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磯遊び

 白チュルンも好評で、たくさん作ったチンギアーレの甘辛煮もあっというまに無くなった。

いつものことながら、ロイさんの食べっぷりがすごいんだよね……。今日なんか、味見してからの待ての時間が長かったから、より一層食べきるのが早かったような気もします。


「フェリシアさまっ」

「近所の子たちが磯を案内してくれるって! 午後から行かないっ?」


 お昼を食べ終わってすぐに駆け寄ってきたダニーロ君とパオロ君の口から出た言葉に、にぃに(・・・)を見上げる。

正直、『磯』とやらが分からないんだけど、雰囲気的に、近所の子供たちの遊び場だよね?


「なんか、ノリを拾ったり、シオダマリで魚を突いたりするんだってっ」

「それからカニの赤ちゃん捕まえたりもするっぽい」


 それはちょっと――いや、かなり興味があるね。

突いた魚は、もちろんお持ち帰りして胃袋にinですよね、きっと。


「じゃあ、午後は磯に行ってみよう」

「「やったっ」」

「オレ、あいつら呼んでくる!」


 ダニーロ君は言葉よりも先に走り出していたから、声もいっしょに遠ざかっていくのがちょっと可笑しい。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



「今度こそっ」


 気合を入れて、にぃに(・・・)が水中に向けてモリを突き刺す。


「ああっ、おしいっ!」

「グラ兄、がんばれ~!」


 応援してくれているダニーロ君とパオロ君だけど、わたしの目から見てもにぃに(・・・)はモリの扱いがヘタッピだね。地元の子たちが「にぃいちゃん、ダメダメすぎ~っ」と笑い転げる気持ちも分からないでもない。

でも、いや、だからこそ、かな? にぃに(・・・)はそれがご不満でムキになってるっぽいんだよね。


「あ~もうっ、水中は見えづらくて難しいなぁ……」


 などと、ブツブツ文句を言いながらもまた獲物を探して水面を睨み付けている。


「にぃに(・・・)、がんばれ~」

「なんか、フェリシアの応援がしょっぱい」

「キノセイですよ」


 ジト目になるにぃに(・・・)に笑顔を返し、地元の子たちがもってきていたバケツを覗きこむ。

バケツの中には、売り物にされているものよりも小さなエビがたくさん入っている。


「これってどうするの?」

「母ちゃんが調味料にしたり、干したやつをゴミ焼きにしたり。色々だよな?」

「ウチ、炒め物に入れてることもあるっ」


 ほうほう、案外いろんなことに使えるんだね?


 ゴミ焼きが何かと聞いてみたら、白麦粉と野菜や肉の切れ端なんかを混ぜて焼いたものらしい。ハズレ村で言うところのオノノミ焼きだね。馴染みのある料理だけれども、ところ変われば呼び名も変わるものなのかな?


 小エビのほかにも、彼らがあれやこれやと集めているのを手伝いつつ、活用法を聞き出していく。

海藻にも色々あって、湯がいたらそのまま食べられるものもあれば、乾燥させてから水でもどして食べたり、煮溶かしてお菓子を作ったりと使い方も幅広い。糊として使われる種類もあるので、ここに滞在している間に集めてみたいと思います。


「それにしても、岩場の水たまりにずいぶんといろんなものがあるんだね」


 磯って言うのは、水辺にある岩場のことだそうで、今いる辺りは満潮の時には水の下に沈んでしまうらしい。ただ、海の中に沈んでいる間にやってきた生き物たちが取り残されてしまったりするので、割といつでも食材が溜まっているらしい。海藻類も流れ着くんだとみんな笑っている。


「売り物にはなんないんだけどさ、自分たちで食べる分には量があるほうがいいだろ」


 現地民はそう言って笑うけど、わたしとしては味が良い方が嬉しいんだよね。

なにせ、胃袋が小さくてあんまり食べられないので。


 地元のガキ大将的な子の言葉にうなずきつつ、心の中で独り言ちる。


「お魚、美味しいもんねぇ」

「たまには肉も食いたいけどさ、高いから」


 フンと鼻を鳴らす姿に首をかしげる。


「モリで上手にお魚を突けるんだから、町からちょっと出た先にいるランチューくらいは狩れるのでは?」


 とりあえず、Fランク以上の獲物が狩れれば、多少の肉にはありつけるはず。


「出入りに金がかかるじゃん」

「それに、子供だけじゃ出れねーよ」


 なるほど。通行料のことは考えてなかったね。


「そしたら、ここで獲った魚介類とお肉を交換しようか?」

「は?」


 わたしは楽して海鮮系食材が手に入るし、彼らはお肉が食べられる。

良い考えだと思うんですよ、わたし的には。

 ちなみに、現金取引を申し出ないのは、まだ【加護の儀】前の彼らがお金を持ち歩くのが危険なのと、念のための税金対策です。一軒ごとに収入から支払うものだと思うので、うっかり現金で渡すと面倒なことになるかもなので。

この国での扱いが分からないので、いちおう念のため、ね。


「いくら肉でも腐りかけなんかいらねーぞ」

「うん。もちろん、鮮度に問題ないのを渡すよ。なんなら、目の前で切り分けたのと同じお肉を試食してもらってもいいしね」

「試食……?」

「交換するのと別口で、目の前で焼いたのを食べさせてあげる」

「っ!?」

「えっ、それならオレ、やる!」

「あ、オレもオレも!」


 さっそく今日から交換してほしいと言い出したので、家に戻ってからお取引をすることにした。


 やったね!

これで、労せずして海鮮系食材が手に入るよ♪

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