予定変更
お夕飯は大好評で、ひとり五枚の計算で揚げた小魚フリャーは、あっという間に売り切れた。
貝柱とアルキノコの炊き込みご飯をたくさん炊いていたから、ロイさんも満足そうで一安心です。ロイさんはいつもたくさん食べるから、毎回量が足りるかドキビクなんだよね。
「では、私はこちらで休ませていただきます」
「クリスも【お庭】で休めばいいのに」
「食事の間に彼らと約束しましたので」
クリスさんは、お夕飯の時にマルコ君たちと話していて、言葉遣いとか所作の指導を頼まれ――申し出たらしい。方言のひどいルカさんは置いといて、他の五人はそんなに指導されるほどひどい言葉づかいではないと思うんだけど、神子の従者を希望している以上はきちんとした方がいいんだって。
なんか、覚えることがたくさんあり過ぎて、マルコ君たちの頭がパンクしないか心配です。
本人たちの希望みたいなので、否定するつもりはないんだけどね。
なにはともあれ、ダニーロ君とパオロ君はまだ【加護の儀】前なので、健康問題を考えて【お庭】の出入りを最小限にしている。だから、孤児組+サラさんの六人は借家で寝起きすることは決まっていた。
それで借家で寝起きするのはマルコ君たちと、成人組からひとりかふたりにしようと話していたんだけど――借家にいる間は、クリスさんが保護者替わりで決定だね。
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翌日の朝、朝食の席でダニーロ君とパオロ君を神殿教室に通わせたいとクリスさんが言い出した。
というか、孤児組メンバーは全員読み書きができないんだよね。なので、本当は他の子も教わりたいそうなんだけど、すでに神殿教室で学べる年齢を超えている。
年長組のメンバーには、別口でクリスさんが教えることにしたそうで――まあ、なにはともあれ、午前中の予定が無くなった。
「フェリシアはなにするの?」
「獣脂を溶かしつつ、ポモフェスソースの量産」
「また、たくさんあるヤツだね……」
そう、在庫がたくさんあるヤツ。
獣脂もポモフェスも、それこそ量を把握しきれていないレベルで在庫がある。
脂はいったん溶かして精製しておかないと使えないし、ポモフェスも水煮や乾燥させておけば料理の幅が広がるからね。せっかくなので、空いた時間に加工しておきたい。
「そういうにぃには?」
「僕は魔法薬にチャレンジしてみるかな」
何故か知らないけど、にぃにがすごくやる気をみなぎらせているね?
「何作るの?」
「基本は腹下し用の散薬か湿布みたいだね。一度に量が作れそうだし、散薬の方にしようかな」
わたしは、同じスキルでなめしスライムしか作ってないね。
基本の薬が腹下し用の散薬だなんて知らなかったよ。かかさまはきっと、わたしが大急ぎで欲しがってるものの作り方を教えてくれたんだろうけど……なんか、ちょっとズルした気分です。
にぃににおねだりされた素材を渡して、それぞれの作業に取り掛かる。
【お庭】にある魔法薬作成用の工房は、かかさまにお断りを入れてからにぃにに貸し出したよ。あそこを使えば、道具類は大体そろっているので。
「それじゃ、ウチも手伝いますね」
「うにゃ。リリーさん、お願いします」
まずは、一時的に加熱の魔道具化した大甕に獣脂の塊を詰め込む。
融点よりちょっと高い温度を保つように魔道具化したので、焦げ付かせずに放置できる。とっても楽ができるのが素晴らしい。魔道具様々です。
「たまに様子を見て、液状になったのが増えたら上澄みだけを別の壺に移動してください」
「移動先に入れるときは布で濾す……と」
「うにゃ」
「というか、その程度なら俺でもやれるんじゃないか、お嬢?」
「え、ロイさん手伝ってくれるの?」
「坊ちゃんが籠ってるからヒマだしな」
珍しいなと思いつつ、せっかくなので獣脂の面倒はロイさんにお願いすることにした。
「じゃあ、ウチは別の作業を手伝いますか」
「そしたらポモフェスの身から種を抜いてもらっていいかな?」
「これも力仕事ですね。もちろん、お任せください」
リリーさんは、これも笑顔で引き受けてくれた。
ポモフェスの種は、いわゆるヘタにくっついている。
グリグリとひねりながらひっぱるとスポンと抜けるんだけど、ちょびっと力が必要です。ちなみに、先が鋭くとがっているので注意が必要。
生き物の気配を感じると、野生のポモフェスは大きな実を飛ばして攻撃してくる。
ほとんどの実はうまく当たらないけれど、たま~にいい具合に種が体に刺さってしまうことがあるんだよ。
体に刺さった種は即座に傷口から根を張り、攻撃対象に寄生する。
当然ながら、寄生された生物は、長く生きることはできないからね。とっても危険です。この特性は育樹師や従魔師が飼いならしても残っているから、うっかりケガをしないように注意しないといけません。
リリーさんなら大丈夫だと思うけど、気を付けてね?




