読書の時間
育樹師協会で無事にお取引を終えてから美味しいチュルンを食べたあと、本日最後の目的地へやってきた。
最後の目的地、それは図書館。
中央神殿にほど近い場所にあるお役所に併設された施設で、本を読んだり、本だけでなく生産スキルの仕様書などを買うこともできる場所らしい。
利用料はひとり百ラーメで、丸一日滞在することができる。
ただし、読みたい本はおおまかな内容を指定して、複写していないものを係の人に運んでもらう形式らしい。
返却時は自分で返すんだけど、その時に本が傷んでいたら買取るはめになる。
『傷んでる』状態と判断されるのは『破れ』や『汚れ』ある場合だそうなので、よっぽど変なことをしなければ問題ないよね。
今日のところはお料理関係の本をお願いして、よさげなレシピを書き写していくつもりです。
お店で出されるようなお料理は仕様書を購入する必要があるけど、家庭料理レベルのものは自由に書き写すことができる。これはほかの生産品でも同じで、魔道具だと魔導基盤と魔導チップを組み合わせるだけのものは仕様書を買う必要はない。
ちなみにお高い利用料は、買わないでも良い仕様書を書き写すことが前提の値段なんだって。
なんのかんので、無料のふりして実は無料じゃないんだね。
「にぃには、なんで魔法薬の本にしたの?」
「武神さまにおススメされたから」
なんか、生まれ持ったスキルではないものの、適性がありそうだと言われたらしい。
「武具を作るより、こっちの方が小銭を稼ぎやすそうだと思って」
グレイントレント、高かったもんね。
立替だとしても、手持ちの資金がきついのかも。
「……なるはやで借金返します」
さすがに二十万ラーメともなると、Cランクのマジックバッグを売るにしても卸先に困ってしまう。
……マリアちゃんパパにご相談してみようか?
たぶん、マリアちゃんにあげたマジックバッグのことはもう知っているだろうし、たくさん持ち込んでも問題なく売りさばけそう。
「返済はいつでもいいよ。しばらく全員を養える程度の余裕はあるからさ」
「うにゃ」
それでもまあ、気分的に落ち着かないからね。
早めに返すつもりでがんばるよ。
「ロイさんは、なんで木彫りなの?」
「屋内での暇つぶし用だな。雨の時とかヒマでヒマで……」
「木を削る代わりに、お芋の皮をむいてくれてもかまわないですよ?」
「それは……うん、気が向いたらってことで」
きっと、一生気が向くことはないね。
そっと視線を逸らす様子に小さく笑う。
お料理は嫌ですって、正直に答えてもいいのに。
そんなロイさんとわたしの会話を聞きながら、リリーさんは肩を震わせている。
なんか、ツボったらしい。
「ウチは、今夜から皮むきします」
「大丈夫? リリーさんは、ロイさんとイチャイチャする時間も必要なのでは」
「ぶふっ!?」
「それはまた別で時間を取るので問題ありません」
問題ないらしい。
「じゃあ、夜だけでもお願いします」
「任されます」
とういう訳で、お夕飯の準備では人手が増えることになった。
リリーさん、ありがたや~♪
しばらく雑談に興じているうちに、お願いしていた本が届いてそれぞれ自分のものに目を通し始める。
私がお願いしたのは、デンティゴルでよく食べられているものを扱った本。
国外との窓口的な街でもあるからか、これが結構種類がある。
チュルンだけでも、卵チュルンに白チュルン、それから琥珀チュルンと三種類も作り方が載っている本があった。どれも別系統のチュルンらしく、どれも作り方が違うし、なんなら味付け用のスープやソースの作り方の傾向も違う。
料理の道は、奥が深いね。
手に入る材料で作れるのは卵チュルンと白チュルンなので、作り方をメモしておこうっと――
「ぅえっ」
「どうしたの、フェリシア? 変な声出して」
「チュルンの道の奥深さに驚いて、つい……」
「なにそれ?」
卵チュルンにしろ白チュルンにしろ、ベースになるチュルンの作り方がいくつもあるんだもの。
そりゃあ、ビックリしますよ。
大雑把にいうと形が違うだけなんだけど、チュルンの形状に合わせて味付けも変わる。これ、書き写すのはちょっと無理だね。
裏表紙の値段を確認してみると、一冊当たり五百ラーメと書いてある。
とりあえず、チュルンの作り方――打ち方? まで載っているものは三種類とも購入することにした。打ったチュルンのポピュラーなレシピがついてるのが、何とも言えないお得感。
大丈夫、お小遣いで何とかなる金額です。
最終的に、チュルンの本を三冊と、銀麦料理の本、いろんなパンの作り方の本を買って本日の予定は終了。
「フェリシア、買いすぎ」と、にぃにに呆れられつつ家路に着いた。




