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リリーさんは食いしん坊

 リリーさんがタネを抜いてくれたポモフェスを、表面だけ軽く凍らせてから半分に割り、流水にさらしてジュクジュクを洗い流していく。

このジュクジュクが結構強烈な酸性で、そのまま触れるとあっというまに皮膚が溶け落ちる。もちろん、体毛もいっしょに溶けちゃいます。

 ポモフェスの果実弾は、酸で表面を溶かした上で、鋭くとがった種が突き刺さると言う二段構えの攻撃なんだよね。

こわいこわい。


 十分にジュクジュクが流れたのを確認したら、今度は皮むきです。

最初に表面を凍らせてから溶かした状態になっているので、もう、指でつまめば簡単に剥けてしまう状態になっている。


「タネ抜き、終わりましたよ」

「じゃあ、今度は皮むきお願いしていいかな?」


 サクサクと作業を進めている間に、リリーさんの手が空いたのでこっちの作業をお任せしてしまうことにした。


「今回は力仕事じゃないんですね」

「一応、解体分野でお願いしている次第です」


 クスクス笑いながら皮むきを始めるリリーさんに、きりっとした表情を作りつつ答えると、彼女はキャラキャラと笑い始める。

なんか、ツボったね?


 真面目な話、一応は解体の範疇でできそうなお仕事をお願いしているというのは本当のこと。

だって、ねぇ……?

食べ物の質が落ちるのは、ちょっと許容できないんだもの。美味しいの喪失は、罪ですよ、罪!

そこに妥協はありません。


 追加のポモフェスの表面だけ凍らせて流水に付けるまでの作業を繰り返していると、あっという間にタネを抜いたものが無くなった。

リリーさんに皮を剥いてもらった分は、水煮用にザクザク小さく切ってナベにポイポイ放り込み火にかけ、火が通るまでしばらく放置です。


「皮むき、終わりました」

「ありがとう~!」

「次は何をしましょう?」

「えっと……もう一回、タネ抜きお願いしても大丈夫?」


 再度ポモフェスのタネ抜きをお願いしてからジュクジュクを取り除くと、半分に割った実をさらに四つに切り分けてから軽く塩をしたものを葦簀(よしず)に並べて日にさらす。


「これは何になるんですか?」

「昨日流し読みした本にあったんだけど、『セミドライポモフェス』って言って、琥珀チュルンに合わせると美味しいんだって」

「へぇ……楽しみですね」

「うにゃっ」


 最低でも五日程度は干してから油漬けにして保存するそうなので、出来上がるのはしばらく後になる。

とりあえず、時短を夢見て風魔法でソヨソヨしておこう。


「あとは、水煮をツボに入れ替えたらお昼ご飯の用意だね」

「お昼のメニューは何でしょう?」


 ウキウキしながら尋ねてくるリリーさんの様子を見ながら、ひそかに確信した。

リリーさんって、絶対、メチャクチャ食べるのが好きな人だよね。

だって、下ごしらえひとつとってもやる気が違うし。食べてるときの表情とか、ものすごく幸せそうなんだもの。


「昨日、生の白チュルンを買ってみたから、煮込みチュルンにしてみようかと思います」

「ああ、アレも美味しいんですよ」


 実食経験があるっぽいので、せっかくだからその感想をおねだりしてみる。


 白チュルンの味付けは、基本的にミショやショユのほぼ二択。

スープも具がたっぷりなものから、シンプルに具なしのものまであるっぽい。肉と野菜たっぷりなものは食べ応えがあるだろうし、香味野菜を少しだけのものもあっさり食べれてよさげだね。

暑い季節には、冷たいものに出汁を利かせたショユ味のつゆをつけただけの白チュルンも美味しいんだって。

スープの温度も、あったかいものだけでなく冷たいものもあるそうなので、組み合わせをちょっと考えただけでもバリエーションずいぶんと豊富だね。


「ショユ味で、具沢山のあったかいやつにしようか」

「では、どの野菜の皮を剥きましょうっ?」


 食い気味な返答に苦笑しつつ、使う分のお野菜を用意してリリーさんに渡す。

カツォーブシという出汁要員が手元にないので、いつものスープベースでスープづくりに取り掛かります。

 さっき、『薄切り肉を甘辛く味付けしたものを乗せたのが美味しかった』と言っていたので、まずはお肉を薄切りに。

とにかく、チンギアーレのお肉をたくさん切りますよ~!

チンギアーレのスープベースを使うので、お肉も同じものにしちゃいます。お肉が切り終わるころには、皮を剥き終わったお野菜が山になっている。それをザクザクと食べやすい大きさに切りそろえて、柔らかくなったところで調味料を投入です。


「香りづけにゴマーブラをまわし入れて……ん、こんなもんかな?」


 ふわりと立ち上る美味しい匂いに、香ばしさがプラスされていいかんじ♪

リリーさんも、わたしと一緒になって、幸せそうな顔でくんかくんかと匂いを嗅いでいる。匂いだけでは酷なので、ふたり――ロイさんも加えた三人でひと口ずつ味見した。


「ん、いいお味です」

「味を知った分、むしろ飯の時間までが苦行になる気がするんだが……」

「ソコはアレですよ、ロイ」

「アレって?」

「より美味しく食べるためのタメです」


 リリーさん、なんか、極めてるなぁ~……

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