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貸店舗

 リニャーリ王国の王都も、ソルベル王国やバッジ王国と同じように大きくて立派な街だね。

すでに暦は黄の三日月。

もうすぐ今年も最後が見え始め、吹き抜ける秋風がひんやりと冷たい季節です。

みんな、もうすでに魔道具化したおニューの冬服を着ているから大丈夫だけど、去年は結構つらかったな……まだ、魔獣領域をうろついていた頃だし。まともな着替えもなかったからね。


「リリーとクリスが先行してくれて助かったよ」

「ウチよりもクリスのお手柄ですね。あと一日出るのが遅かったら、宿を分けることになっていましたから」


 ふたりは、リニャーリに入った直後に先に王都に向かってくれた。

冬は時期的にも、早めに物件を確保しないと全員が寝泊まりできる場所が無くなってしまう可能性が高いことに気づいたからだ。


わたしもにぃに(・・・)も、すっかり人数が増えたのを失念していたんだよね。

今回の反省ポイントです。


「町はずれにはなりますが、なんとかご希望に近い物件を抑えられました」

「となると、場所的にお店をやるのは厳しいかな?」


 リニャーリ王国の王都で冬を越えることにしたのは、にぃに(・・・)たちがここにある土地神さまの修練場(的なナニカ)で戦闘技術をみがくため。とはいえ、修練予定のない人にはただの待機期間だからね。せっかくなので、魔道具や保存食のたぐいを売ってみようということになったのです。

もちろん、季節的に寒すぎるので実店舗で!

わたしとしては、ヒマもつぶれて、生活費も手に入る。Win-winな良い計画だと思っている。


 今は大神殿でお参りしてから、新しい借家に向かっているところです。


「なんか、ずいぶんと市場がとても混んでるねぇ」


 通りかかった市場が、ちょっと見たことがないくらい賑わっているんだよ。

不思議に思って呟くと、サラが「もうすぐ年越しですから」と横から答えてくれた。食料に関しては、すべて自給自足な村育ちなので知らなかったんだけど、町では年越しのために食料の買い溜めをするものらしい。


 ハズレ村では、オトンたちがせっせと狩りに出かけていたから、それと同じようなものなのかも。


「都会ってお金がかかるんだねぇ」


 自分で狩ってくれば、無料なのに。

それが、高いハードルなのは分かるんだけど、ね。


「その割に、稼ぐ手段が乏しいんですよね」


 仕事に就こうにも、基本的に紹介制なので伝手がないとまともな職にもありつけない、と――


「まあ、理由も分からなくもないけど、世知辛い世の中だねぇ」

「従業員にしても家政婦にしても、知らない人を雇うのって怖いでしょうから」


 結局、それに尽きるんだろうね。

袋物お兄さんも、従業員に売上を根こそぎもってかれて破産したお店の話とかしていたし。ウチだって、【お庭】や【鍜治場】のことは内緒にしておきたいからね。知らない人を気軽に入れるのは難しい。


 にぃに(・・・)が、奴隷船から連れてきた子たちをアッサリと受け入れるつもりでいるのだって、ある程度の実績があるからだ。

ひと月近くの間いっしょに行動した上で、わたしに『恩を返したい』という意思を示して見せたのも大きいかな。


「フェリシアさま、グラジオラスさま。こちらになります」


 先頭に立っていたリリーが足を止めたのは、町はずれの一軒家の前だった。

町はずれとはいっても、そこそこ大きな通りに面した場所だからお店の立地としては悪くなさそう。

今回の物件は、お店としては少しこぢんまりとしている。

正直、全員が寝泊まりできるという案件を満たしているようには見えないんだけど、どうやらそれは通りに面した部分が小さいだけらしい。


「小さくても良いので店舗として使えるもの、というご指定でしたのでこちらになりました」


小ぢんまりして見える建物の、通りに面した出入り口のとなりには、大きめのすこし引っ込んだ形の窓がある。


「これなら、ヒガシショユ村みたいにスタンド形式のお店もできそうだね」

「前の方は肉串のテイクアウトをしていたみたいですよ」

「なるほど、軽食系の実績あり、と」


 そしたら、軽食系の販売も視野に入れた方がいいかもしれない。

う~ん……

でもなぁ……


予定しているメイン商品は、にぃに(・・・)が直したリメイク武具とか呪符と魔道具なんだよね。ちょっと、軽食は系統がちがうような……いっそのこと、道中で量産した燻製系も出して、狩人用雑貨店みたいにしちゃう?

なんというか、夢が膨らむね。


 屋内に入ってみると、ちょっと長めの廊下を抜けた右手側はにぃに(・・・)の胸の高さくらいの壁があって、その上には透明な板が張り巡らされている。

背が足りなくて見えないけれど、どうやら透明な板の向こうにテイクアウト用の窓があるらしい。

テイクアウト用の場所は半個室になっていて、内向きに作り付けのカウンターがあった。カウンターの奥(通り方向)にはスライド式の窓もあって、外から中、中から外への視界を遮ることもできるようになっている。


「なるほど、もともとは軽食の販売もする食堂だったんだね」

「ですねぇ」

「表から見たよりも広いし、予定していたものは問題なく置けそうだね」

「どうしよ、軽食も置く?」

「フェリシア、当座は保留にしておこう。最初から手を広げすぎるのは良くないよ」

「……うにゃ」


 お料理系もスキルランクが上がり、おかげで作成スピードがアップした。なので、軽食くらいだったら売ってもいいかなーと思っていたんだけど……


 仕方がない、まずは予定通りの布陣でいきますか。

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