おそろい
にぃには結局、その日は一度もモリをお魚に命中させることなく家路に着いた。
なんか、大分ムキになっているみたいで、三日に一度のお休み(という名の交流日)以外の午後は、毎日磯に通ってモリ漁に挑戦するつもりらしい。
「がんばれ~」
わたしは行きませんよ。
足場がゴツゴツイガイガしている挙句に濡れているから、トロ臭いわたしはしょっちゅう足を取られて危ないんだもの。今日はにぃにがおんぶして連れて行ってくれたけど、アレを毎回やってもらうのはちょっと――いや、かなりイヤすぎる。
「すごい他人事っ」
「他人事だよ~」
「フェリシアが冷たくて、にぃに、泣きそう」
よよよと泣きまねをして見せるにぃにをチラッと見てから、磯好きボーイズに話を振る。
「ねえねえ、しばらくご近所に住むことだし、せっかくだからおすそ分けするよ」
「え、まじで?」
「肉!?」
「うん。用意するのに、ちょっと時間もらうけど」
時間がかかるのは問題ないと言うので、家の前でしばらく遊んでいる間に用意して『お引越しのご挨拶』代わりとして手土産に持たせた。
大喜びで帰っていったから、明日以降に期待できるかな?
☆★☆★☆★☆★☆★☆
翌日は、三日に一度の交流日!
別にそう銘打ってるわけじゃないけれど、実質的に交流が目的なので『交流日』ってことにしておく。
「アサイチで解体の練習しに行かないのって、なんか落ち着かねーっす」
「言えてる」
「すっかり日課になってるしね」
「んだ」
年長組の四人はそう言いながら落ち着かない様子だけど、たまには遊んだほうがいいと思います。
「午前中は自由時間、でしたっけ」
「自由時間だけど、スキル上げ的な方向は禁止だよ」
「ええ……」
「ヒマっす~!」
最年少のダニーロ君とパオロ君は、午前中は神殿教室。
昨日から行き始めたばかりなので、お休みは四日後の交流日にする予定です。
「普段出来ないこと……ってことで、マルコとカルロは僕と一緒に狩りにでもいかない?」
「あ、ソレは行きたいっすっ」
「オレも」
「じゃあ、お昼前に戻る予定で出かけよう」
落ち着かない様子だったマルコ君たちは、にぃにの誘いにふたつ返事で飛びついて、あっという間に出かけて行った。
「サラさんとルカさんは、【お庭】仕事でも一緒にやる?」
「はいっ」
「んだっ」
ということで、今日の午前中は、【お庭】でいろいろ作れることになった。
リリーさんも含めたら四人もいたからね。
午前中は、チーズを作ったり、春エリアでお魚や果物を干したりといった作業がとてもはかどった。
久しぶりに従魔たちの毛繕いもできたので、ミルギューたちの機嫌もとても良い。ちょっと、モフモフした従魔が増えすぎちゃったので、なかなか手が回らないんだよね。今回は、コルルーポやフォレルーポたちの毛繕いはできなかったし……明日、明日やりますとも。
狩りに出かけたにぃにたちも、それなりに楽しんできたみたい。
マルコ君とカルロさんはにぃにと一緒になって、今日の反省会を開いていた。ふたりとも、大分にぃにと打ち解けたっぽい。出かける前と比べて、気安い態度になってるのがその証拠だね。
獲物は、ウノピョンが十四羽。
短時間の間に良く狩ったものだと思います。矢傷がひとつに切り傷が複数だから、にぃにが弓を射て機動力を削いだ後でとどめを刺したんじゃないかな。
きっと、とどめはマルコ君たちだね。
「さて、そろそろ出かけよっか」
「うにゃ」
にぃにが反省会を切り上げてくれたので、やっとお出かけです。
お出かけ先は昨日も行った役所に併設されている図書館と、染織工房。
図書館の方が近いので先に立ち寄り、Hランクの”騎獣術”と”解体術”を四部に、”短剣術”と”体術”を二部の合計十二部を購入した。買ったその場で使うように言われて驚いたけれど、どうせ使うものなのでさっさと使って図書館を後にする。
本当はゆっくりとレシピ本や魔道具関連の本を読みたい気持ちもあるんだけどね。
それは、明日以降に回します。
今日のメインの用事は、染織工房で布を染めてもらうことなので!
☆★☆★☆★☆★☆★☆
染織工房は、町の北東にある職人街にある。
職人街は染織に限らず、生産スキルの工房が軒を連ねている区域のことらしい。家族でこじんまりと販売まで行っているところもあれば、たくさんの職人さんを雇ってお店に卸しているところもあるそうで、今回お邪魔したのは後者になる。当然、ここを紹介してくれたマリアちゃんパパのお店とお取引がある工房です。
「ウチは、単色染めと型染が専門ですね」
「かたぞめ?」
「いくつかあるんで、サンプルを見てください」
サンプルとして見せてもらえたのはすでに染織済みの手拭いで、幾何学模様だけでなく植物や魔獣をモチーフにしたものまで種類が豊富だ。
コレは悩むね。
「あ、これなんかカッケー」
「こっちも良くね?」
「兄ちゃん、それはダサいよ」
ここに来る前には興味なさそうだった男の子たちも、目の前に選択肢を並べられると気持ちが変わるものらしい。思った以上に、熱心に選んでいる。
わたしもね、悩んでいますよ。ものすごく。
「にぃに、にぃに。どれが良いと思う?」
「うわ、フェリシア、候補多すぎっ」
「だって、どれも可愛いんだもんっ」
ランチューシルエットの白抜き柄も可愛いし、小花柄の生地もとてもいい。肉球乱舞な型染も好きすぎる。でもね、無地で華やかな色も捨てがたいんですよ。
ぶっちゃけ、選べません。
「ん~……ランチューも肉球も、子供っぽ過ぎる気がしない? どうしてもその柄が欲しいなら、別の生地を好みの色に染めてもらえばいいんじゃないかな」
「……なるほど」
落ち着いて考えてみると、たしかに子供っぽい。
というか、わたしがその生地で作った服を着たら小さい子供にしか見えない。もっとこう、大人っぽく見える柄にしなくては。
「にぃにはそれにするの?」
「うん。一着は矢絣で仕立ててもらって、あとは単色でいいかな」
「……わたしも同じにしようかな」
色は自分の瞳の色に合わせて鈍色にすると言うので、わたしはモスグリーンだね。
もう一枚は青の小花柄にして、白の短袴を合わせたら可愛いかも?
うん、そうしよう。
「んふふ~♪」
「結局、なんのかんのでみんなおそろいになっちゃったねぇ」
そうなんだよね。
にぃにと二人で同じのを見ていたからか、いつの間にかみんな集まってきて、自分の色を決めていった。なので、全員、おそろいだ。
「いいんじゃない? なんか、兄妹っぽくて」
「いや、むしろ制服」
巫女服とか神官服みたいなかんじ?
なにはともあれ、わたしとしてはおそろいの柄にできて嬉しいから、にぃにとだけ一緒じゃなくても問題ありませんっ!




