仮登録 上
お店で取り扱う品目は、結局、にぃにの『リサイクル武具』『呪符』『乳製品』の三種類ということにした。
最初に予定していた魔道具は無しになったよ。
まあ、乳製品は【お庭】にあふれんばかりの在庫があるからね。
この機会に、ある程度減らしておきたいところです。
「では、私は【短期店舗申請】をしに商業組合まで行ってまいります。その間に、フェリシアさまたちは、それぞれ各協会で仮登録をしてきてください」
エーマンに着いた翌日、クリスさんからそう指示されて、出品する予定のメンバー全員が顔を見合わせる。
「わたしは料理人協会と魔道具協会で――」
自分を指さし呟くと、そのあとをダニーロが引き継ぐ。
「ぼくは、呪符士協会だよね」
呪符を売るのはダニーロだからね、たぶん、そう。
「オレも料理人協会ですよね、フェリシアさま」
軽食をねじ込むためにも、マルコにもいちおう登録してもらう予定です。
「ボクはフェリシアさまと一緒に料理人協会かな?」
うんうん。
乳製品加工も、お料理に分類されると思います。
「で、僕は鍛冶師組合だね。了解、順繰りに回って来るよ」
最後に、にぃにがうなずきつつ了承すると、クリスさんはホッとした顔をした。
「よろしくお願いいたします」
慌ただしく出かけていくクリスさんを見送って、わたしたちはお留守番組のメンバーと少し作業確認をしてからお出かけです。
お留守番組には、店舗内の準備をしてもらうことになっている。
まあ、乳製品も呪符もテイクアウト口の方で扱うので、にぃにの武具が置ける場所を確保するだけなんだけど。クリスさんとリリーがざっくりとお掃除はしてくれているけど、念のため。
「にぃに、ロイさんがいないとちょっと寂しい?」
「さみしいと言うより……なんか、落ち着かないね」
力仕事もあるからと、ロイさんもお留守番組。
なんとなく落ち着かなげに、チラチラと背後を振り返るにぃにに問いかけると、そんな答えが返ってきた。
お口、尖ってますよ?
にぃに。
「いつも一緒にいますからねぇ。きっと、急にシッポが消えた気分なんですよ。フェリシアさま」
「ソレは落ち着かないね」
シッポが無くなったら大変だ。
にぃにのシッポはスラっと長いからね。とつぜん無くなってしまったら、きっとまっすぐ歩くのも大変ですよ? 生まれつきのボブテイルさんとは違うのです。
「でしょう?」
「いや、そこまでいっしょに居ないからね? ねぇ、聞いてる? ふたりとも」
ちゃんと聞いていますよ。
そして、実際のところ、割と本気で寝るとき以外はいっしょに居ると思っている。
「聞いてる~」
「確かにトイレは別々です」
「わかってない、わかってないよね!?」
「言われてみれば、トイレも別々だったね」
ソコは気づかなかった。
でも、逆に言えばトイレとお布団の中以外は一緒だね。
「グラジオラスさま、ロイが職務に熱心だと言うだけの話じゃありませんか」
「……っ!! また、からかわれた……!!」
にぃにが顔を手で覆ってうずくまってしまったので、ダニーロたちと三人で頭をポフポフして慰める。久しぶりに護衛としてついてきているピニャーシュさんも呆れ顔ですよ?
しばらくして、ようやく気を取り直したにぃにの手を引き、目的地へと向かう。
「仕方ないじゃん、事実なんだから」
「じゃが、男との仲を疑われているようにも聞こえたからの……。グラ坊が過剰反応するのも仕方なかろう。リリーも、あまりからかわぬように」
「は~い」
なんか、にぃに。
男性相手にも妙なトラウマがありそうだね? 深掘りはしないほうが良さそう。
「なんか、反応がかわいかったので調子に乗り過ぎました。申し訳ありません、グラジオラスさま」
「いいよ、もう。でも、もうやらないでね」
気の抜けた返事のあとで、堅苦しく謝罪をしてきたリリーににぃには苦笑しつつもクギを刺す。この件は、コレでおしまいかな?
「……わたしもごめんなさい?」
「フェリシアは、見たままを相槌で返してただけだからいいよ」
ふむ……?
リリーは、他意があったってことだね。
おおっと、深掘らない深掘らない……
ソレはソレとして、にぃにってば、予想もつかないところにトラウマスイッチがあるよね。
おしゃべりの話題にも気を使わないといけないっぽいのは、ちょっとメンドイです。




