大人の手のひらサイズの板の裏に、申請したメンバーの名前を書き入れると牛人お兄さんは「はい、手数料は一人当たり百ラーメだから三百ラーメね」と言いつつトレーを突き出した。
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どの協会も仮登録の費用は一緒で、手数料だけで七百ラーメが飛んでいく。
お店に出す製品(料理も含む)の作成者は全員登録が必要なので仕方ないけれど、結構、お財布に響く金額です。スキル持ち代表だけだったら、四百ラーメで済むのに。
文句を言っても仕方がないのは分かってるけど、やっぱりグヌヌです。
ところで、最初に行った料理人組合ではサラっと流れるように終わった仮登録だけど、魔具組合(魔神系生産スキル全般を扱ってる)では、ちょっと面倒なことがあった。
ダニーロが、かなり熱烈に勧誘されたんだよ。
原因は、【魔道具作成】【呪符作成】の二スキルも習得しているから。
その時の反応からすると、かかさまが司る『魔』が付く系の生産スキルは、どうやら習得者が思った以上に限られているっぽい。
特に、【魔道具】【呪符】【魔法薬】の三種類。
そのうちの二種類を習得しているなら、たしかに騒ぎにもなるよね。
あんまりにも組合員さんたちが熱心なものだから、ダニーロは怯えてマルコの後ろに隠れてしまった。
やっぱり、いざという時には長く一緒にいるマルコを頼りにしちゃうよね。
最終的ににぃにがお断りしてくれたおかげで一旦は退いてくれたものの、「気が変わったらいつでも~!」と叫んでいたので、諦めてなさそうです。
とりあえず、あまりダニーロを連れてこないようにしようかな。そもそも、次にここに来るのって、仮登録証を返すときだろうけど。
ただ、そんな騒ぎがありつつも、わたしにとって嬉しいこともあった。
なんと、Sランク以上の魔石のサンプルが飾ってあったんですよ、組合内に!!
あ、もちろん本物ではなく、模造品だそうです。お高いからね、本物を飾るのは危険で危ない。
とりあえず、Sランク以上の魔石はサイズが直径十センテくらいで、思ったよりは小さく見える。
そしてサイズは据え置きのまま、Sランクが銀色、SSランクが金色、SSSランクが虹色と、ランクが上がるごとに色合いだけが変化していく。
これは、貸店舗に帰ったらすぐに作ってみなくちゃね!
現物を見るのが楽しみです♪




