フリャー
この日のお夕飯は、図書館で仕入れてきた新メニューを試してみることにした。
フリャーというこの料理に必要なパン粉もマリアちゃんパパのお店で売ってたし、途中まではテンプリャーと手順が似てたので、たぶん大丈夫。
……いちおうね、きちんと味見はするよ?
それに、万が一お味がイマイチだった場合は、最初からテンプリャーだったフリをすればいい。
ふふふん、この手でいつも、お料理は失敗知らずですよ。
「というわけで、マルコ君たちが毎日たくさん捌いているお魚を使わせてもらおうと思ますっ」
「えっ!? いいんですか!?」
「前に何かに使ってほしい的なことを言ってたから、せっかくなので使おうかと……」
「あ、ソレはもちろん喜んでっ!」
言うが早いか、喜び勇んで保存庫の方に走っていくマルコ君。
「保存庫までいかなくても、こっちでも――」
出せるんだよね。
もう、聞こえそうにないけど。
伸ばしかけた手を戻し、かわりにリリーさんへ野菜を渡す。
今日はせっかく皮むき要員がいてくれるので、後回しにしまくっているリーリョ系の皮を剥いてもらう予定です。
「リリーさん、リーリョ系の皮むきってやったことある?」
「ありますよ。任せてください」
「今日使うのはコレだけなんだけど、もしよかったら、飽きるまで剥いてくれるととっても嬉しいです」
リリーさんは、笑って了解してくれた。
「皮が厚いから、フェリシアさまの細腕じゃ大変ですよね」
「そうなんだよねぇ……」
リーリョ系の魔草は、捕まえるときの処理さえ間違えなければ、皮を剥いただけでそのまま食べることもできる。
でも、皮がすごく分厚いんだよね。ほぼ一センテくらいあるんじゃないかな?
わたしでもグルンと一回り包丁を入れれば、ツルンときれいに剥けるんだけど、重さもあるからね。わたしの場合は筋力不足で、一度にいくつも剥くのは厳しい。
ちなみに、ロイさんとにぃにはもうやってくれない。
最初のころに、調子に乗ってたくさん頼み過ぎたんだ。
ええ、わたしの自業自得ですとも。
「ロイからも聞きましたが、植物系の解体は単純作業ですから飽きますよね」
「美味しいごはんになると思えば耐えられるのになぁ……」
「ですよね」
「同志っ!!」
なぜか、爆食い派のにぃにとロイさんの共感は得られなかったんだよ。
お野菜よりもお肉の方が好きだからかもしれないけど、好き嫌い、いくない。
「お待たせしましたっ」
リリーさんとヴェルリーリョを使ったお料理で盛り上がっていると、マルコ君がお魚を持って戻ってきた。
「おかえり~」
「オレ、何しましょう?」
「じゃあ、この液にお魚をドプンとつけてから、こうやってパン粉をまぶしてくれるかな」
「はいっ」
一度やってみせてからマルコ君に数を指定してから衣付けをお願いする。
その間にわたしは、ミショ汁を作りますよ。っと、その前に――炊き込みご飯の方は、そろそろ弱火にした方がよさそげだ。そっちを先にやってしまわないと。
「できましたっ」
わたしも他のお料理がひと段落したので手伝ったけど、マルコ君もたくさんやった。
もう、大活躍と言っていいね。
「――なんか、すげーいい匂いがする」
今更過ぎる感想に、思わずリリーさんと二人で笑ってしまう。
「炊き込みご飯は匂いが強烈ですよねぇ」
「マルコ君、すごい集中力」
「え……そんなに前からこの匂いしてたんすか?」
「してたしてた」
さらに、味見用のフリャーも揚げてある。
「ちなみに、出来上がり品がコレですっ」
じゃじゃーん! と、揚げたてのフリャーを掲げて見せてからそれぞれに一枚ずつ渡す。
「このソースをかけて食べるといいらしいんだけど……」
「ふふ、食事当番の特権ですね」
「え、つまみ食い?」
「つまみ食いじゃないよ、試食試食~♪」
というわけで、早速パクリ。
「あ、うんま」
サクッとした食感は、初めての経験です。
中の身はジューシーなのに、外側がカラリとしているのはとても良い。今日お試しで買ってきたソースも、酸味とともに深みのある味わいが揚げ物にとても合う。
追加で大量購入しなくては。
リリーさんとマルコ君もニコニコしながら食べてるので、お味的にも問題なし……と。
「よし、それじゃあマルコ君も一緒に揚げてみようか」
「え、いいんですか?」
「うにゃ。もう、油も温め終わってるナベがふたつあるしね」
ということで、マルコ君に油から揚げるタイミングを教えつつ一緒に仕上げに取り掛かる。
「リリーさんは、ご飯をおひつに移してください」
「終わったら、おひつと汁物は運んでしまいますね」
「ありがとう~!」
リリーさん、めっちゃ気が利く!
細かいとこまで指示をしなくていいのは、すごく助かる。




